その“きれいごと”は本当に結果につながりますか? 守りに入っているビジネスパーソンに必要なこと

仕事術

公開日:2015/8/24

 様々な場面で見聞きされる“きれいごと”の数々。その是非や賛否はさておき、それぞれの言葉を苦手とする人たちも少なくない。ビジネスの場面でも、それに当てはまるような言葉を耳にする機会はある。例えば、「原理原則が大切」「和を乱してはいけない」「お金より大事なものがある」といった類いの格言であるが、よく使われる常套句に異論を投げかける一冊がある。

 書籍『仕事で結果を出す人はこの「きれいごと」を言わない!』(上野光夫/フォレスト出版)である。著者は、コンサルタントとして数々の融資案件を手がけてきた1人。過去には3万人を超える経営者や起業を志すビジネスマンに出会ってきたというが、「成功する人も、そうでない人も能力にあまり差がない」と回想する。

advertisement

 成功とひとくちに言っても、人により着地点は様々である。しかし、時間だけは平等で限られている以上、成果を出す必要がどうしても生まれてくる。会社勤務時代、管理職として活躍していた著者はある日「結果につながりそうもない”仕事のやり方”を求められる場面が多くなった」とジレンマを感じ、その経験から、独立後には自分の本音と向き合い「意図しないことに振り回されて、時間も労力もムダにするのはやめるべき」だと悟ったという。

 その延長線上にあるのが、一見正しいとされる“きれいごと”というくくりだ。では、経験により「これは“きれいごと”か? それとも、結果につながることなのか?」と自問自答を重ねる著者が伝えたい、ビジネスにおける問題意識とは何か。同書の内容を元に、紹介していこう。

◎盲目的に信じ込むのではなく「原理原則」を自ら取捨選択していくのが重要

 自己啓発がそこかしこにみられる昨今。ビジネスの世界では「ドラッガー」や「ランチェスター」の名前などが飛び交うが、著者は「“原理原則”があるという考え方には懐疑的」だと述べる。

 人それぞれの環境は様々で、それは企業やその内部で働く人たちにもいえることだ。そのため、過去に体系化された原理原則が全ての物事に当てはまるとは限らない。ただ著者は、それらを「優れた理論」であると認める一方、「自分自身で決めて、行動指針とすれば、大きな効果」が得られると提唱する。「仕事での経験によって蓄積された考え方や行動の基本として、誰もが持っているもの」という前提から、仕事へ励む全ての人たちが、自分にふさわしいやり方を信じるのが何よりも大切だと語っている。

◎閉塞感を抱くなら「和を乱す人」になる勇気も必要となる

 和を以て貴しと為す。聖徳太子が残したとされる言葉である。諸説あるものの、広くは「協調して互いに手を取り合うことこそ大切である」と捉えられる。そのせいか、とりわけ日本では“協調性”が評価の基準に据えられる機会も少なくないが、著者は「和を重んじることがいきすぎると、硬直的で保守的な組織になって、成長は見込めないのが実態」であると主張する。

 当然ながら、初めから“和を乱す”ことを目的にするのではない。多かれ少なかれ不安や不満の募る現状を打破して、よい結果をもたらすためには「和を乱してでも何かを変えようと行動する人物」が必要になるということだ。

 同書では、会社の衰退を憂いたあるビジネスマンが、大幅な方針転換を迫る企画を上司や役員に提案したケースが紹介されている。結果、その彼は幾多の反対に見舞われながらも、業績回復に貢献したというが、著者はこの事例を元に「協調性のある人物でいるだけではなく、組織や世の中をいい方向へ変えるべく、和に一石を投じる人になってください」と語りかけている。

日常や人生を充実させるためには“お金”へ意識を向けるのも大切