青年誌史上初!! 男女両視点から描かれるラブストーリー『古都こと』 2冊同時読みで“すれ違い”が浮き彫りに…!

マンガ

更新日:2015/10/13

 ひとりではできないもの、それが“恋”だ。自分と相手との思いが交錯し、ときにすれ違い、予想もしなかった展開へと転がっていく。たとえ想いが成就したとしても、相手がなにを考えているかなど知る由もないのだ。

 そんな“恋”というものを、双方の視点から描いた作品が登場した。それが『古都こと-チヒロのこと-』(今井大輔/双葉社)、『古都こと-ユキチのこと-』(今井大輔/秋田書店)だ。本作は、京都を舞台に、ひとつの恋物語をチヒロ視点とユキチ視点から描いた、新感覚のラブストーリー。驚くべきは、チヒロ視点は双葉社の「漫画アクション」にて、ユキチ視点は秋田書店の「ヤングチャンピオン」にて連載されていること。そう、出版社という垣根を超えた、大型企画なのだ!

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「チヒロのこと」の主人公となる門脇チヒロは、地味で引っ込み思案で、いつも下ばかり向いて歩いている女の子。母親からもらった大切な手鏡を、祖母が骨董市で売ってしまったときも、「女子力が低い自分には、手鏡なんてどうせ似合わないし」と諦めてしまうような、自己評価の低い人間だ。

 そんな性格だから、チヒロはまだ恋を知らない。というか、自分が誰かと恋に落ちるなんて、想像すらしたことがない。ところが、そんなチヒロに変わるきっかけをくれたのが、大学の入学式で再会した先輩のカホさん。写真部のモデルを探していたカホさんから、「基本的なメイクをすれば絶対カワイイのに。宝を持ち腐らし過ぎやで」と強引に誘われ、変わってみようと決意する。

 そして、カホさんの予想通り、チヒロは化ける。サークルの勧誘で盛り上がる大学構内でも一際目立つくらいに。そして、そこで出会うのが、堀川ユキチ。本作における、もうひとりの主人公だ。

 チヒロにぶつかったユキチが落としたのは、チヒロの祖母が骨董市で売ってしまった手鏡だった。大切にしていたあの手鏡は、ユキチが購入していたのだ。それを拾ったチヒロに、ユキチはこう言い放つ。「あなたにあげます」。そのとき、祖母の言葉が脳裏を過る。「鏡を買っていったのはチーちゃんくらいの男の子で、運命の人にあげるんや言うてたわ――」。その瞬間、チヒロはユキチに恋をしてしまう。「もしかして、彼の運命の人って、自分なの?」

 変わろうと決意したチヒロは、ユキチとのデートを約束し、どんどん想いを募らせていく。けれど、そこに現れたのが、ヒナタさんという美しい先輩。どうやらユキチの“運命の人”というのは、彼女のことらしい。…「だとすれば、わたしはひとりで盛り上がっていただけ…?」

 本作は、「ユキチのこと」とあわせて読むことで、同じ瞬間を共有したふたりの“すれ違い”が浮き彫りになる。恋の切なさ、痛み、喜び…。さまざまな感情を丁寧に描いた物語が、いまここに動き出した。

文=前田レゴ