つながり婚、シェアが流行! 『ゼクシィ』編集長に聞いた、結婚式のトレンドと気になるお金の話

公開日:2015/7/25

 女性にとって永遠の夢である結婚。TVや映画の世界で描かれる華やかな結婚式に憧れる一方で、女性の働きかたの多様化や、コストカットできると人気の「楽婚」「スマ婚」が流行るなど、時代にあわせて変化するのが「結婚式」だ。実際のところ、結婚式をあげるとなると考えなければならない現実問題は山積み。まずは「いまどきの結婚式事情」を押さえてみることからはじめてみよう!

 というわけで、ダ・ヴィンチニュースは、結婚式のバイブル『ゼクシィ』首都圏版 編集長の神本絵里さんに、気になるトレンドやマネー事情をきいてみた。

トレンドは「つながり婚」「家族」「イケ婿」「シェア」!

『ゼクシィ』首都圏版 編集長・神本絵里さん。
花嫁さんの意見が取り入れられた付録はどれも実用的!
中には夫婦の下着を別々に仕切って洗える洗濯ネットなども(笑)

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――ここ最近の結婚式のトレンドを教えてください。

 いくつかキーワードがありますが、まずひとつ目は「つながり婚」ですね。家族やいつも支えてくれている大切な人たちとの絆を大切にして、感謝を伝えたり、夫婦としての誓いを大切にしたり、本質的なところを重視するカップルが増えています。トレンドは大体10年で変わるのですが、この傾向が見えはじめたのは、リーマンショックと東日本大震災前後の2010年頃からで、「モノ」より「コト」という本質的な部分が大事ということに、人々の目がいくようになったということでしょう。結婚式の3時間を楽しむだけでなく、未来につながる時間にしたいというカップルさんが増えてきています。

――結婚式の演出にも具体的に現れるのですか?

 そうですね。こういうトレンドが出てきた中で、キーワードになってきたのが「家族」です。これまではご両親は後ろに控えていらっしゃるのが当たり前でしたが、最近の結婚式では表に登場するシーンが増えています。たとえばケーキカットも6人(新郎新婦+両家の父母)でやるシーンも良く見ますし、カットしたケーキを母から子へ「ラストバイト」として食べさせてあげるとか。また、新婦のお母様による「ベールダウン」(※挙式のチャペルに入った時に、最後の花嫁支度として新婦のベールを降ろすこと)は、今や当たり前の演出になっています。お色直し前の中座では、新郎もお母様やご兄弟と退場したり、ご両親だけでなく、おばあちゃんなどいろんな家族が登場するようになっていますね。

――新郎もそういう演出にちゃんと関わるんですね。

 はい。「イケ婿」として、最近のキーワードにもなっています。以前は結婚式は花嫁のためのものという感覚がありましたが、最近は準備から積極的に関わる花婿が増えていて、そういう方たちを指しています。「つながり婚」と共通する面がありますが、花婿自身も結婚式は「自分にとっても大切なものだ」と思われるようになったのでしょう。半年に一度、「彼専用ゼクシイ」という別冊付録をつけていますが、それを目当てに花婿が買ってきたという声も聞きますね。

――なるほど、単にお披露目の場ではなく、意味を大事にされているんですね。

 そうですね。周囲のみなさんとのつながりをあらためて実感して大切にする場になっているのかなと。その延長ともいえるトレンドとして「シェア」もあげられると思います。家族だけではなくてゲスト全員と一緒に楽しむウエディングというものですが、ゲスト全員で何かをする時間を作ったりするんです。たとえば人前式の場合に、ゲスト全員に色とりどりの朱肉で捺印してもらって結婚証明書のツリーを完成させたり、新郎新婦もゲストと一緒に踊る“フラッシュモブ”をしたり、会場全体で楽しむ演出が増えていますね。

自分らしさを求めて会場も予算も多様化している

――トレンドにあわせて、人気の会場も変わってきたりするんでしょうか?

 それが実は、「ココが流行というのがない」のが、今のトレンドなんです。かつて80年代は「ハデ婚」で会場は基本的にホテルでしたし、90年代は「ジミ婚」で式自体を挙げなかったり、やってもレストランでささやかに、2000年代は貸し切りのゲストハウス、とそれぞれ流行りがありました。でも2010年代の今は、自由に好きなところを選ぶので多様化しているんです。
 ホテルらしさやレストランらしさはそれぞれありますが、今はウェディングプランナーや会場の提案力もあがっていて、どちらの会場でもある程度やりたいことが実現できるようになったのも大きいですね。流行りより「自分たちらしいところでやる」という観点で選ばれているように思います。

――なるほど。自分らしさ次第というと、予算にも幅が出そうですね。最近の結婚式のマネー事情はどうなんでしょう?

ご祝儀や引き出物の文化があまりない北海道の平均費用は、192.3万円!

