5年に一度の秘祭!?「とら祭り2015」から見えてきた、とらのあなの飽くなき欲望!

アニメ

公開日:2015/7/9

 先月6月21日、幕張メッセでは朝から熱い熱気に包まれていた。人々が長〜い列をなしていたのは、「とら祭り2015 ~とらのあな20周年感謝祭~ in 幕張メッセ」!
 同人誌販売の草分け的存在、とらのあなが日頃の感謝を込めて、一大イベントを開催していたのだ。実はこのお祭り、前回開催されたのは5年前。オリンピックより希有な存在とあって大勢が駆けつけたのだ。

 今回の「とら祭り2015」は、前回よりも格段にパワーアップ! 同人誌即売会だけではなく、原画展やミニライブ、コスプレショーなど幅広いコンテンツを楽しめるお祭りのようなイベントとなっていた。
 そう、以前にお伝えした美人すぎるロシア人コスプレイヤーもこの「とら祭り」の一環。たった一日ですべて見て回るのは大変なボリュームのイベントで、我々の持つ「アキバ系の書店」というイメージしかなかった、とらのあなよりも、遥かにスケールの大きいものであった。いったい、とらのあなに何が起きている? 熱気渦巻く同社の事情を探ってみた。


ファッションショー形式で自慢の衣装を披露する「Yume(no)sora Cosplay Collection」は新鮮であった


■とらのあなが急拡大するワケとは!?

「クリエイターさん、ユーザーさんへ日頃の感謝をお伝えするために開催したイベントです。我々が大きく成長できているのは当社に関わってくれているすべての皆さんのおかげ。以前から5年に1回は、形に残るようなものを残したいと考えていたのです。今年は創立20周年、さらに新たにホールディングス体制になって2年目。前回とはひと味違ったものになっていると思います」
 ばっさり“秘祭”“幻の祭”ではないとお答えいただいたのは、鮎澤慎二郎氏。とらのあなのグループを取りまとめるユメ(ノ)ソラホールディングスの執行役員である。

“新体制”との話しが出てきたが、ちょっとした変革がここ2年の間に起きていたのだという。この変化が今回の「とら祭り」にも色濃く反映されていたそうだ。いったい何が起きたというのだ?

「創業以来、私たちが大きく成長できているのは、まずクリエイターさんたちのおかげです。当社は今や5万人を超えるクリエイターの方々とお取引させていただいています。今までは、委託販売という“出口”を提供するお付き合いでした。これからはそれより一歩進んだ形でクリエイターさんの支援をさせていただこうと思い、2013年にユメ(ノ)ソラホールディングスを立ち上げました。昨年末に当社グループの一員となったゲームメーカーのアクアプラスもそのひとつ。コンテンツメーカーをプロデュースし、一緒に新しい“出口”を増やしていこうと思っています。クリエイターの皆さんを支援することは、結果としてユーザーさんも喜ぶことにつながると思っています」

 クリエイターなんていうと仰々しいが、コスプレイヤーだってクリエイティブな行為のひとつ。コスプレイヤーさんがランウェイを歩く「Yume(no)sora Cosplay Collection」を設けたように、今後は積極的にクリエイターさんたちを支援していく意向だそう。


執行役員COO補佐 鮎澤慎二郎氏もオタカルチャー大好き。好きな作品は『めぞん一刻』とのこと


■新しい形でクリエイターを支援

 そして“出口”との発言。今さらですが“出口”ってなんですか? どこかへ脱出してしまうのか?

「“出口”とは、収益化の部分のことです。優れたコンテンツを提供するクリエイターさんは多いのですが、なかなか収入に変えることは難しいんですよね。オタクの世界はおもしろいもので、どんなに特殊に見える作品でも、絶対に『欲しい!』っていう人がいる。発信する人と欲しい人、そのマッチングのお手伝いをもっとしていこう、ということです」

 多くの優れた作品をインターネットや動画サイトで見ることができるが、それは全部タダで見れてしまう。だが彼らにもっと対価を払ってもいいと思っている人も多いはず。そんな必要としあう人同士をつなぐ、マッチングの試みの一つが、「AKIBAPOP:DOJO(アキバポップドウジョウ)」なのだそう。

「師範などの資格はないけれど『その道にうるさい人』。昔の寺子屋のように、物知りな人が知恵を分け合う。そんな“まちの寺子屋”的なものを作ろうとしてできたのが『AKIBAPOP:DOJO』です。
 具体的には、SNSで同じ趣味を共有することはもちろん、リアルな場でレッスンを開いたり、また集いの場を秋葉原に提供したりしています。ここでは、自分が教える立場にも、教えられる立場にもなれます。10代から年配の人まで幅広い方々に利用していただいているようです」


サブカル系カルチャースクール「AKIBAPOP:DOJO」は、ニコ生放送も行っている。「とら祭り2015」では、出張トークショーが行われた


■“誰もやっていないこと”や“ワクワク感”が大事!

