実力はあるのに評価されないのはなぜか? 上司も部下も上手く転がす! 大人の“裏教科書”

ビジネス

更新日:2015/6/4

 「なんでうちの上司は使えないのだろう……?」だれにでも思い当たるだろう。だが部下は上司を選べないと同様に、上司も部下を選べないのだ。中間管理職というのは実はたいした権限はない。けれども、責任だけは重くのしかかっている。本人も実は苦労しているのだ。

 社会人には、大きく転換を求められる節目がいくつかある。その第一歩が管理職つまり、マネージャー職に任命されたとき。ここで発想を大きく入れ替える必要があるのだ。けれど、優秀な現場プレーヤーであればあるほど、その転換がうまくできないという。

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 そんなマネージャーの「つまずき」に実践的なアドバイスを送るのが、『優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーになれないのか?』(クロスメディア・パブリッシング)である。著者は、元カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役社長COOなどを勤め、現在人事コンサルト・人材育成事業を行う、柴田励司氏。

誰も言わないが、ビジネスが動くのは「ヒト」次第

「平社員には、そんなこと関係ないね!」と、早合点するのはもったいない。これは、働く人すべてに参考になる、裏の教科書だ。

 なぜ“裏”の教科書かというと、正論では語れないビジネスの原則がこの本には書かれているからだ。

 柴田氏は、「経営の三大資源は、ヒト・モノ・カネ」というが、マネージャーに求められるのは、「ヒト・ヒト・ヒト」であると、言う。仕事のスキルには自信があるのに、なぜかうまくいかない。そんなあなた、ビジネスにおける“ヒトのマインド”を軽視してはいないだろうか。

 そう、いかに合理的で正攻法で革新的な提案をしたとしても、“ヒト”が「うん」と言わなければ、採用はされない。それが特に上司の場合。

 著者がその“ヒト”の重要性に気がついたのは、キャリアの始め、京王プラザホテルに勤めていたとき。当時の上級職は、親会社の電鉄からの出向組が勤めていた。そのため、ホテルの現場には、そぐわない働き方を求められていたという。

 そこで、血気盛んで優秀な柴田氏は、現場の意見をくみ上げ、さらに経営的にも合理的な、超完ぺき人事案を提案したという。

 だが結果は、なぜか3度もお蔵入りに。

 しかし、とある上司に再度機会を設けてもらい、同じ内容をプレゼンするとすんなりと採用された。まったく同じ案なのにもかかわらず!

 なぜ今回の改善案が採用されたかというと、その上司が親会社にまで掛け合って「根回し」をしたからだという。

相手の“気持ち”を動かせば仕事も動く

 よくよく考えてみれば、提案した人事改革案には、親会社からの出向した役員たちの行き場が考えられていなかった。彼らは親会社に戻れるのか? その後のキャリアはどうなるのか? その不安を取り去る「気配り」を上司はやってのけていたのだ。そのとき柴田氏はやっと気がついた。

正論が抵抗にあって通らないときは、その裏になんらかの事情がある。それを理解せずに正論を振りかざしても、物事は動かないのです

 なんらかの事情はもしかしたら、プライドや不安など感情に関わる問題かもしれない。人を動かすには、あなたも相手の感情に訴える必要がある。そのためには、どうしたらいいのか。まず、相手を良く知ることだという。

 柴田氏は、苦手な相手こそ積極的に向き合うべきだという。あるとき、柴田氏が何を言っても、反対な意見を言う人物に手を焼いたという。そして、彼と酒を交え徹底的に向き合うこと7時間。得た結論は……。

自分が良しと思うことは、彼は良しとは思わない

 結局、7時間費やす前と同じと思うなかれ。どんなに話し合っても思考回路が違う人は存在する。なぜ反対の意見を述べるのか。それは自分への反発心なのか。それとも価値観の違いなのか。

「この人は何を言っても反論する」、そうお互いに分かっているだけでもロスする時間が省けるのだ。あなたの意見はなぜ否定されるのか。よく向き合って考えて欲しい。

自分の仕事スタイルを知れば仕事はうまくいく

 この本には、4つのマネージャースタイルが紹介されている。けれどこのチャートは、管理職にかかわらず、自分がどんなスタンスで仕事に向き合うのか誰にでも当てはまる内容だ。

 理想は、状況に合わせて4つのスタイルを使いこなすこと。ときには相手に合わせて仕事のやり方を変える必要があると知らしめてくれる。

 また他人の信頼を得るためには自分のやり方を変える必要もあると言う。自分のやり方とは仕事のやり方を全て変えることではない。ある程度相手に合わせたことだ。特に若いと自分がなめられたくないという意識が働き身なりや態度、言葉の端々に必要以上に自分をよく見せようという意識が働く。

 ビジネス本を手を取る人は元々優秀で真面目な人が多いであろう。けれどもあなたがもっと理解すべきなのはスキルや理屈ではなく情である。数値によって測り切れないもので人とビジネスが動いていくのだ。

 もしもあなたが同僚や取引先とうまくいかないのであれば、それは相手の感情に入れ込めていないのかもしれない。

 そうはいっても理屈型の人間は、“情”だの“プライド”などを理解するのは難しいだろう。その訓練の一つとして、本書では、宴会の幹事を積極的に引き受けることだという。ビジネスに通じることが多いという。その内容はぜひ著書で確認して欲しい。

 部下・後輩だけでなく、上司も。人をうまく“転がせ”たなら、ビジネスはもっとやりやすくなる。そんな大人の裏常識を知っておきたい。

文=武藤徉子