総計400種類超! チロルチョコの新商品はどうやって作られるの?

マンガ

更新日:2015/9/4

 白、黒、赤、黄色…… 色とりどりのパッケージに包まれた「チロルチョコ」。コンビニやスーパーのレジ横などにちょこんとおいてある四角くて小さなお菓子を一度は口にしたことがある人も多いのではないでしょうか? なんとこのチロルチョコ、年間20~30種類は新商品が出るんだそうです。

 「全部でどれくらい種類数があるのかよく聞かれますが、正直把握してないんです。次々に新商品が出るので追い切れない。確実に400種類以上は出ていると思うのですが、定かではありません(笑)」

 こう語るのはチロルチョコ株式会社の企画室室長・佐熊亮寛さん。企画室のメンバー4人で、チロルチョコの新商品すべてを生み出しているのだそうです。最近では、“塩をかけて食べる”というコンセプトで開発された「すいか味」が大ヒット。こういう斬新なお菓子がどのように生まれているのかって興味ありますよね。

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コミックエッセイの中で語られるチロルチョコの秘密とは?

 先日発売されたコミックエッセイ『チロルチョコで働いています』(伊東フミ/KADOKAWA)では、企画室に配属された新人女性社員をモデルに、彼女が発案したチロルチョコ「チロくま」がどのように生まれ、商品になったのかが詳しく紹介されていて、お菓子メーカーの舞台裏を見ることができます。

 また、「ラーメン味」「キムチ味」「かばやき味」といった伝説の未発売チロルの話など、知られざるチロルチョコの秘密が数々明かされ思わず誰かに披露してしまいたくなるうんちくが満載。

 そこで、ダ・ヴィンチニュースでは、前出の佐熊さん、同書の主人公・佐藤ちよのモデルになった企画室メンバー・土井友璃香さんに取材し、さらなる「チロルチョコの秘密」を探ってきました。

 

ヒット商品の陰には数々の失敗作が。新しい味を模索する毎日

――いきなりで恐縮ですが、歴代もっとも売れたチロルチョコって何なんでか? やはり大ヒットした「きなこもち」なんでしょうか。

佐熊:いや、歴代だと「ミルク」が一番売れていると思います。年間で見ても「ミルク」の生産量が圧倒的に多いですし。単発の季節ものだと「きなこもち」(※冬季限定販売)になるんですけどね。

――それは意外でした。定番強しってことですね。逆に売れなかったものは何ですか?

佐熊:歴代って言われると分からないんですが、比較的最近で、期待していたより全然売れなかったのは「ストロベリーチーズパイ」です。パッケージもゴールド地にストロベリーをあしらっておしゃれな感じにしましたし、ストロベリーの時期である12月に発売したんですよ。もっと売れると思ったんですけどね……

  • 企画室が自信を持って送り出した新商品だったが……

 
――え!? 名前だけ聞くと全然そんな風に思えないんですが。

佐熊:味の方から言うと、パイをチョコレートの中に入れていたんです。いわゆるパイ生地がサクサクしたやつです。このサクサク感を楽しんでもらえるよう苦心して商品設計したんですが、時間が経過すると、パイが湿気ったようになってしまった。

――どれくらいの期間でそうなるんですか?

佐熊:数か月経つと湿気ったような状態になってしまいます。

――開発段階ではそのあたりの課題は出ていなかったんですか?

佐熊:もちろんそこは考えてました。例えばジャムの直下にパイを置くと、すぐ水分を吸うので、チョコをはさんでみるなど、いろいろ研究して工夫しましたが、売り上げにはつながらなかった。リピートしてもらえなかった。

――やっぱり新しいお菓子の開発って想像以上に大変なんですね…。

佐熊:いまのお菓子業界は、他社も含めて開発期間がタイトになってきていて、どんどん新しいものを出さなくてはいけなくなっています。消費者が新商品を求めるサイクルが早くなっているんですね。

なので、売上を上げようと思うと定番商品にばかり頼ってはいられず、新商品をどんどん投入しなければならない。さらに、チロルチョコは「楽しいお菓子で世の中明るく」という社是のように、他社のやらない楽しい商品を開発することもとても重要ですね。

 

チロルチョコ通なら表面と断面を眺めつつ食すべし!

写真は土井さん。隣に映っているのはチロルチョコの包装紙で作られた千羽鶴!ファンの方が寄贈してくれたのだとか。

――一方、そんな熾烈なお菓子業界に飛び込んだ土井さんに質問です。普段はどんなことで苦労されているんですか?

土井:工場や外部の方とのやりとりが一番大変ですね。ここでボタンを掛け違うと、思っていたものと全く違うものが上がってきたりしますので。意思の疎通という部分で苦労することが多いです。

――コミュ力が大事と。ちなみにコミックエッセイでは、ご自身が発案された「チロくま」が商品化されるまでのお話が描かれていますが、この裏ではボツ企画もあったんですか?

