リリー・フランキー、園子温、辛酸なめ子、山内マリコ…さまざまなプロが綴る“女の性”。iroha公式サイトの「いろはにほへと」が面白い!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/19

 女性向けAVレーベル「SILK LABO」のヒットや「女性のためのSEX」が雑誌で特集されるなど、なにかと女の“性”が注目される昨今。もっとも世間を騒がせたのは、女性向けTENGAこと「iroha」シリーズの登場ではないだろうか? 以前からそういった商品は存在したが、デザインを意識したものは少なかった。そんななか、手のひらサイズのかわいらしいirohaは、多くの女性が手に取りやすいものとして革新的な存在となっている。

 そんな夜のお供「iroha」の公式サイトには「いろはにほへと」というコンテンツがあるのをご存知だろうか?「いろはにほへと」とは、月刊誌『BARFOUT!』とのコラボ企画。コラムニストの辛酸なめ子や、作家でタレントのリリー・フランキー、映画監督の大根仁や園子温といった、計12人のプロフェッショナルが「iroha」を軸に“女の性”について書き綴る、独創的なコラムコーナーだ。(2015年6月現在)

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 たとえば、コラムニストの辛酸なめ子は『2013年版女の磨き方』と題し、かつて女の“色気”を磨くためにポールダンススクールに通うも、同じ教室にいた女性たちがセクシーにポールに絡みつく姿を目撃し、「やはり女を磨くのは性生活の充実……」という真理に至った経緯を語っている。そして、最終手段として、自然災害の渦中に身を置き、生命の危機を感じて生殖能力を上げる“荒業”をオススメするなど、辛酸なめ子節が炸裂している。 

 映画監督のタナダユキは、能の大家・世阿弥が記した『風姿花伝』の名言「秘すれば花」を題に用いている。現代の女性たちが性の話題に対し、オープンになっている時流について「女性たちも世阿弥の教えを思い出し曖昧に微笑むくらいの芸を隠し持ち、いくばくかでも夢と妄想を男性に与えてもよいのでは」と、綴っている。ミステリアスな魅力がエロスを育てるといったところだろうか?

 また、女による女のためのR-18文学賞作家・山内マリコも「いろはにほへと」に寄稿しているひとり。その内容は、女の性欲ピークが30代、40代。男の性欲ピークは10代、20代と言われていることについて、

女の子だって、十代、二十代のうちからちゃんと性欲はある。性欲のピークが三十代から四十代なんじゃなくて、そのくらいの年齢になってはじめて女性は相手に面と向かって“エッチしたい”と口にできるようになるんじゃないかと思う

という、持論を展開。女の性欲の歴史にも触れた、興味深い内容となっている。

 そんな山内マリコの最新短篇集『かわいい結婚』(講談社)が発売された。表題作の『かわいい結婚』では、家事スキルゼロの専業主婦・ひかりが家事代行サービスのパートで技術を学ぶ姿が描かれる。どんどん家事能力を上げるひかりだったが、その事実を当然のこととして受け入れる夫に疑問を感じながら、毎日家事をこなしていく。家事の楽しさに目覚めたひかりだったが、ある朝洗濯物を干していたひかりは「この日々が一生ずっと続く」ことに気がつき、ベランダで悲鳴をあげる。女性の社会進出が増えてきたとはいえ、未だ男女の“役割分担思想”は根強い、そんな現実を突きつけられる作品だ。

 そのほか、これまで“女”を理解してこなかった27歳の青年・裕司が、ある日突然女の体に変身してしまう奇譚『悪夢じゃなかった?』、ファッションから化粧、好きな人までオソロイの女子大生、ユリとあや子が登場する『お嬢さんたち気をつけて』の全3作を収録。ピンク色のキュートな装丁とは裏腹に、生き物として分かり合えない男と女のピリ辛エピソードが満載だ。

 作家や映画監督、イラストレーター、プロの感性が描く“女の性”をのぞき見できる「いろはにほへと」や、女の役割について疑問を投げかける『かわいい結婚』。これらを通して、女ゴコロと真剣に向き合ってみるのも一興かもしれない。

文=不動明子(清談社)