加藤シゲアキ×朝井リョウ 注目の若手作家2人が初対談

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/20

 2012年に『ピンクとグレー』で作家デビューし、2013年に『閃光スクランブル』、2014年には『Burn.-バーン-』(3作すべてKADOKAWA)を立て続けに刊行したNEWSの加藤シゲアキ氏。この3作は“渋谷サーガ”シリーズとしてベストセラーに。そして2015年6月1日(月)、同氏の4作目にして初の短編集『傘をもたない蟻たちは』(KADOKAWA)が刊行された。すでに6万部を突破し緊急重版も決定している。

 今作の刊行を記念し、女性アイドルの世界を描いた『武道館』(文藝春秋)を刊行したばかりの直木賞作家・朝井リョウ氏との初対談が実現! 両氏が「僕らが現代(いま)を書く理由」をテーマに語り合った。共に20代で精力的に執筆活動を行う両氏は、お互いの作品の印象や読書離れが進む現状について熱いトークを展開している。

加藤シゲアキ
「アイドルの仕事ではグループのみんなや、支えてくれる人たちと一緒にものを作っている意識がありますが、小説はいろんな方の力を借りつつも最終的にジャッ ジするのは全部自分ですよね。責任も尋常じゃないけれど、達成感や好きな世界を表現できる楽しさ、読んでもらえた時の救われる気分がまた違う。僕が本を出した時、否定的な意味で『アイドルが本を書いた』とも言われましたが、それは最初から分かっていたので、その状況を楽しむつもりでした。その後そういう人たちの色眼鏡が取れる瞬間も、手に取るように分かりましたし。」

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朝井リョウ
「状況を楽しむ余裕がすごい。私もデビューした時に年齢などが話題になって、作品の質だけで評価されていないと感じてしまって。それを払拭するために、全身全霊でメッセージを書こうと思ってきました。それとは別に、デビューした後で『作家は孤独なものだ』みたいなイメージを押し付けようとする人がいることにも気づいて、その作家像を壊したくて。私は作家だけど毎日楽しくてリア充だけどその何が悪いの、って言いたい(笑)。加藤さんも今、新しい作家像を開拓してらっしゃるわけですよ。」

 同世代だからこそ共感し、共鳴し合う。「小説で伝えたいメッセージ」から「思い描く作家像」まで、同世代ならではの視点で繰り広げられた熱い対談。2人の対談の拡大版が下記サイトから読めるので、是非読んでみてほしい。
⇒『傘をもたない蟻たちは』特設サイト
※この対談は、朝日新聞朝刊(2015年6月4日付)の広告特集記事にて掲載されている。

『傘をもたない蟻たちは』
無限の悲しみはどこまでも僕を埋め尽くす。生きづらさを抱えた人々の痛みと希望を描く、初の短編集。

<収録作品>
「染色」
充実した学生生活を送る美大生・市村の前に、突如現れた美優。彼女の作品を手伝ううち、美優の天才的感性と不思議な魅力に急速にのめり込んでいく市村。短くて激しい恋と将来への葛藤を極彩色で描き出す。

「Undress」
エリートサラリーマン・大西はこのまま一社員として一生を終えるつもりはなかった。しかし、脱サラを機に運命の歯車が狂い始める…。男を取り巻く不条理な世界を皮肉たっぷりに書き綴った物語。

「恋愛小説(仮)」
原稿の書き出しと同じことが夢の中で起こる。そんな奇妙な事象に遭遇した男性作家は、理想のタイプの女性を、夢の中に登場させようと試みるが…。夢にはまっていく男をしっとりとした不気味さとともに描いた初恋ファンタジー。

「イガヌの雨」
突然空から降ってきた食べられる宇宙生物のイガヌは、見た目はグロテスクだが超絶美味の内臓を持っている。食べることを祖父から禁止されていた高校生の美鈴は、ついに家を飛び出しその味を体験してしまう。祖父が頑なに反対する真の理由とは。「食」をテーマにした近未来SF。

「インターセプト」
自信家の男が同僚たちとある女を落とせるか賭けをしていた。得意とする恋愛テクニックを駆使して、若くて魅力的なOLに近づく男。彼女の部屋で一夜を過ごすことができるのか。男女の駆け引きに心理サスペンスを盛り込んだ意欲作。

「にべもなく、よるべもなく」
二人の男子中学生の性と愛、大人になることについての葛藤を、関東の閉塞的な海辺の街を舞台に描く。物語の核となる作中小説「妄想ライン」は、著者である加藤シゲアキが高校生のときに人生で初めて書いた作品で、今回はこの掌編をベースに、さらなる世界観を加えて全く新しく生まれ変わった。本短編集で唯一の書き下ろし作品。

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傘をもたない蟻たちは■『傘をもたない蟻たちは
著:加藤シゲアキ
価格:1,300円(+税)
発売日:2015年6月1日(月)
単行本:256ページ
出版社:KADOKAWA
⇒公式Twitter
⇒電子書籍同時発売、「BOOK☆WALKER」で配信中!

加藤シゲアキ
1987年7月11日生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。作家。NEWSのメンバー。主なドラマ出演作は「トラブルマン」「3年B組金八先生」「華和家の四姉妹」「失恋ショコラティエ」など。 FMヨコハマ「SORASHIGE BOOK」、NHKラジオ第1「らじらー!SATURDAY」ではラジオMCも務める。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)に、金曜レギュラーとして出演し、「体感!ビビットカルチャー」のコーナーを担当する。処女作『ピンクとグレー』が、監督・行定勲氏と脚本・蓬莱竜太氏のタッグにより映画化され、2016年新春に公開予定。

武道館■『武道館
著:朝井リョウ
価格:1,300円(+税)
発売日:2015年4月24日(金)
単行本:303ページ
出版社:文藝春秋

朝井リョウ
1989年、岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。13年『何者』で直木賞を戦後最年少受賞。14年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞受賞。最新刊は『武道館』。