逆さまに押してもOK? 印鑑と印章は別モノ? 意外と知らない“ハンコ”の基礎知識

生活

公開日:2015/10/8

『現場で役立つ!ハンコ・契約書・印紙のトリセツ』 (鈴木瑞穂/日本経済新聞出版社)
『現場で役立つ!ハンコ・契約書・印紙のトリセツ』 (鈴木瑞穂/日本経済新聞出版社)

 

 身近なモノほど、意味を知ると「へ〜」と思うことがある。身の周りにはたくさんのモノが溢れているが、使う機会の多いモノのひとつにハンコがある。会社内での確認や宅配便の受け取りなど、公私問わずに様々な場面で使われるが、正しい名称や押し方の決まりなどを意識せず使っている人たちも少なくないのではないだろうか。

 そこで、企業の法務やコンプライアンスの研修講師として活躍する著者の書籍『現場で役立つ!ハンコ・契約書・印紙のトリセツ』 (鈴木瑞穂/日本経済新聞出版社)から、ハンコの基礎知識を紹介していこう。

役所に登録されたモノが“印鑑”。それ以外は“印章”と呼ばれる

 一般的に「印鑑」とも称されるハンコだが、実は、正式名称ではない。通常、宅配便の受け取りなどで汎用されるものは「印章」と呼ばれ、紙などへ押し付けられた跡を「印影」という。では、印鑑という呼び方が間違いかといえば、そうではない。

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 同書によれば、印鑑とは「本人証明の手段として使うために役所等に届け出て登録された印影」のこと。ただし、「意図が通じれば、あえて呼び方を改める必要もない」と著者は伝えるが、さらに、ハンコは実印と認印に大きく分類される。

 実印とは「役所などに登録された印影が彫られているハンコ」を指し、法人か個人かを問わず、高額商品の契約などに利用される。また、著者は「本人確認のための最強のツールになる」というが、その理由は、「役所が『これが印鑑(すなわち、登録されている印影)です』ということを証明する」印鑑証明書を伴って利用されるためだ。

 実印以外の用途で使われるものは総称して「認印」と呼ばれるが、さらに、企業内では原則的に2重の円内に社名や「代表者の印」「代表取締役印」といった表記がされている実印の「代表社印」や、銀行に印影が登録された「銀行印」、社名の記載された「角印または社印または社判」も日常的に使われている。

逆さまに押してもハンコの目的は損なわれない

 そもそもなぜハンコを使うのか。同書ではその理由を「この文章は私が作成(発行)しました」という作成者の証明、そして、「この文章の内容に誤りはありません」という正確性の証明を担う「しるし」として慣習的に使われ始めたと解説している。

 しかし、その押し方などは環境により様々な意見もみられるが、同書では「使い方や押し方にルールはない」と説明されている。例えば、「ハンコは自分の名前にかけて押す」のが常識という話もあるが、よほど離れた場所に押すなど極端に非常識とされる押し方でなければ「『文書の作成者・正確性の証明』というハンコの目的は何ら損なわれません」と著者は伝える。

 その一例として、著者はある研修で面白い人物の話を聞いたという。銀行に務めていたという受講生の元上司は、融資案件を手がける中で「自分としては反対だけど組織としては通さなければいけない案件のときなど、稟議書の捺印欄に自分のハンコをわざと逆さまに押して」いたそうだ。もちろん「印影が明瞭に映っていれば、ハンコを押す目的は達成されています」と著者は解説するが、ハンコの役割をきちんと理解した上で、他人からの関心を惹きつける方法ともいえる。

 同書では他にも、契約についての基礎や収入印紙の役割など、ビジネスの実務的な場面で役に立つ知識が分かりやすく網羅されている。もちろん仕事だけではなく、日常生活でもためになるような内容もあるため、ぜひとも手に取っていただきたい。

文=カネコシュウヘイ