麻生久美子さん、坂本美雨さんも絶賛! 話題のイクメンマンガ家にインタビュー「お父さんからの反応がすごく嬉しい」
公開日:2015/10/12
独特の絵柄と、笑いあり涙ありの“子育てあるある”なネタがTwitterで大きな反響を呼んでいるあおむろひろゆきさん(@aomuro)の育児マンガが『きみといつまでも 泣き虫おとうちゃんの子育て500日』(宝島社)として単行本化された。そこで今回、筆者は娘・メヒ子(仮名・8カ月)とともに直撃インタビューを敢行。現在、1歳の女の子のパパであるあおむろさんのイクメンぶりを実際に確認してきた。
メヒ子:う~。
あおむろ:なんでも聞いてや(ニコニコ)!
メヒ子:……(顔を凝視している)。
あおむろ:メヒ子ちゃん、ここどこやろね? これなに?(おもちゃを渡す)おっ、ガシャガシャできんの? おっちゃんに見せて。
メヒ子:あうー、あー(ガシャガシャガシャ)。
あおむろ:お~上手上手。…抱っこしたら泣きますかね? (筆者:たぶん大丈夫です)ちょっとじわじわ距離を縮めて…大丈夫? 変な人じゃないからね。
メヒ子:あー! あああああああ(興奮)!
あおむろ:うん、うん、なんでも質問してや。あのね。今日はね、大阪から来たんやで。お、お、さ、か。知ってる?
メヒ子:うー!(あおむろさんの手につかまって立ち上がり、揺れだす)
あおむろ:おっ、ダンスダンス。お~踊ってる踊ってる。ダンス上手ねえ。めっちゃ動くねえ。ダンス好き?(メヒ子:あーあー!)好きか~(ニコニコ)。
インタビューというよりは単に子どもをあやしていただいただけになっているが、初対面なのにご機嫌でお得意のゆらゆらダンスを始めたメヒ子。あおむろさんのあふれるイクメンオーラ(?)に、すぐにメヒ子も慣れて心を許した様子だった。ここからインタビューは母にバトンタッチ。作品についてのインタビューをお届けする。
――書籍化のきっかけについてお教えください。
あおむろ:今年の始めくらいに、宝島社からご連絡をいただいて。まだ当時、編集担当の佐々木さんは育休中だったんですけど…。
佐々木さん:私、その頃、子育てで泣き暮らしていて、あおむろさんのマンガで癒されていたんです
――なるほど。かくいうわたしも、あおむろさんを知ったのはTwitterでした。そもそもあおむろさんがTwitterにマンガをアップし始めたのはいつ頃ですか?
あおむろ:一昨年の秋に子どもが生まれて、翌年からマンガを描き始めました。Twitterに載せ始めたは去年の春ぐらいからですね。もともとは自分の記録用に描いていたんですが、それだけじゃ何だから、ということでTwitterにアップしてみたんです。それまでも、イラストとかマンガは描いていたんですけど( )、これ(育児マンガ)はもう本当に自分の息抜きで描いていたんですね。でもそれがいきなりボカンと反響があって、「おやおや」と。
――フォロワー数ってどのくらい変わりました?
あおむろ:めっちゃ変わりましたね。もともとこれを描き始めたときは、1,000人台だったんですよ。最初は全然反響もなかったんですが、ちょこちょこツイートをまとめてくれる方がいて、そのたびごとに増えていきました。その中で、坂本美雨さんが紹介してくださったりしてまた拡散して…一番多いときで、ひと晩で2,000フォロワーとか、ひと月で1万人増えた月もありました。
――あおむろさんのマンガの特徴のひとつが、味のあるこの絵柄なんですが、実際にお会いしてみると、ストロング金剛的な姿のマンガの自画像とはだいぶ違っていらっしゃいますね。
あおむろ:もともと僕、ふだんサラリーマンをやっていて、基本的にマンガを描くのは子どもの寝かしつけが終わってからなんです。作業時間がすごく限られているので、一番効率のいい絵柄を追求した結果というか。どうしても髪の毛を描いていると時間がかかっちゃうんです。だからこれが一番ラクといえばラクで。でも今回、書籍化にあたって感想のメールをいっぱいいただいたんですが、「うちの主人も髪が薄いのですごく共感しました」っていうのもけっこうあって…「すいません、実物はちょっと違うんです」って。
――読者からの感想で一番嬉しかったものは?
