正統派から小悪魔系へ『モテキ』が転機に! 実写化ヒロインを極める長澤まさみが重宝される理由

マンガ

更新日:2015/9/6

 漫画原作の作品が映画化されることが多い昨今。しかしながら、漫画のキャラクターが実写化されることに反発する人は少なくない。イメージと違う、ビジュアルが合ってない、あの俳優のほうが良かった等々、不満な点は山ほど出てくる。思い入れの強い作品ならなおさら。そんな中、毎回いい線をいっている役者もたくさんいるのを忘れないでほしい。今回はその中のひとり、女優・長澤まさみを取り上げ、少女マンガ研究家の小田真琴さんに分析してもらった。

 長澤まさみが出演した漫画原作の作品は結構多い。その昔、『タッチ』の浅倉南に抜擢されたと知ったときは「あ~、南ちゃんね~、なるほどね~」なんて思った。当時、“ザ・ヒロイン”を地で行く女優は長澤まさみくらいしかいなかったんじゃないだろうか。

タッチ
岳-ガク

 あれから10年。てっきり清純派で突き進んでいくのかと思っていたら、大胆な路線変更があった。ターニングポイントとなったのは皆さんご存知、『モテキ』。“可愛すぎてヤバイ”レベルの小悪魔を演じたことで話題になった。小田さんは言う。

advertisement

「『タッチ』や『岳-ガク』など、正統派の元気系ヒロインを演じることが多かった長澤まさみさんですが、『モテキ』が大きな転機を彼女に与えたと思います。“性”を感じさせる女性は、人に過去と未来を想像させます。元気なばかりの女の子にはない、大人の女性ならではの奥行きを、長澤まさみさんは本作で獲得したのです」(小田さん)

モテキ

 その通り、『モテキ』以後の長澤まさみは大きく進化した。その感覚は、クラスの純情可憐なマドンナに、「彼氏が30代って本当!?」とズバリ聞く感じに似ている。踏み込めなかった部分にやっと踏み込めた、みたいな。

 勢いを保ったまま、2013年には『潔く柔く』でヒロインの瀬戸カンナを演じた。2015年には『海街diary』の香田佳乃。そして、来年公開の『アイアムアヒーロー』では藪こと小田つぐみを演じることが決まっている。実写映画化ヅイているのは間違いない。漫画のヒロインに長澤まさみがキャスティングされるのには、きちんとワケがあると小田さんは分析する。

「『潔く柔く』、『海街diary』、『アイアムアヒーロー』で長澤さんが演じる3人に共通して言えることは、“過去にワケあり”であるという点です。大切な人を失い、そのトラウマから長い年月立ち直れずにいるカンナ。男運が悪く、ホストに100万貢いだことがある佳乃。そして、奇病が蔓延する世界で、決死のサバイバルをするつぐみ…。漫画の映画化はどうしたって原作よりも短くなります。漫画ならばキャラクターの来歴や設定も作り込むことができるし、それを十全に表現することもできるのですが、映画だとそれが難しいこともあります。そんなとき、“過去”を感じさせることができる俳優さんは、とても貴重な存在です。この人にはどんな過去があったのだろう、と、観る者が想像せざるを得ない存在。なんだか気になる存在。すべてを知りたいと思わせる存在。そこにいるだけで物語が立ち上がる存在。長澤まさみさんという女優は、そういう存在なのではないでしょうか」(小田さん)

 清楚系から小悪魔系まで、なんでもござれになった長澤まさみは、今後もきっと向かうところ敵なしの存在だろう。

 とはいえ、来年公開の『アイアムアヒーロー』は、これまでの作品とはひと味違う。異形のゾンビたちに立ち向かう長澤まさみに、期待。

文=中村未来(清談社)