『セトウツミ』が池松壮亮×菅田将暉でついに実写化! 男子高校生のくだらなさすぎる会話に若き日の自分を見た

マンガ

更新日:2015/9/9

 先日、池松壮亮×菅田将暉のW主演で実写映画化することが発表された『セトウツミ』(此元和津也/秋田書店)。個人的に連載当初から注目していたマンガが映画になるということで、もー興奮が抑えきれない! え? どんなマンガなのかって? というわけで、原作をまだ読んだことがない人のために、本作のおもしろさを解説してみよう。

 本作は、ここ最近のマンガでは珍しい、全編がほぼ「会話劇」で構成されている作品だ。主人公となるのは、元サッカー部で少々頭の悪い瀬戸と、理系チックで会話の端々に難解な単語を混ぜたがる内海の2人の男子高校生。ひょんなきっかけで仲良くなったこの2人の日課は、放課後に川べりでただただ喋り倒すこと。そして、その会話の内容がシュールでとってもおもしろいのだ。

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 2人の会話は、本当にくだらない(褒め言葉です!)。「神妙な面持ち」を見せ合ったり、「クモの怖さ」を延々と語り合ったり、バレンタインのチョコの数で張り合ったり…。「こんな男子高校生いるよねー」と思うほどリアルで、そしてバカバカしいのだ。でも、すんなりと読み手の心に入ってくるのは、軽妙な関西弁で彩られているからだろう。たとえば、こんな風に。

内海「俺もうすぐ塾行かな」
瀬戸「大変やなぁ。まだ高二やのに」
内海「お前はええなぁ。大学行けへんねやろ?」
瀬戸「行けへんゆうか…」
内海「行かれへんのか」
瀬戸「お前のそういうとこやで」
内海「何が」

瀬戸「でも梅雨前線ってなんかかっこええよな」
内海「ズズ」
瀬戸「響き的になんとなくやで?ヒーローが先頭突っ走ってます的な?」
内海「…」
瀬戸「海水浴のオカンぐらいノリ悪いな」
内海「ゴホゴホ」
瀬戸「無視かおい。梅雨で蒸し蒸しするから無視ってか」
内海「ごめんそういう関西のノリやめて」

 このようなテンションのダラダラとした会話が、ひたすらに繰り広げられる。これを読んで、「つまらない」と思う人も少なくないだろう。確かに、読み終わった後に、「くだらない…」という感想を抱いてしまうのは事実だ。けれど、それでも読んでしまうのは、瀬戸と内海に、若き日の自分を見てしまうから。意味のないことに一生懸命になっていた幼い自分、くだらないことに夢中になっていた自分。大人になるにつれて、いつの間にか忘れてしまった「あの頃」の自分を見ているようで、2人の姿から目が離せなくなってしまうのだ。

 また、本作の魅力はそこだけではない。こんなにくだらない話ばかりしている瀬戸と内海も、それぞれに複雑な家庭の事情を抱えているのだ。瀬戸は離婚寸前の両親と、認知症が進行して徘徊するようになってしまった祖父の存在を、そして内海は、勉強を頑張らなければ愛してもらえなかった家庭環境を。ともすれば、それぞれが主題にもなりうる問題だが、本作ではそれをさらっと描き流す。あくまでもメインとなるのは、2人の会話なのだ。そして、それが潔くて素晴らしい!

 人は誰だって、なにかしらの事情を抱えて生きているもの。けれど、あからさまにそれを主張しようとはしない。そういう意味では、本作は非常にリアルな男子高校生の姿を描いていると言えるだろう。複雑な事情がありながらも、日々、くだらないお喋りに時間を費やす。思い返してみれば、学生時代の自分も、そうやって楽しいことばかりに目を向けていたように思う…。

 さて、そんな一風変わった会話劇がどのように実写化されるのか。瀬戸と内海が醸し出す、シュールでゆるーい空気感を、人気若手俳優の2人がどのように再現するのか。いまから楽しみで仕方ない!

文=前田レゴ