 今回の「とら祭り2015」には、「とらのあなVR店体験ブース」というブースもできていた。ヘッドマウントディスプレイをかけて、ヴァーチャルリアリティーな店舗を体験してもらうという試み。この未来的な試みも、新しい形のクリエイター支援だという。

「今はヴァーチャルリアリティーのインフラはあまり整っていません。けれどこれがボカロの作品などと同じように、沢山のPがそれぞれのヴァーチャルリアリティーコンテンツを配信していったら、すごいと思いませんか!? SFの世界のことが、現実になる。究極に作品の世界に没頭できるコンテンツですよ。今はまだ形になっていませんが、もしも実現したらすごいですよね。だからとらのあなでは、ヴァーチャルリアリティーのクリエイターさんたちも支援していきたいんですよ」


とらのあなVR店体験ブースで、ヴァーチャルリアリティー体験。宙をまさぐっているのは、フィギュアたんを回転させているのだ


ヘッドマウントディスプレイから見える画像。このフィギュアは1/2スケールかと見まがうほど、大きく見えるのだ!

 確かにフィギュアを手元に引き寄せたり、様々な角度から鑑賞するなど、VR店での360度仮想空間で満たされる体験は、迫力満点で得がたいものであった。欧米では、ヴァーチャルリアリティーのインフラが徐々に普及しているとはいえ、日本ではまだまだ。ずいぶん先端的な試みだが、商売になるのだろうか?

「いや、そこは何とも言えないです。でも、おもしろいと思いませんか? 私たちはユーザーさんにもクリエイターさんにも、“ワクワク”を提供する企業でありたいんですよ。経営戦略とか売り上げ目標とかの前に。なので『やってみたらおもしろいよね』ということには積極的に取り組んでいます」


「やってみたらおもしろい」の精神で造られた『ドリフターズ』の1/1スケールのフィギュア。3Dプリンターで造形された


■実はみんな作品の世界に没頭するのが好き!

 ヴァーチャルリアリティーの作品を自宅で鑑賞できる時代がきたらと思うと、想像するだけで、なんだかワクワクしてしまう。あの絵師さんの絵で、こんなボカロが目の前であのPの曲を歌ってくれたら……。夢はどんどん広がっていく。

「二次元の世界の楽しさって、その作品世界に没頭できることなんじゃないかと私は思います。二次元というと、絵柄などから好みが分かれると思います。けれど三次元の映画やドラマなどが好きな人も、『作品の世界』を楽しんで視聴してますよね。みんな非現実的な世界が好きなんですよ!
 だからオタク市場は、まだまだ伸びると思います。それも国内市場は。なぜなら、オタクと呼ばれている人と、いわゆる普通の人との境目がどんどん無くなってきているからです。そしてオタク人口が増えると、ニーズももっと多様化してくると思うんです。そこでクリエイターさんたちがもっともっと輝けるよう後押ししていきたいと考えています」


「通販もいいがリアル店舗もぜひ訪れて欲しい」と鮎澤氏。とんがった情報をどんどん発信していくそうだ

 なるほど、アニメ・マンガは見なくとも、シンガーソングライターの歌や映画に没頭する人は多い。「非現実」を愛する意味では二次元も三次元も一緒なのだ。
 ジャンルや国境を越えてクリエイターの最先端を応援するとらのあな、およびユメ(ノ)ソラホールディングスグループ。今後は、我々にどんなワクワクを提供してくれるのか楽しみだ! 

■ユメ(ノ)ソラホールディングスって?
公式HPをチェック!
http://yumenosora.co.jp

■集い学び遊ぶ場「AKIBAPOP:DOJO」に登録してみよう!
https://akibap.com

(撮影=山本哲也、取材・文=武藤徉子)