観れば観るほどバカになる!?――『ビキニ・ウォリアーズ』セクシー5分アニメという新境地【キーマンインタビュー】

アニメ

公開日:2015/9/17

 2015年夏アニメを語るうえで欠かせない要素のひとつが“ファンタジー”です。『オーバーロード』、『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』、『モンスター娘のいる日常』、『六花の勇者』などの作品は、ファンタジー世界及びそれに関連する概念を扱うことについて、とても自覚的なドラマを見せてくれています。

 その一方で今期は下ネタやエロに関する切れ味鋭い快作も目立ちます。『監獄学園』、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』、『モンスター娘のいる日常』……これらファンタジーとエロの要素を併せ持ち、さらに大きな挑戦を成し遂げた、“2015年夏アニメの代表作”とも言うべき作品が『ビキニ・ウォリアーズ』です。


TVアニメ「ビキニ・ウォリアーズ」公式サイト

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『ビキニ・ウォリアーズ』はホビージャパンとメガハウスの2社によるフィギュアプロジェクト。その一環として現在放送中の5分アニメは、ファンタジー世界でビキニアーマーを着た4人の勇者が冒険する――と、あらすじだけ聞くと実にオーソドックス。しかし、どこかで見た覚えのあるシチュエーション、これでもかと繰り返される淫らな描写、そして全編に漂うのんきな雰囲気により、観れば誰もが顔をほころばせるでしょう。

 この、観れば観るほど幸せになる怪作について、制作に大きく関わるホビージャパンの星野孝太さん、笠松竜二さんに話を伺いました。

フィギュアの原価の高騰の煽りを受けて生まれた『ビキニ・ウォリアーズ』

――それぞれ『ビキニ・ウォリアーズ』にどう関わっているか教えてください。

星野:アニメでは企画としてクレジットされていますが、プロジェクトを一番上から見るという立場にいます。

笠松:私はアニメに関するプロデュースをしています。

星野:もうひとり、原案でクレジットされている河原正信という弊社の社員も、中心人物のひとりです。

――『ビキニ・ウォリアーズ』はどんな経緯で立ち上がったプロジェクトでしょうか?

星野:元々は「古きよきビキニアーマー」をコンセプトに、著名なイラストレーターにキャラクターデザインをして頂き、それをフィギュア化しようということで始まったプロジェクトです。その一環でアニメを作ろうとは思っていたものの、30分アニメでは企画から放送まで1年半か2年くらいかかってしまう。そうなるとフィギュアの発売タイミングに間に合わないため、それなら今回は5分アニメにチャレンジしようということになりました。

――プロジェクトのコンセプトに「古きよきビキニアーマー」を選んだ理由は?

星野:弊社に『クイーンズブレイド』(http://queensblade.net/)での経験があったのと、実はフィギュアの原価がここ2、3年前ですごく高騰していまして。同じスケールでも倍くらいに跳ね上がっているものもあるくらいです。しかも装飾が過剰なものだとさらに高くなってしまうので、水着やビキニアーマーといった布面積が少ないものにして、お客さんが買いやすい価格設定を狙いました。

▲精巧に作られている『ビキニ・ウォリアーズ』のフィギュア(画像はファイター)。今後6人分のフィギュアが出揃う予定だ

――とは言え各イラストレーターさんがこだわられたのか、特にパラディンやダークエルフの装備は豪華ですが……。

星野:仰るとおりです! みなさんビキニアーマーへの思いが強く、装備が豪華になり武器が大きくなり……結果として特に安くはなくなってしまいました、ごめんなさい! 企画を思いついた河原は、当初「我ながらいいアイデアを思いついた」なんて言っていたんですけどね。

笠松:あとは単純に河原がビキニアーマーを好きなのもあるんでしょうけど(笑)。彼は『アウトランダーズ』や『ゴールデンアックス』といったビキニアーマーヒロインが大好きで、すごく影響を受けているんです。

星野:ビキニアーマーは元々アメリカなどで、すごく人気のあるジャンルなんですよ。そのおかげで実は『ビキニ・ウォリアーズ』は海外でも反響が大きいんです。向こうはビキニアーマーと言っても真面目に作るから、こういった馬鹿馬鹿しいものは珍しいのかもしれません。

――デザイン面でどうしてもツッコミたいことが1点あるのですが、ダークエルフの格好は“ビキニアーマー”なんでしょうか?