土井:アイディアレベルでのボツネタはたくさんありますよ。例えば、「野菜×ケーキ」みたいなのがちょっと人気になった時期があって、それで自信を持って「ごぼうショコラ」とか「にんじんショートケーキ」とかの企画を提案したんですけど、残念ながらボツになってしまいました(笑)

――商品化してもおかしくなさそうに聞こえますが。何が理由だったんですか?

土井:インパクトに欠けるというのが最大の理由でした。例えば、秋に発売する新商品の場合、桃栗系だったりとか、11月~12月だとストロベリーとか、季節によって何を出そうっていう流れが小売店含めある中で、「野菜×ケーキ」みたいなのがイマイチはまらなかった感じです。

――なるほど~。旬のフルーツにインパクトで負けてしまうということですね。

佐熊:面白そうだし、作ったらおいしそうなんですけど、商品を営業する際に、バイヤーさんから「なんでこの時期にこれなの?」と聞かれたらなかなか返しづらいんですよね。マイノリティすぎると受け入れられない。このあたりがなかなか難しい。

土井:あと、個人的にカカオの含有率が高いチョコレートが好きなので、それも何回か企画提案してるんですけど、カカオの量が増えると原価も上がることもあり、まだ実現にいたっていません。

――ビターテイストの大人向けチロルチョコという感じですか?

土井:そうですね。原価の問題だけでなく、チロルはお子さんも食べやすいように甘いチョコが多いので、大人向けがもともと少ないということもあります。

ただ、そういった制約の中でも企画としてうまくいったのが、コミックエッセイにも登場した「竹炭チョコ」です。あれは少し苦みもあって女性にも人気でした。女性はポリフェノールの美容効果も期待できるので苦い味を好む傾向があるんですよね。

――ボツになるのはゲテモノ系かと思ってたんですが、皆まともな企画ですね~

佐熊:実は鉄板に見えるフルーツ系でもボツになることがあるんですよ。

――それは意外! 何でですか?

佐熊:チョコに合うか合わないかなんですよね。例えば「りんご」や「ぶどう」などは好き嫌いが分かれますね。

――なかなか難しいですね~。「ぶどう」普通においしいのに…(試食しながら)。

土井:私も入社以前とはお菓子を見る目がだいぶ変わりましたね。前は新発売されたお菓子はみんなおいしく食べてたんですが、今は「これはチョコレートの風味が少し足りないな」とか味を厳しく見られるようになりましたし、パッケージデザインなどにも注目するようになりました。

――ところでコミックエッセイに登場する「チロくま」は現在売っていませんが、再販はしないんですか?

佐熊:何回か考えてはいるんですが、コミックエッセイでも描かれたように、工場での生産が大変なんですよね。なので、社内的にもすぐGOが出せるという感じではないです。

――いま売出し中の「フルグラ」も中身がたくさん入っていて大変そうですが。

佐熊:「フルグラ」に入っているのはフリーズドライで「チロくま」はカットゼリーなんです。ゼリーはべたつきがあって機械とかにくっつくんですよ。なので生産数が思うように上がらない。「チロくま」の再販は、このあたりの課題が解決されてからでしょうね。

  • コミックエッセイでは工場での苦労も描かれている

 
――やっぱりチロルチョコ奥深いですね。話は変わりますが、チロルチョコのおいしい食べ方というか、お作法みたいなものって何かありますか?

佐熊:二十円サイズの大きい方は、二口くらいでいくのがおすすめです。チロルチョコは中の設計に結構こだわっているので、一回噛んでもらうと中が見えますので。

土井:断面がかわいいのが多いんです。「すいか」も断面がきれいです。あと、表面のモールドの模様とかも見てもらいたいですね。二十円サイズは5種類あって、格子柄とか。定番の「コーヒーヌガー」とか「ミルク」には飛行機とかロケットとか絵柄が使われています。皆さん、包装紙を裏から開けるんで、割とそのまま表面を見ないで食べてしまう方が多いと思うのですが、ひっくり返すと模様が入っているんで見てほしいなーと。

画像は「すいか」の断面。赤、白、緑のコントラストがきれいです


 
――表面見ながら二口で食べるのが通な食べ方ということですね。さて最後に、これからイチ押しの新商品を教えて下さい。

土井:断然「ごま団子」がおすすめです!パッケージはゴマでパンダを描いたものになっているんですが、これに合わせて可食設計も変えたんです。開発当初はチョコレートにゴマパウダーを練り込んだだけだったんですが、より「ごま団子」感を楽しめるよう、粒のゴマを大量に使用することにしたんです。包装紙を開けた瞬間にゴマの香りを楽しんでもらえると思いますよ。

チョコの中にはゴマがぎっしり!もちもち団子もおいしいです


 
――ありがとうございました!

 

『チロルチョコで働いています』

伊東 フミ/KADOKAWA

新商品の「企画室」に配属された新人OLが、最高のチョコレートを生み出すべく大奮闘! 泣いて、笑って、こだわり抜く。あま~いチョコレートの甘くはないお仕事ぶりを描く女の子のお仕事応援コミックエッセイ。著者・伊東フミは、マンガ『ミラクルチロル44キロ』(原作:木村航、全2巻、新書館)を描くなど、自他ともに認めるチロルチョコ好きです!