新たに発見された水木しげる出征直前の手記を完全収録!『戦争と読書』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17

    戦争と読書

 水木しげるが出征前に綴った「覚悟の表明」ともいえる手記が発見された。そこから浮かびあがるのは、これまでに見たことがない、人生の一大事に直面し苦悩する水木の姿。太平洋戦争下に生きるひとりの若者としての苦悩、絶望、そして救いはどのようなものだったのか。水木しげるの新たな一面が見える『戦争と読書』が、2015年9月10日(木)に発売される。

 水木しげるは言わずと知れた『ゲゲゲの鬼太郎』の作者だ。アニメ版や、あるいはマンガ『墓場鬼太郎』でご存知の人も多いことだろう。1922年、鳥取県境港市生まれ。マンガを書き始めたのは従軍経験の後のこと。終戦後より紙芝居、貸本漫画などを執筆し、1964年に『ガロ』にて商業誌デビュー。2007年には『のんのんばあとオレ』によりフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞し、2010年には文化功労者に選出された。

 ただ、マンガ界で活躍するに至るまでには想像を絶する体験があった。太平洋戦争では兵隊として激戦地ラバウルに送られ敵襲により片腕を失う。九死に一生を得て帰還するも、マンガでは食べていけない質屋通いの極貧生活が待っていた。そういった戦争体験や漫画家としての生活は、『水木しげるのラバウル戦記』や『総員玉砕せよ!』、ドラマ「ゲゲゲの女房」他、いくつかの著書で描かれてきた。

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 しかし今回発売される『戦争と読書』は、今まで存在を知られていなかった“出征前に綴った手記”が初めて収録されている他、手記掲載の『新潮』8月号から水木しげるの名言録や、水木を師と仰ぐ荒俣宏による解説などが盛り込まれている。

第1章:水木しげる出征前手記
新発見された水木しげるの出征前手記を完全収録。手記を掲載した『新潮』8月号は雑誌としては異例の増刷がかかるほど話題となった。同書では手記をできるだけ原本に忠実に完全収録されている。

第2章:青春と戦争
荒俣宏による縦横無尽の解読解題により、知的な芸術家志望の二十歳の若者だった水木しげるの思想と実像が浮かび上がる。戦時下の若者の絶望、そして読書という救いが読み解かれる。

第3章:水木しげるの戦中書簡
全て書籍初収録の貴重な書簡集。特に復員後母へと宛てた手紙からは、出征前と復員後でぶれない水木しげるの思想哲学が読みとれる。

第4章:年表・水木しげると社会情勢
水木しげるの生涯と社会の動きを照らし合わせると、氏の生きた時代背景が臨場感を持って立ち上がってくる。

■『戦争と読書
著:水木しげる・荒俣宏
発売日:2015年9月10日(木)
価格:800円(+税)
出版社:KADOKAWA