星野:ビキニアーマーの定義は難しいですが、我々のなかでは広義のビキニアーマーに入れていいだろうと思っています。

――キャラクターの職業やデザインの方向性は御社側でイラストレーターさんに指定したのでしょうか?

星野:はい。基本的には「これとこれのどちらがいいですか?」と選択肢を提示するかたちでお願いしました。そのおかげで、回復役が片手間でやるパラディンのみと、4人パーティのバランスが悪くなりました(笑)

▲ファイター、パラディン、メイジ、ダークエルフ……パーティバランスはさておき、いずれもセクシー!

セクシー+RPGあるある×大人の暴走=『ビキニ・ウォリアーズ』!?

――アニメ版がこういった内容になった理由は?

星野:5分アニメは4コママンガ原作のコメディ作品が多いですよね。どうしても短時間でストーリーを見せるのは難しい。それならば我々はセクシーな要素だけを見せようと考えました。このコンセプトができたら、あとはトントン拍子で、アニメ制作側にもノッて頂いて「俺達で新しい5分アニメを作ってやろう」という雰囲気になりました。

――1話はナレーションが入って、いきなりファイターの大股開き。ほかにも6話のやたら穴が空いている看板など、衝撃的な場面やアイデアが続出します。ああいったアイデアはそうした雰囲気のなかで生まれたんですね。

星野:今回の企画は前例も正解もないです。また30分アニメでは労力がかかり過ぎますけど、「5分アニメだから色々チャレンジしよう」と、とにかくみんな思いついたことを言ってみるというスタンスでした。おかげで脚本会議などのモチベーションも高く、色んなアイデアが出ました。

▲穴が空いた看板や生い茂る樹木によって「見えそうで見えない」が延々と続く6話。芸人、とにかく明るい安村さんの大ブレイクと時期も重なり、記憶に残るエピソードとなった

――『ビキニ・ウォリアーズ』はRPGあるあるという要素も重要です。

星野:セクシーなポーズを見せるだけではアニメになりませんし、シチュエーションを説明する時間もない。それを成り立たせるため、視聴者に状況をすぐに理解してもらうためのRPGあるあるです。弊社は30年くらい前からTRPGを扱っているので、ファンタジーRPGは親和性が高いですしね。

――“あるある”を作ろうとすると世代間のギャップなどもあると思いますが……。

笠松:主要スタッフは40歳を超えているくらい年齢が近くで、しかも濃い人間ばかりだからファンタジーに関する共通理解は最初からあって苦労はなかったですね。

――控えたアイデアはありますか?

星野:アイデアではありませんが、『ビキニ・ウォリアーズ』をやるうえで「不自然な光を入れるか」というのは議論しました。結論としては「光は入れず、そのぶんアングルや構図にこだわろう」です。それでも2話の最後、4人が牢屋で縛られている場面だけは駄目でした……あの場面、制作者がすごく気合いを入れてくださって、ビックリするくらいエロく仕上がったんです。そのため本当は全身が描いてあったものの、テレビで映すには難しいと判断して泣く泣くトリミングしました。

笠松:本当にマズイものは何も見えていないにも関わらず、エロ過ぎてお見せできませんでした……もちろん12月発売のディスクでは全身が見られますよ。

――確かにアングルなどに異常なこだわりを感じますね。

笠松:『ビキニ・ウォリアーズ』は葛谷監督がほとんどの話で絵コンテ描いていて。すごく読みやすい、きれいな絵コンテです。

星野:2話なんて、会話だけ聞くと王様と4人の勇者が話している普通の冒険の始まりです。それがカメラはずっと4人の肢体を舐め回しているだけで、ようやく王様の顔が見えると思ったら股の間からですからね。「こんな馬鹿馬鹿しいアングルでいくか!」と毎回笑わせてくれます。

――葛谷監督のこれまでのお仕事(監督としては『ビックリマン2000』、『最遊記外伝』)を拝見すると、あまり『ビキニ・ウォリアーズ』の作風をイメージできないのですが……。

星野:そうかもしれません。アニメ会社のfeel.さんと代理店のYTEさんの三者で話をしている最初の段階で「馬鹿なアイデアをとことんやりたい」と伝えたら、feelさんに「彼なら絶対にできます」とご紹介頂いたんです。確かに過去作を拝見すると不思議ではあったのですが、お会いして話をしてみたら「なるほど」と(笑)

