珍しい題材を扱った、歴史マンガの傑作!『アンゴルモア 元寇合戦記』第3巻発売

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/19

 コミックWEBサービス「Comic Walker」(KADOKAWA)に連載中の、たかぎ七彦による漫画『アンゴルモア 元寇合戦記』の第3巻が、6月26日に発売された。本作はタイトルが示す通り、13世紀後半に起きた、元による二度の日本侵攻=「元寇」を描いたものである。連載開始当初から、各方面で高い評価を得ており、「Comic Walker」のデイリー、ウイークリー、マンスリー各カテゴリーで1位を獲得している。

 時は西暦1274年。第8代執権・北条時宗は、二月騒動(北条家の骨肉の争い)で、異母兄の時輔ら、反抗勢力を一掃。反時宗側についた御家人・朽井迅三郎は、九州北方の対馬に流される。

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 ちょうどその頃、中国大陸を支配していた元(モンゴル帝国、大蒙古国)と、その属国であった朝鮮半島の高麗王国の軍が、日本を支配下におさめるべく、海を渡っていた。迅三郎を含む流人たちが対馬に着くのとほぼ同時に、蒙古軍も来襲。迅三郎は、鎮西奉行の息子であり、御家人時代の知り合いでもある少弐景資から「九州から援軍が到着するまでの7日間、対馬を守れ」と命じられる。

 「義経流」と呼ばれる兵法をおさめ、実戦に長けた迅三郎は、対馬の人々をまとめ、夜襲を成功させる。しかしその前に、蒙古軍の副元帥である、劉復亨という勇猛な男が立ち塞がる――。

 以上が、第2巻までのあらすじであり、第3巻でも劉復亨との闘いをはじめ、迅三郎たちに次々と困難が襲いかかる。

 鎌倉幕府衰退のきっかけとなった、重要な出来事であるにもかかわらず、元寇が漫画で取り上げられることは少ない。しかし、そんな珍しく、なじみのうすい題材を扱いながらも、本作にとっつきづらさはない。私自身、元寇については教科書程度の知識しか持ち合わせていなかったが、冒頭の迫力ある合戦シーンで物語の世界にひきこまれ、テンポのいい語り口に乗せられて、一気に読み進めてしまった。

 また、主要なキャラクターたちはみな、何かしらの事情を抱えている。戦においては天才的な能力を発揮するが、流行り病で亡くした妻子のことを、今も引きずっている迅三郎。かつて迅三郎に捕縛された、元・海賊の鬼剛丸。流人の迅三郎の活躍を苦々しく思う、対馬の侍。はるか昔に対馬に送り込まれた「防人」の末裔であり、壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇を奉じているという長嶺判官。安徳天皇の曾孫といわれており、美しさと気性の激しさを併せ持つ輝日姫――。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語にいっそうの面白味と深みを与えている。

 対馬での戦いはまだ始まったばかり。兵の人数も兵器の威力も桁違いな敵を相手に、迅三郎たちがいかにして戦うのか。対馬はどうなるのか。舞台は壱岐や博多へと移っていくのか。安徳天皇は本当に生きているのか、物語にどう絡んでくるのか。史実に基づいているとはいえ、話がどう転がっていくのか予想がつかず、今後の展開が非常に気になるところだ。

文=村本篤信

『アンゴルモア 元寇合戦記』(たかぎ七彦/KADOKAWA 角川書店)