エンタテインメント小説の新たな書き手を発掘する「角川文庫キャラクター小説大賞」 第1回受賞作決定!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17

角川文庫キャラクター小説大賞

 2015年、新たなキャラクター・エンタテインメント小説を対象とした文学賞「角川文庫キャラクター小説大賞」が創設された。同賞には全国から225作品の応募作品が集まり、物語の面白さと魅力的なキャラクターの両方を兼ねそなえた、記念すべき第1回受賞作が2015年8月27日(木)に発表となった。

●大賞 賞金150万円
美大探偵(仮)―《カジヤ部》部長の小推理―
著:栁瀨みちる(やなせ・みちる)/ 東京都品川区出身 美大卒 35歳女性

長原あざみは樫乃木美術大学の1年生。立体造形科に所属の「ぼっち」だ。休み明け、学校に来ると同級生の作品が変形しており、あざみは疑いをかけられてしまう。上手く弁明できずにいたあざみに声を掛けてくれたのは、人好きする雰囲気を持つ、同じ学科の研究生・梶谷七唯。事情を訊いた彼は、本当のことを調べようと言いだし、学校中を奔走して真相を見抜く。それからあざみは、梶井が部長を務める謎のサークル《カジヤ部》に参加することになり、様々な日常の謎に巻き込まれていく。そんな中、樫美のある研究生が恐喝をしているという週刊誌の記事が出て……。

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●奨励賞 賞金20万円
ちゃぶ台探偵の事件簿
著:天乃辺哲(あまのべ・てつ)/ 兵庫県神戸市出身 香川県丸亀市在住 男性

赤松小夜子は探偵にあこがれて神戸の調査所に就職したが、仕事はネコ探しや浮気調査ばかり。そんな毎日に嫌気がさしていた小夜子は、古道具屋で祖母の家にあったような小さな丸いちゃぶ台を見つけ、思わず買ってしまう。だがそのちゃぶ台には余計なもの──50年前に亡くなった名探偵・西園寺丈太郎のゆうれいがついていた。わがままで常識外れな丈太郎に頭を痛めながら今日もネコ探しに精を出していると「ざしきわらしが家にいると言うおばあちゃんの話」を耳にする。本気にするでもなく丈太郎にその話をすると、何かウラがあると言い出して……!?

コハルノートへおかえり
著:石井颯良(いしい・そら)/ 埼玉県板戸市出身 東京都板橋区在住 32歳女性

高校生のゆかりは友達とケンカし、雨の中をずぶ濡れで帰っていた。そんな彼女に傘を差しだしてくれたのは、商店街の端っこにアロマとハーブの店を構える朝霧という男だった。彼のおかげで仲直りのきっかけを得たゆかりは、この店、コハルノートで手伝いをすることになり、店にはアロマオイルやハーブにまつわる謎や事件が舞いこんでくる。そんな日々を過ごすうち、ゆかりは朝霧に憧れともいえる暖かい気持ちを抱き始めるが、朝霧が失踪してしまい……。

<選考委員>(敬称略、順不同)
小坂崇氣(株式会社ニトロプラス代表取締役社長)/石井千湖(書評家)/タニグチリウイチ(書評家)/高橋美里(オリオン書房書店員)/角川文庫キャラクター文芸編集部

「“キャラクター”文芸と聞くと一瞬ライトノベルやコミック的な小説をイメージされてしまうかもしれませんが、作品を通して描かれているのは、登場人物=キャラクターたちが、どう悩み、喜び、成長し、あるいは自分の居場所を見つけ、あるいは他人と新たな関係を築いていくのか──つまりは一般文芸の、とても普遍的なテーマです。そしてこのキャラクターたちに、共感したり、感情移入したり、憧れたり、時には反発したりしながら、より深く物語世界を楽しんでほしい──それこそが、キャラクター文芸の何よりの面白さだと考えています。この『角川文庫キャラクター小説大賞』から、またさらに面白いキャラクター文芸のシリーズを生み出していきたいと思います。どうぞご期待ください!」文芸・ノンフィクション局 第三編集部 キャラクター文芸課 統括編集長 野崎智子

 これまで「角川文庫」及び「角川ホラー文庫」では、『心霊探偵八雲』や『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』、『ホーンテッド・キャンパス』など、数々の人気シリーズを生み出してきた。いずれも物語としての面白さはもちろん、登場するキャラクターたちの魅力に優れ、多くの読者から支持を受けている。

 エンタテインメント小説の新たな書き手を発見し、より面白いキャラクター文芸作品を世に送り出すため創設された「角川文庫キャラクター小説大賞」。今後も『美大探偵(仮)―《カジヤ部》部長の小推理―』のような次世代エンタテインメント小説の発掘に期待したい。

なお、第1回贈賞式は2015年秋に都内で行う予定。受賞作品は、角川文庫として2016年春頃に刊行予定となっている。

「角川文庫キャラクター小説大賞」概要
対象:魅力的なキャラクターが活躍する、エンタテインメント小説。年齢・プロアマ不問。ジャンル不問。ただし未発表の作品に限る。
規定:同一の世界観と主人公による短編、2話以上(2話以上からなる連作短編)。合計枚数は、400字詰め原稿用紙180枚以上400枚以内。上記枚数であれば、各短編の枚数・話数は自由。
主催:株式会社KADOKAWA
⇒「角川文庫キャラクター小説大賞」ホームページ

角川文庫におけるキャラクター文芸
主に、文庫のシリーズとして刊行。一般文芸の中の一ジャンルで、キャラクターや世界観・物語は、あくまで現実と地続きのリアルさと強度を持ち、登場人物の成長や葛藤、関係性など、普遍的なテーマが描かれる。魅力的なキャラクターたちのやり取りや成長をメインに物語が描かれ、読みやすい筆致と描写で人気を博す。ミステリ、青春、ホラー、お仕事小説など、世界観は多岐にわたる。またライトノベルとは違い、本文中の挿し絵はない。

角川文庫「キャラクター文芸」の取り組み
2012年にキャラクター文芸の編集部を設置し、既存作品を含め「角川文庫 キャラクター文芸」としての取り扱いを始めた。「心霊探偵八雲」「GOSICK」などの大人気シリーズ作品をはじめ、今後は、太田紫織著「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」シリーズが今年10月よりテレビアニメ化、櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」シリーズが2016年に実写映画化と、小説以外にも展開を広げてゆく予定。
また、電子文芸誌「小説屋 Sari-Sari」は、7月号よりキャラクター文芸専門誌にリニューアル! 価格も100円+税(希望小売価格)とより手ごろな価格でキャラクター文芸を楽しめるようになった。