「彼女はとてもかわいくて、いい子」従来の三島由紀夫のイメージを覆す、妻にベタ惚れな手紙発見 自身についての本『仮面の告白』も

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/18


 『潮騒』『金閣寺』などで知られる作家・三島由紀夫の手紙が発見された。その手紙には、従来の三島のイメージを覆す、ひとりの女性に纏わる文面が見られ、これまでの三島ファン以外の好感度も上げたようだ。

 戦後の文壇のスーパースターであった三島。自身の性的傾向を客観的に分析した自伝的小説『仮面の告白』や、昭和24年に闇金融会社「光クラブ」を経営する東大生が自殺を図った“光クラブ事件”を題材にした『青の時代』など、多くの代表作を残し、日本のみならず海外でも広く認められた、日本文学界を代表する作家のひとりである。

 また、作品だけでなく“男らしさ”も支持される三島。作家とは思えないほどの鍛えられた強靭な肉体を持つ三島は、取材で立ち寄った自衛隊に惹かれ、その後、入隊も果たした。さらに、昭和と共に生きたと言われ、自決した最期も、実に三島らしい幕引きであり、三島信者を作る要因となっている。

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 なお、自衛隊の決起を呼びかけた後の自決“三島事件”は、当時の世間に大きな影響を与え、三島事件に触発されたのかクーデターが世界各地で発生した。また、同事件を描いた映像作品も数多く制作されており、近年では監督・若松孝二、主演・井浦新(ARATA)の映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」が話題を呼んだ。同作は、カンヌ国際映画祭・ある視点部門の正式招待作品でもある。

 経歴や作品から硬派なイメージが強い三島だが、意外(?)と妻にはベタ惚れだったのかもしれない。

 このたび発見された手紙は、33歳の三島が新婚旅行中に英字で書いたもの。便箋2枚が使われたその手紙は、『仮面の告白』英語版の出版社・社長に宛てられた近況報告だった。冒頭「ここ2~3カ月、私の人生において重大なことがふたつ起きました」とし、母の手術と回復、そして以下のようなことを伝えた。

「6月1日に結婚し、今はハネムーン旅行中です。妻・瑶子は21歳の大学生。彼女はとてもかわいくて、いい子(very cute and sweet)です」

 まさか三島が、妻のことを“かわいくて、いい子”などと言うとは思わなかった人は多いようで、世間からは「実は繊細で、優しい方だったことがよくわかる文面」「自分の妻を“cute”と言うなんて、微笑ましくていいじゃないか!」「女性に偏見を持つ方だと思っていたけど、お母様や奥様をこんな風に思っていたことに驚きました」といった声が上がった。また、「貴重な手紙を紹介してくれて、ありがとうございました」と感謝する声や、「僕も妻を大事にしようと思います」と、三島に倣うという声も。

 今回発見された健気な三島の手紙のほか、2015年9月には、太宰治が芥川賞を懇願する女々しい手紙が見つかり、「人間らしくていい」とファンを喜ばせている。今後も、さまざまな作家の貴重な手紙が発見されることを願いたい。


■『仮面の告白
著:三島由紀夫
価格:529円(税込)
発売日:2003年6月
出版社:新潮社