14万部のヒット「今日も嫌がらせ弁当」が絵本に! 主人公“あっちゃん”とお母さんの、お弁当コミュニケーション

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公開日:2015/6/30

 出版後すぐに注目を集め、ネットやTVで話題となった『今日も嫌がらせ弁当 反抗期ムスメに向けたキャラ弁ママの逆襲』(ttkk/三才ブックス)。反抗期の娘と母親の、お弁当でのコミュニケーションが綴られた本書が、なんと絵本になった。

  • きょうもいやがらせべんとう
    (タケト:著、カオリ(ttkk):監修、
    おざわひろみ:イラスト/三才ブックス)
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    今日も嫌がらせ弁当』(ttkk/三才ブックス)

 

 『きょうもいやがらせべんとう』(タケト:著、カオリ(ttkk):監修、おざわひろみ:イラスト/三才ブックス)という、絵本らしい平仮名表記のタイトルになったこの本の主人公は、娘の“あっちゃん”。お弁当というアイテムを通して、あっちゃんの成長していく過程や反抗期、母親との距離や接し方の変化、幼いころからずっと変わらない母親の愛情が描かれている。

 筆者も中学から高校の途中までは毎日お弁当で、毎日欠かさず彩り豊かなお弁当を作ってもらっていた。そしてあっちゃんと同じく野菜嫌いだった筆者のお弁当には、「お弁当でくらいは野菜も食べてほしい」と、にんじんやレタス、ブロッコリーやプチトマトなど、必ず何種類かの野菜が入れられていた。それでも、お弁当独特のあの香りとふたを開ける時のわくわく感、食べる順番を考える楽しさで、普段より野菜を美味しく食べられたし、何より毎日のお弁当がとても楽しみだった。中高生特有の張りつめた精神状態にあった時も、お弁当を見ると少しほっとしたのを覚えている。この絵本を読んでいると、そういった自分の思い出とのリンクも多く、懐かしい気持ちになる。

 幼いころは、お弁当にリクエストをしたり、学校に迎えに来てとねだったり、ママにべったりだったあっちゃん。しかし中学に入り、反抗期を迎える。そっけない態度を取るようになったあっちゃんにそれでもお弁当を作り続ける母親の寂しそうな表情が心に刺さる。どんなにひどい態度をとっても朝早く起きてお弁当を作ってくれる、母親の愛情の深さは偉大だ。

▲ママとのある約束のために、大嫌いなにんじんを食べることになった幼い頃のあっちゃん。これも、「野菜も食べてほしい」というママの親心

▲反抗期になっても、毎日欠かさずお弁当を作るママ

 口数は少なくなっても、あっちゃんの髪にはずっと“あの”髪飾りがついている。

 嫌がらせ弁当の生みの親であるttkkさんことカオリさんと、絵本の文章を手掛けたお笑い芸人のタケトさんで行われた「いやがらせべんとう座談会」(6月26日に三才ブックスから発刊された雑誌『CARTEs』に掲載)でも、タケトさんが、自分がいくら子ども好きで娘が可愛くても「嫁さんの娘に対する愛情には到底かなわない」と語っている。毎日朝早くからお弁当を作り続けるというのは、深く強い愛があってこそ成し遂げられることだろう。まさに無償の愛といえる。

 お弁当を食べて育ってきた人にとって、お弁当は思い出の塊のようなもの。大人になってこの『きょうもいやがらせべんとう』を読むと、お弁当を作ってもらっていた当時のことを客観的に見ることができる。子どもに読ませるのはもちろん、大人になった今だからこそ読みたい絵本だとも感じた。ttkkさんが座談会で話していたように、子育てから解放されたお母さんが読んでも、懐かしさを感じられる内容だろう。

 本書の後半には、自分で作ったオリジナルのお弁当写真が挟めるページもついている。お弁当生活の最後のお弁当を写真に収め、このページに挟めば、世界に一冊だけのオリジナル絵本が完成するのだ。

 子どもが小さい間は普通に絵本として、反抗期を終えて成長した娘、息子とは、笑いながら親子で読める最高のコミュニケーションツールとして、真価を発揮してくれるだろう。

文=月乃雫