数学の授業って社会の何に役立っているの?

科学

公開日:2015/6/13

 誰もが一度は、「こんな授業が社会に出てから一体何の役に立つのか」と疑問に思ったことがあるだろう。たとえば、簡単な計算ならば日常生活で使いそうだが、「数学」の知識は社会とどう関わっているのか。文系の人間にとっては、三角関数にしろ、√(平方根)にせよ、一体世の中でどう役立てられているのか、とんと検討もつかない。

 篠崎菜穂子著、日本数学検定協会・監修の『はたらく数学 25の「仕事」でわかる、数学の本当の使われ方』(日本実業出版社)は、美容師、パティシエ、パイロット、不動産販売員などさまざまな職業のエピソードを通して、日常に数学がどのように使われているかに触れている。そのなかから、いくつかの数学の使われ方を紹介するとしよう。

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パーマにも、髪を切るのにも計算が必要…奥深い美容師の計算術

 美容師の施術は、センスがモノをいうもの…と思いがちだが、どうやら数学が必要になる場面も多いらしい。たとえば、パーマをかけるには、パーマに使う薬剤、ロッドの大きさ、そして、ロッドに巻く髪の長さをどう決めるかが重要となる。直径20mmのロッドを使おうと考えた時、1回転髪を巻くのに必要な髪の長さは円周率を使って直径20mmの円の周りの長さを求めれば良いから、20×3.14=62.8mm。この数値をもとに客の髪の長さを見て、何回まけるかを計算したり、長さが足りない場合はロッドの直径を小さくしてみようかと考えたりする。もちろんプロになると経験と感覚でカバーすることが多いため、毎回円周率を使って計算ということはないようだが、理論を知っているのと知らないのでは大きく違う。薬剤や客の髪質によってウェーブの出方が違ってくるため、そのときどきで細かな調整がいる。

 ほかにも、美容師はカラー剤やパーマ液は客にあった比率で混ぜないといけないし、髪の毛をすくすきバサミも、ハサミによってスキ率が違うため、客の髪の量や目指す仕上がりによって使い分けねばならない。そんな風に美容師の仕事はその芸術性の裏に数学的な計算が隠されているのだ。

空を飛ぶにも三角関数が必要?パイロットが行う「力」の計算

 空を飛ぶ飛行機。飛行機のような大きな鉄のかたまりを空に飛ばすために数学が必要なことは想像できるが、その操縦にも数学は関わってくる。

 飛行機は翼が風を受けることで機体が上に引っ張りあげられる力・揚力を得て浮かぶことができるが、その大きさは翼の角度や面積によって異なる。さらに、進路変更や障害物を避けるために旋回するとき、機体には、向心力という内側に向かう力と、遠心力という外側に向かう力が発生する。バイクで走っている時にカーブで体を傾けるのと同じイメージで、飛行機の場合も機体を傾けて旋回すると効率よく旋回できるが、機体を傾けると揚力が小さくなってしまう。揚力は、1/2×(空気の密度)×(翼の面積)×(速度)2 ×(揚力係数) という計算によって導き出されるため、パイロットは力の大きさを念頭に入れながら、機体を操縦する。揚力係数は、翼の角度と形で決まる係数でこの計算には三角関数の知識が必要。常に力のバランスを保つにはどうするかを考えて、パイロットは飛行機を安全に運転しているのだ。

 数学は、いろんな職業において用いられている。「もっと学生時代真面目に授業を受けていればこんなこともできたのか…」とどうしても思わされる。2007年からの学習指導要領で学んでいる子どもたちは「数学活用」という科目によって、数学と社会との関わりを学んでいるようだが…。数学と社会との関わりを知ることで数学に多くの子供が興味を持てば良い。数字を見ただけで蕁麻疹の出る私のような大人が少しでも減ることを期待したい。

文=アサトーミナミ