「必ず有名に!!」という想いで撮影 ― 昭和な雰囲気が人気「ハムスターの銀次」著者インタビュー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/20

『居酒屋ハムスターの銀次』(川辺石材の佐藤公亮/河出書房新社)

Twitterで超有名なハムスターといえば、「ハムスターの銀次」です。ハムスターの写真付きのつぶやきが流れるたびに、そのかわいさのあまり大量にリツイートされることが多く、一度はタイムラインで目にしたことがある人も多いかもしれません。ついに書籍化されたのが『居酒屋ハムスターの銀次』(川辺石材の佐藤公亮/河出書房新社)です。

銀次の通称は「大阪のおっちゃん」。居酒屋の大将として働いています。他にも、虎王、文太、弥勒、雅楽、和楽、金蔵…といったハムスターの仲間たちがいっぱい。この「チーム銀次」、メンバーそれぞれの活躍が楽しめるのも、この本の魅力です。気になる撮影方法も「撮影日誌」というコーナーでうかがい知ることができます。

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居酒屋のカウンターの中から、ときに人生を考えさせるような深い一言や、励ましの一言を発するハムスターたち。実は筆者も「お、かわいい」と思って、いつのまにかフォローしていました。こんな居酒屋が本当にあったら毎晩でも通ってしまいそうです。

リツイート数は驚異的。オフに見せる表情もたまりませんね。セットは居酒屋だけではなく、次々に世界観が広がっています。これからも見逃せません。

銀次は今年の2月20日に亡くなり、多くのファンたちから悲しむ声が寄せられました。今は天国からみんなを見守っています。

今回は「銀次の部下」を名乗る作者、佐藤公亮さんが気になる質問に答えてくれました。

【ハムスターとの出会い】

―いつからハムスターを飼っていますか? なぜ、ハムスターを飼うことに?

佐藤:だいたい2年くらい前から飼い始めました。子どものころから飼いたいと思っていたのですが、においや世話などの点から親に反対されていて…いろいろ落ち着いたので、飼おうと決意したんです。

―「ハムスター」と「居酒屋」というユニークな組み合わせは、どうやって思いついたのでしょうか?

佐藤:たまたまミニチュアグッズの前にハムスターを置いてみたらかわいかったんです。それから、居酒屋のアルバイトばかりしていたので「こんな感じかな?」と試してみたら、見事にハマりました。最近、人情味あふれる昭和な居酒屋さんが少なくなってきているので、どこかにあるといいな…という願いも込められています。

―なぜハムスターたちは関西弁をしゃべるのでしょうか?

佐藤:始めた当時、好きなゲームがあって、そこに登場する好きなキャラクターが関西弁でカッコよかったからです。

【ハムスターを気遣いながら撮影し、セットを作る日々】

―毎日ツイートされているから毎日撮っていると思われがちですが、実はハムスターたちのストレスを考えて、週に1度くらいで撮っていらっしゃる、と本で読みました。どのくらい時間をかけて撮るのですか?

佐藤:だいたい30秒以内に撮影しています。長くても1分以内で撮るようにしていますね。撮影時間は、とにかくできるだけ短くしています。1匹を集中して撮影するとストレスがかかるので、実は交代しながら撮影しているんです。

―撮影セットにはどのくらいお金や時間をかけているのでしょうか? もともと手先が器用だったのですか?

佐藤:木製のセットなので、大きな板を4枚買っています。棚用の板などと合わせて1セット2000円くらいですね。最近は30分くらいでセットを作れるようになりました。セット内に置く小物は、まとめて1000円~5000円くらいで購入しています。手先は…学生時代、模型を作るのが趣味だったので、その延長かもしれません。

―ハムスターの写真で有名になってから、お勤めの川辺石材にもお客さんは増えていますか?

佐藤:まだ少しですが、この本を手に見学される方もいらっしゃいます。資料をお届けした際に「もしかしてハムスターのブログを書いている佐藤さんですか?」と聞かれることが多くなりました。

【銀次の死、そして…】

―デリケートなことになりますが、銀次が亡くなったときに考えたことを、ぜひ教えていただければ…

佐藤:銀次が家に来たとき、「必ず有名に!!」と決意していました。いろいろな偶然が重なり、本当に皆さんに支持していただけるようになって、僕としては感無量です。2歳を過ぎてからは「引退」という形をとって撮影しなかったのですが…日に日に痩せていって…。最期に見た姿は、本当におじいちゃんみたいで、なんとも言えない気分になりました。ですが、言葉にはできない大きなものを、あの小さな体からもらったような気がして…彼には心から感謝しています。

―撮影を続けていける原動力はずばり、なんでしょうか?

佐藤:何度も止まりかけていますが、そのたびにTwitterのフォロワーさんやブログの読者さんに励まされて動き続けている状況です。長く愛されるアニメや漫画、ガチャガチャのように、小さいお子さんとお父さんお母さんが親子で、おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんと、一緒に楽しめるようなものができればいいなと思っています。家族ぐるみで楽しめるものを作りたい気持ちが強いのです。

【ハムスターは、一度飼ったらやめられない!】

筆者には、生き物が大好きすぎるあまり大学で生物学を学び、今も生まれたばかりの赤ちゃんを育てながらハムスターを飼っている友人がいます。彼女によると「ハムスターは餌と水さえあれば置いて旅行に行ったりもできる。一度飼ったらやめられない、ステキすぎるペット!」とのこと。言葉の通じない相手を責任持ってお世話しなくてはいけないけれど、その反面とってもかわいいところが育児とも似ているそうです。

小さなハムスターを何よりも大切にする佐藤さんの言葉からは、とても大きな愛を感じます。ハムスターたちのくるくる変わる表情が楽しいこの1冊、疲れた夜に眺めればすぐに癒やされてしまいそうです。

なお、現在「ハムスターの銀次」のLINEスタンプもリリースされています。早速買ってためしに送ってみたところ、使い勝手がよく喜ばれました。銀次の世界にハマったあなたは、こちらも要チェックです。

文=川澄萌野