家事能力ゼロの新妻vs.「女の人=家事できる人」な夫のギャップ! 妻はいかにして逆境を乗り越えたのか?

恋愛・結婚

更新日:2015/6/26

 私事で大変恐縮だが、この記事を担当している筆者は、5年交際している彼と、同棲を始めて8ヶ月になる。同棲の感想を単刀直入に言うと「毎日同じ家に帰れて、一緒にいれてすっごく幸せ!」と思えたのは、始めの1週間だけだった。なぜなら、彼が全く家事をしないからである。掃除に洗濯、買い物にご飯作りなど、生活を送る上で欠かせない雑務は、いつの間にか全て私の役割になっていた。
「彼のことは好きだし、一緒にいてラクだけれど、結婚してもこの家事、一生続くのかな……?」時々そんな不安を覚え、恐怖にさいなまれている。

 山内マリコさんの『かわいい結婚』(講談社)は、男女の世界のギャップ をシニカルに、時におかしく描いた、3つの短編が収められている。

advertisement

 表題作である「かわいい結婚」は、10年近く下着屋に勤め、店長にまで昇りつめたものの、結婚するにあたって、夫の両親の希望で専業主婦になった29歳の「ひかり」が主人公だ。

 母親から家事の手ほどきを受けないまま新婚生活をはじめたひかりは、家事能力ゼロ。そのせいで、部屋はちらかり放題でルンバが微動だにできないほど、ごはんはレトルト、やるべきことは山積みなのに、なにもしたくない無気力状態に陥ってしまう。

 夫のまーくんとは仲良しなのに、こんなに嫌いな家事が一生続くなんて……と、新婚早々ひかりは途方に暮れる。

 一方、夫のまーくんは、そんなひかりを諌めることはしないものの、手伝うこともしない。密かにインターネットで「女の人はみんな最低限の家事はできるものだと思っていたのでけっこうショックです」と相談し、アドバイスを受け、ひかりに「心療内科にでも行ってみる?」と、問いかける始末である。

 ひかりは、米を研ぐ時に食器洗い洗剤を入れてしまい、病院に担ぎ込まれるほど家事の基本がわかっていないので、家事におもしろさを見出すことができない。だが、「家事代行サービス」の仕事を手伝わせてもらったのがきっかけで、徐々に家事ができるようになっていく。元々、仕事をしていたときはテキパキと業務をこなせていたので、家事も同じように効率を考えて動くと、マスターするのが早かったのだ。

 陽気な性格のひかりは、家事ができるようになったことを、踊り歌いながら夫のまーくんに報告するのだが、そんなひかりの進歩を「妻がやるべきことをやっているだけ」と、夫は当然のように受け入れる。

「仕事をしていてもしていなくても、家事をするのは女の役目」

 男女平等が高らかに叫ばれるご時勢になったにも関わらず、悲しいことに、このざっくりとしたルールは今も変わっていないような気がする。それっておかしくないか? とも思うけれど、30歳前になると「結婚していない」状態のまま、というのも女はけっこうつらいのだ。「早く孫の顔が見たいわ~」という両親からのプレッシャーや、周りの結婚ラッシュも相まって、自分自身にも焦りがでてくる。それにずっと一人というのも、正直寂しい。

 結婚しても、していなくてもつらいのなら、ひかりのように自分のありのままをさらけ出せる、一緒にいて安らげるパートナーを探して、結婚生活を送るのもありかな? と思った。誰と結婚した所で、掃除や洗濯や料理は一生続くのだ。恐らく、時代が変わってもずっと女の役目だ。

 結婚したければ、幸せに折り合いをつけて、時々この状況をシニカルに笑い飛ばして、生き抜くのもありかもしれないなあ、とため息と共に感じたのである。

文=さゆ