ROCK AFRICA!!! アフリカ大陸はデスメタルで目覚めるのか?

音楽

更新日:2015/10/1

「デスメタル」とは何か?

 日本はおろか、世界中でもあまり知られていない、アフリカで活動するハードロック~ヘヴィメタル~デスメタル系のバンドを初めて紹介するという、かなり振り切った内容の『世界過激音楽Vol.1 デスメタルアフリカ 暗黒大陸の暗黒音楽』(ハマザキカク/パブリブ)という本が出版された。まずはこの強烈な表紙を見て欲しい。黒い肌に白塗りという、悪い運命を感じさせるような呪術的な恐しささえ感じさせるビジュアルに、思わず「死」のイメージを抱いてしまった人…その感覚は正しい。なんといっても『デスメタルアフリカ』である。そして「なんだこりゃ?」と思った人、その感覚も正しい(後述する)。

 その前に、本書のタイトルにある「デスメタル」とは何か? 音楽をカテゴライズするという行為は時としてその可能性を狭めてしまう可能性があり、「それは違う」という反論をも招くものだが、積極的に音楽を聞かないという方にも本書の面白さをわかってもらうため、あえて説明を試みてみる。

「デスメタル」とは文字通り「死のヘヴィメタル」である。「ヘヴィメタル」は「ハードロック」から派生した音楽であり、ハードロックよりも音が重く、疾走感などを感じさせる音楽として生まれた(時にはその真逆に遅く激重な音も繰り出し、より重さを強調するという演奏も行われる)。その「ヘヴィメタル」から派生したのが「スラッシュメタル」であり、これは「パンク」やパンクをより過激にした「ハードコア」の影響を受け、スピード感を追求したリフを中心にゴリゴリとした演奏を繰り広げる。これらに歌詞や曲調、サウンドメイキング、ドスの利いた声やビジュアルなどで「死」を感じさせるテーマを盛り込んで進化したものが「デスメタル」だ(もちろん境界線がハッキリあるわけではなく、全ては地続きになっている)。

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“眠れるアフリカ大陸”の目覚めか?

 これらハードロック、ヘヴィメタル系の音楽の進化と分化は、1970~80年頃に北アメリカ大陸やイギリスを中心としたヨーロッパ諸国で始まり、80年代中盤~後半にかけて世界の音楽チャートを席巻した「ヘアメタル」と呼ばれる一大ロックブームを中心にさらなる発展を見せた。しかし90年代に起こった「グランジブーム」で一気に失速、既存のバンドはサウンドを変化させたり、アンダーグラウンド化が進んだ。しかしグランジの終焉とともにシーンは息を吹き返し、2000年代に入ってからロックの主戦場は北アメリカやイギリスからヨーロッパ大陸や南アメリカ大陸へと遷っていった。そこでは新たなサウンドやバンドの出現があり、ドイツのヴァッケンやブラジルのリオデジャネイロなどでは数万~数十万人規模のフェスが開催されるなど、現在もハードロックやヘヴィメタルは絶大な人気を誇っている。

 そこへ『世界過激音楽Vol.1 デスメタルアフリカ 暗黒大陸の暗黒音楽』の登場なのである。ついに「眠れるアフリカ大陸」がロックに目覚めたか…と思ったが、著者のハマザキ氏によると「『メタルがアフリカで流行っている』という訳ではない。未だに欧米や他の地域に比べても、アフリカ出身のメタルバンドは少なく、一つもバンドが存在しない国の方が多い。またあまりにお粗末過ぎて、メタルとしてカウントしていいのか、微妙なバンドも多い」ということらしい。「なんだこりゃ?」の感覚が正しいのは、こうした理由からなのだ。

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