あおむろ:育児でへとへとになって切羽詰まっている方がこれを見て「息抜きになりました」ってコメントをくださったのがすごく嬉しかったです。あくまで自分の記録を載せてるだけやと思っていたので、そんな形で人の役に立てていたっていうのは本当に嬉しいですね。
――お父さん方からも反響はありますか?
あおむろ:あります。お母さん方からの感想もとっても嬉しいんですけど、お父さんからの反響ってやっぱりすごく嬉しいですね。同じ目線で見ていただけるというか。
――お父さんからはこういう反応が多いというのはありますか?
あおむろ:やっぱりお父さんがたは溺愛度がすごいというか、子どもへの大好き感がこちらまで伝わってくるような反応をいただきますね。お父さんたちの琴線に触れるマンガも、溺愛系のものが多いです。
――あおむろさんのマンガで、娘からのハプニングキッスを狙うエピソードがありましたが、お父さんたちにとって、子どもへのチュウのハードルって高いものですか?
自分から娘にチュウしようとすると、むちゃくちゃ嫌がられるんです。向こうから来る分にはいいんですけど、こっちから行くと、とことん嫌がられてしまって…。奥さんは全然そんなことなくて、むしろ顔を近づけたら喜ぶんですけど、僕はもうちょっと口をとがらせただけで、「来る!」と思うのか、「ギャーッ!」て言ってどっか行っちゃうんで…。
――それはお父さんの悲哀を感じますね…。「泣き虫おとうちゃん」とタイトルにもある通り、マンガの中でもよく泣いている描写がありますが、実際、子育て中によく泣かれているんですか?
あおむろ:泣きまくっています。最近は一生懸命ごはんを食べている姿を見ると涙がボロボロ出てきます…。
――ネタはいつ思いついているんでしょうか?
あおむろ:ネタは常に思いつくというか、困ることはないですね。子どもが提供してくれているんですけど、成長過程によってその時その時で新しいことがどんどん出てくるんで。最近マンガを描く時間がなかなかとれなくて、ネタ帳にいっぱい溜まっちゃってます。
――男性の育児マンガはまだあまり多くないジャンルです。あおむろさんはイクメンマンガ家と呼ばれることについてどうお考えですか?
あおむろ:最初はその「イクメン」という言葉が個人的にはイヤで…なんかその特別感みたいなものに拒否反応があったというか。僕も育児をしているものの、奥さんに比べたらやっぱりまだまだだなと思いますし、だからそういう特別な呼び方がすごくイヤで、正直、自分がそういう呼ばれ方をするのも、「う~ん…」っていうのはありました。でも最近はそんなにこだわりがなくなってきたというか、子育てに無関心なお父さんよりはいいのかなと。そう呼ばれるのは光栄なことなのかなと思うようになりました。
――世のお父さんお母さんがたに、伝えたいことはありますか。
「子どもをどう育てたいですか」って聞かれることが多いんですけど、正直あんまり自分は子育てっていうものについて深く考えたことがなくて。自分の経験でもあるんですけど、子供は親のことをよく見て育つので、どう育てるかよりも、自分がどういう生き方をするかっていうほうが大事なんじゃないかなって個人的には思います。だから子育てのアドバイスを聞かれても僕から言えることはなくて…。心がけているのは、本当に普通のことですけど、明るく誠実に生きること、くらいです。
あおむろさんのマンガは、ブフッと笑えるものもあれば、じわっと涙が出てしまうものもあり、読んでいてとても心が軽くなるような不思議な癒し効果がある。それはきっと、あおむろさんのお子さんへのほとばしる愛と、ご自身の誠実な人柄が作品に現れているからなのだと思う。子育て世代だけでなくあらゆる世代の人が、人生にちょっと疲れたとき、このマンガをパラパラと眺めてみれば、自分の身近にある愛情や小さな幸せに気づくきっかけになるのではないだろうか。
取材・文=本宮丈子