人気放送作家が手掛けた初小説『ボクの妻と結婚してください。』は、死すらも笑いに変える男(達)の物語

テレビ

更新日:2015/5/21

 本文の一行目で、時限装置のスイッチが入る。「9月25日 余命あと185日」。

 ベテラン放送作家の三村修治は末期のすい臓がんと診断され、残りの人生をどう過ごすかの判断を迫られる。バラエティ番組の企画会議の最中、ピンときた。これは「企画」だ。世の中の悲しいことや辛いことも笑いに変える仕事をしてきたプロとして、「自分がいなくなった後に妻と息子が笑顔でいられる企画」を考える。結論が出た。未亡人になる妻の、再婚相手を探す! だから題名は、『ボクの妻と結婚してください。』。

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 人気番組を数多く手掛ける放送作家・樋口卓治の小説家デビュー作だ。2012年に刊行された本書は昨年、舞台版が上演された。その時主演したのが、内村光良と木村多江。5月10日から始まった連続ドラマ版では、その二人が再び夫婦役を演じる。先日刊行された文庫版巻末の解説で、内村はこの小説の本質を一言でこう表現した。「死笑説」。死すらも笑いに変えるひとりの男の生き様は、笑えなくなるくらいかっこいい。泣けて泣けて、仕方なくなる。しかも他の登場人物達もみんな、かっこいいのだ。

 実は、本書には『天国マイレージ』という続編がある。「こんな形で物語を続けられるのか!」と驚くこと間違いなし。さらなる「笑」の極意も披露されているので、そちらもオススメですよ。

文=吉田大助/『ダ・ヴィンチ』6月号「出版ニュースクリップ」より