笠松:監督は口数は少ないのですが、心のなかに秘めているタイプ。脚本会議とかでもほかの人の発言を大人しく聞いていますが、「好きに話すががいい、俺も好きにやるぜ」とという雰囲気でした(笑)

星野:言葉じゃなく絵で語るタイプですね。

――またエンディングも、あの荘厳さが不思議な味を出しています。

笠松:河原のイメージで、壮大なファンタジーらしさを出したかった、というのがまずありました。「その雰囲気ならやっぱり弦だよね」といった感じで奏多雅さんが浮かび上がってきて、お願いしたところハマりましたね。僕が「曲のアタマはガツン!っていうのがほしいよね」とか適当なことを言っていたら、それに応えて頂けた感じです(笑)

気になる『ビキニ・ウォリアーズ2』は……?

――放送開始後の評判はいかがですか?

星野:私達も緊張しながら放送開始を待っていました。特に目に付いたのは「観れば観るほどバカになる」というコメントでした。

笠松:「ポカンとする」というのもありましたね。

星野:RPGあるあるのツッコミを楽しんでくださる人もいて。そんな感じで、肩肘張らずに観て頂けるとうれしいです。

――本当にリラックスして観られますよね。その秘訣はどこにあると思いますか?

星野:余計な説明を一切しないことでしょうか。もしRPGをやったことがない人に説明しようとすると、テンポも悪くなるし説明臭くなります。「そういう人たちは絵面だけでも楽しんでください」と割り切っています。あとは続きものでもない5分アニメなので、1週逃しても気にせず観ることができますし、「3週分溜めちゃった」となっても15分ですから。この企画は30分アニメではなく5分アニメでよかったと思います。

笠松:もし30分アニメだったら、色んな意味でツラいですよ(笑)

――確かに毎回お話がリセットされますね。8話でラスボスの魔王デスゲドーが出てきて負けたのに、次の話では何も触れられずに冒険が再開されました。

笠松:念のため補足すると、あれは全滅して復活を遂げて次の話につながったんです。まぁそんなことは気にせず楽しんでください(笑)

星野:RPGでパーティ全滅はよくありますから。

――それぞれお好きな話を教えてください。

星野:僕は6話です。「これやりたい!」と思って提案したものの、アニメ制作側は面倒なのでは……と思っていたらノリにノッてくれて。『ビキニ・ウォリアーズ』らしい話になりました。

――特に脈略もなく滝に打たれて、お尻が4つ並んでいるところもすごく素敵です。

星野:RPGあるあるで言えば、メイジが敵に操られる9話もいいですね。

笠松:僕はあるあるなら3話、あと最終回の12話も本当にすごいです。シナリオ読みながらゲラゲラ笑ってしまいましたから。

――ディスクは12月とやや先の発売です。この理由は?

星野:最初のフィギュアであるダークエルフの発売が12月の予定なので、それに合わせてというのがひとつ。あとパッケージにはテレビ未放送の13話を付けるので、それを制作するためでもあります。

▲12月9日に『ビキニ・ウォリアーズ』のBlu-rayおよびDVDが発売される(画像はジャケット)。全13話が収録されるうえ、オリジナルブロマイドやブックレット、ポストカード、CM集、ノンクレジットエンディングと特典満載で、なんとBlu-rayが6,980円、DVDが5,980円という良心的価格だ!

――13話はどんな内容になりますか?

星野:光を入れずアングルにこだわっている『ビキニ・ウォリアーズ』ですが、13話はテレビで放送しなくていいので「いっそ全部見せてしまおう」と考えています。アニメスタッフには「ここまで描かないできたけど、13話は好きだなけ描いて!」とお願いしました。極限までエロに振り切った5分アニメで作るので、お楽しみに!

――最後の質問です。『ビキニ・ウォリアーズ2』はあり得ますか?

星野:あり得ます! フィギュア原作ですが、現在の6人以外に新キャラクターを増やしていこうと考えています。であれば彼女たちが活躍するアニメも……そういう流れになればいいですね。

笠松:需要さえあるなら、増えたキャラが出るアニメもやらなければいけない。そういう使命感はあります。

――とても楽しみにしています。ありがとうございました!

取材・文=はるのおと

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