 ゼクシィの出している結婚トレンド調査でみると、333万円が平均です(2014年調べ)。実際には親からの援助やご祝儀で、自己負担はもう少し少なくなるとは思います。毎年10月に調査していますが、ここ数年はほぼ横ばいですね。たしかに実際の金額にはすごく幅があって、たとえばお値段高めな会場で盛大にやろうとすると500万円以上かかるケースもありますし、逆に食事会だけで50万円以下という実例も最近出てきたりしています。ちなみにどんな形式のウエディングでも、ゲストに関わる費用(料理、引き出物など)が比較的大きな金額アップにつながりやすい部分です。ひとりあたりの金額は大きくなくても、人数分かかってきますので総額でいくらくらいのアップになるのかはきちんと把握しておいたほうがいいですね。

――新婦さんのドレスも金額に差がありそうですね。

 白のウエディングドレスの平均総額は24.5万円ですが、憧れのブランドのドレスを着るためにドレスに80万円かける方もいらっしゃります。そのために貯金をしたという声も聞きますし、ご本人のこだわり次第ですね。最近は、お母様のドレスをリメイクして着たりと、着る「意味」を大事にされる方も増えてきていて、お金をかけるだけではない、いろいろなやり方があると思います。ちなみに最近はドレスを普段の服にリメイクしてくれるサービスも登場して、思い出の残し方も多様化しています。

――思い出の残し方といえば、都内の公園などでウエディング姿で写真を撮っているカップルをみかけます。ああいうのも一例ですよね?

 ロケーション・フォトですね。結婚式の前に撮って、当日のウエルカムボードに飾られたり、アルバムにする方も増えていますね。Instagram(インスタグラム)やPinterest(ピンタレスト)のようなアプリやFacebookなど、SNSの影響で写真が身近になっていることもあってか、最近は写真にこだわる方が増えていますね。海外の「Save the Dateカード」(結婚式の日取りが決まったら“この日を空けておいて”とゲストに知らせるためのカード。欧米では一般的な習慣)などの影響もあり、エンゲージメントフォトといって“婚約時の自然なふたり”の姿を素敵な写真で残すエンゲージメントフォトをやられる方も出てきています。

編集長直伝。ゼクシィの上手な使い方!

『ゼクシィ』は、首都圏版をはじめ全国で19版、毎月発行される

――ズバリ、ゼクシィのオススメの使い方を教えてください。

 大半の方が会場を決定されるのが挙式の8カ月前といわれていて、ご両親への挨拶なども含めれば1年前から準備はスタートします。結婚を決めたらゼクシィを読んでいただきたいのですが、4号読んでいただければ、押さえるべき情報は網羅できるようになっています。「段取り・準備の進め方」「マネー事情」「結婚式の作り方・演出」「ゲストの声・気持ち」、などのテーマを順を追って押さえていただくのがおすすめですね。もちろん1冊とアプリの併用で押さえるという方もいますが、やはり掲載される経験者の生声の部分が読みたくて、2冊目を買ったという声もいただいています。

――たしかに「生声」は大事ですよね!

 弊誌の強みは「花嫁さん目線」を大事にしていることです。素敵なだけでなく実際に手が届くものを提案したい、それを近くで応援していきたいということで、花嫁さんに会う機会もたくさん作っていますし、「花嫁1000人委員会」(『ゼクシィ』を読んで結婚した花嫁によるモニター組織)では、ほぼすべての記事に関してアンケートをとっています。後輩花嫁のためにアドバイスしたいというモチベーションの高い方に集まっていただけるので、様々なリアルな声を紹介することができるんです。

――なんだか女同士のつながりを感じますね。

(笑)。なかなか、実生活の中では、結婚式のことって人に言えないですよね。「こんなにココがんばったんだよ」とか。でも、実際、すごくがんばっていて、それを伝えたいという思いはあるのだと思います。みなさんの声は付録にも役立っているんですよ。「あったら嬉しいけど、買うまでじゃない」ものを編集部で一生懸命考えて作っていますが、花嫁さんのアドバイスでより充実して、たくさんヒットも出ました。

話題をよんだ『ゼクシィ』オリジナルのピンク色の婚約届。
入籍日により特別感を持たせたいとの花嫁さんの思いから実現した

――晩婚化も進んでますが、世代間で差はありますか?

 年齢があがるにつれ、式の演出等よりゲストへのお料理や引き出物にお金をかける傾向があるように思います。実はゼクシィでは33歳からの大人のカップルのために『ゼクシィPremier(プレミア)』(年4回)を発行しているんですが、華やかさよりも、よりナチュラルに、その場にいるだけで楽しめる上質な空間というのが求められていると感じていますし、『ゼクシィPremier』からもそういう提案をしています。

――この4月から渋谷区で同性パートナーシップ条例が施行されたり、同性婚に対する注目もあがってきていますが、何か取り組みをされていますか?

 すでに『ゼクシィPremier』ではのLGBTカップルの結婚式を実例として紹介しています。『ゼクシィ』は「2人で生きていくと決めた方たち」を応援したいので、特別なものとは考えていません。あくまで他のカップルと変わらないスタンスで、これからも紹介していきます。

――「2人で生きていくと決めた方たち」を応援するって、シンプルで力強いですね!

 「結婚式」というのは、ただの3時間のイベントではなくて、「60年のはじまり」なんですよね。2人が夫婦や家族としていい人生を歩むための出発点であってほしいし、だからやる価値があるものだと思うんです。最初は結婚式に否定的だった方も、実際に挙げてみたら大事さに気がついたという声もよく聞きます。多くの方にその価値に気がついていただくために、どうしたらいいかを、これからも『ゼクシィ』では考え続けていきます!

取材・文=荒井理恵