婚約破棄、スピード離婚…絶対さけたい! 結婚にまつわるトラブル

更新日:2015/7/25

 恋は人を盲目にし、結婚が視力を取り戻してくれる…。
恋愛するだけなら楽しくても、いざ結婚となると、いやでも現実が見えてくる。「優しい人だと思っていたらただの頼りない人だった」「急に傲慢な態度をとるようになった」なんていうのは序の口。「そもそも夫は子供を望んでなかった」「夫がEDで離婚した」なんて深刻な問題も。

 結婚は家と家との問題だからこそ、結婚相手だけではないトラブルもありうる。「あの男は、うちの家柄に合わないから婚約するな」と、両親から反対される。2世帯家族で、嫁が姑に「1泊旅行してもいいか」と尋ねたら、「ペットと夫の世話は誰がするんだ、家事どころか遊んでばかりの嫁だと世間から思われる」と激怒される。時代錯誤な面倒ごとすら、現実に起きているらしい…。
そんな結婚=幸せばかりではない現実をいろんな本をもとに見てみるとしよう。

“子孫を残すこと”が最優先の結婚は、しあわせなのか?

 結婚における周囲の人間関係の厄介さを感じずにはいられないのが、『皇太子婚約解消事件』(浅見雅男/KADOKAWA 角川書店)。嘉仁親王(後の大正天皇)の妃を選ぶにあたっての周囲の奔走を描いた作品である。嘉仁親王の養育役である佐佐木高行を中心に多くの人が妃選びに関わり、10数人の候補者の中から、1893年に伏見宮禎子が婚約者として内定した。しかし、その6年後、禎子に結核の疑いがあることが判明し、婚約は解消されることになると、代わりの妃候補が必要となる。後の「天皇」の跡継ぎを産む妃探しともなれば、周囲が黙っているはずはない。

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「結婚」というものが「子孫を残すためのもの」であり、当人同士だけの問題ではないことをこの本は教えてくれる。昭和天皇の妃を選ぶにあたっては「妃の家系に、色盲のものがいる」などと山県有朋が茶々を入れた「宮中某重大事件」が名高いが、大正天皇の妃選びの際も、周囲の者は忌憚なき意見を披露し合っては、妃候補を選出したらしい。久邇宮女王は「如何にも御体裁不宜」、一条家の娘は「御生質宜からず」、徳川の娘は「見ばえ無之」などと、俗な言葉でいえば、ブス、イジワル、チビ、と10代半ばの少女たちを批評し、あらゆる検討を重ねた結果、1900年に九条節子(貞明皇后)が内定するが、非皇族であった彼女に対し、「健康というだけが取り柄」などという批判の声もあったようだ。

フィクションだからってバカにできない! “スピード離婚”後は問題だらけ

 結婚とはなんと面倒なものなのだろう。しかし、周りがいくら騒いだとしても、大切なのは、当人同士の相性だ。いくら慎重に相手を選ぼうとも、結婚後、相手の欠点に気がつき幻滅する…ということは決して少ないことではない。『成田離婚』(フジテレビ出版)は1997年に草彅剛、瀬戸朝香主演で放送されたフジテレビ系ドラマのノベライズ本。新婚旅行を期にスピード離婚する「成田離婚」のような顕著な例は現実にはなかなかないかもしれないが、思わぬ相手の真の姿を知った時、「これから一緒にやっていけるのか不安」と思うことは誰にだってありそうだ。

 主人公は、商社に勤める星野一朗、24歳。会社の受付嬢で22歳の田中夕子と結婚することになり、新婚旅行に出掛けたが、旅行中の一朗の態度に我慢し続けた夕子は帰国後の成田空港で大激怒。口論の末、2人は離婚を決意することになる。一朗と夕子はもうヨリを戻すことはできないのか。離婚に突き進む2人にいろんな問題が立ちはだかる。

 一朗はかなりの優柔不断で頼りない性格ある一方で、夕子は決断が早く、行動力もある。婚約後、寿退社を早々に決断して、式・披露宴・新婚旅行・結婚生活の準備をした夕子に対し、一朗は何も手伝おうともしなかった。商社に勤めているというのに英語ができない一朗は旅行中も夕子を呆れさせてばかりで、夕子が嫌になるのも当たり前。しかし、結婚する以上に、離婚するためにはいくつものハードルがある。人に流されがちな一朗は、社内結婚が早々に破綻したことを会社の人々や両親になかなか報告することができない。それに、ローンを組んだばかりのマンションもある。スピード離婚した夫婦が契約していたマンションなど誰も買いたくないだろう。数ヵ月の結婚生活とはいえ、持ち物をどう分けるかも考えねばならない。

男と女は、自我を張ったら破綻する?

 一度始めたものを終わらせるのは、なかなか骨が折れることなのだろう。では、トラブルなく円満な結婚生活を送るにはどうしたら良いのだろうか。そのヒントが隠されていそうなのが、阿川佐和子さんの『婚約のあとで』(新潮社)だ。

 この作品は、7人の女性たちが恋愛や結婚、仕事や家庭に思い悩む姿を描き出した連作短編小説。化粧品会社に勤める29歳のキャリアウーマン村松波を主軸に物語が進んでいく。半年前に婚約したものの、現在、相手がニューヨークに赴任しているため式の日取りが未定という状況の彼女は、マリッジブルーならぬ「婚約ブルー」にかかっている。フィアンセと会っても頭にくることばかりだし、なにより仕事が楽しい。「亭主の収入だけに頼って生きるなんてつまらない」と専業主婦になることに抵抗感もある。しかし次第に波は、今の自分は自分のことだけ考えて生きているのだ、ということに気がつき始める。会社勤めは、文句を言おうとサボっていようと、結局毎月給料がもらえるわけだし、少しうまくやれれば評価してもらえる。すると、どうも自分は立派に自立した女だと錯覚し、ひとりでも生きていけると思いこんでしまうのだ。だが、主婦となったら家庭のために生きねばならない。そんな主婦たちを裏切り、浮気に走る男たちだっている。波は男女問わずいろんな人と出会うなかで、一体どういう選択をとるのか――。

 結婚は人生の墓場などという。本当にそうであるかはしたものにしかわからないが、どうやら、トラブルは後をたたないらしい。しかし、この物語の中である登場人物はいう。「なんとかなりますよ。今、心配したって、わかりませんからね、どうなるか。ことが起こってから考えればいいんですよ。もし選択を間違っても、いずれ、なんとでもなります」。また他の登場人物はこういう「男と女の関係なんて、自我を張るから破綻するのである。たかだか30年ほどの人生に、他人に譲れないような自我なんて確立しているわけがない」。相手に合わせること、意地を張らないことが結婚にまつわるトラブルを乗り切るコツということだろうか。これは至言のように思えるが、これを書いた阿川さんが未だ独身というのは少し気になる…。

 人の幸せは人それぞれ。はたして、結婚することだけが幸せなのか? 考えすぎない方が気がラクになりそうだ。

文=アサトーミナミ