身近な人を亡くす前に知っておきたい、煩雑で手間のかかる「手続き」のすべて

暮らし

公開日:2015/10/20

 数年前に親を亡くした時、初めて知ったのが「身近な人が死ぬと葬式だけじゃなく、届け出とか連絡とかやること多くて大変、しかもどの手続きも面倒くさい!」ということでした。期限が決まっていることもあったりで急いでやらねばならないことも多く、すべてやり終わった後は本当にグッタリしてしまいました…。

 そんなこともあって、身近な人を亡くした方がいると、お悔やみの言葉をかけた後「これから煩雑な手続きに忙殺され、ゆっくり悲しむのは先になるだろうな…」と気の毒に思うようになってしまいました。「何を不謹慎な!」と言う人は、その面倒くさい手続きをしたことがない人(他の誰かがやってくれたんでしょう)だと思うんです。それでなくても心の整理がつかない時に、あっちも行かないといけない、こっちもやらないといけないというのは、そもそものシステムに欠陥があるんじゃないかと苛立つくらいで、とにかくやることてんこ盛り、泣いてる暇もボーッとする暇もないです。その時に思ったのが、備えあれば憂いなし、身近な人を亡くす前に準備をしておく、ということ。それがまとまっている本がないかと探していたところ、『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』(児島明日美、福田真弓、酒井明日子/自由国民社)というタイトルそのままのものが!

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 本書では身近な人が亡くなったらまず何をやるべきか、そして何が必要なのかを時系列でチェックできるのでとても便利。主なことだけでも、死亡届や死亡診断書、世帯主変更届、健康保険や年金関係の手続き、遺言の有無の調査、遺産の仕分け、確定申告や相続税の申告、不動産や車、株式、預貯金(借金も含む)などの相続手続き、さらにそれ以外にも電気、ガス、水道、クレジットカード、携帯電話、インターネット契約などの解約、生命保険の手続き、郵便の転送などなど、やることが怒涛のように押し寄せてくる。「その時に考えるからいいや」と思ったそこの人、やること多くて確実に途方に暮れることになります(何がどこにあるのかを探すところから始まる)から、ぜひこの機会に本書を読んで知ってください!

 そして余談になりますが、誰かが亡くなるとモメるのが遺産相続。以前司法書士の資格を持つ作家さんに取材した際、これからは遺産でモメる家が増えるだろうという話をしていました。近年は離婚・再婚が多いので、親が死んだ際に見ず知らず、というか存在さえ知らなかった「法定相続人」が現れ、トラブルになることが予想される(民法では前夫や前妻の子にも再婚後の子と同じ相続権が認められている)のだそうです。ちなみにトラブルを未然に防ぐには、やはり遺言書を残しておくことが大事とのこと。ただ、書いただけでは法律上の効果を発揮しない場合があるので、詳しくは本書を!

 またその作家さんは「遺産相続でモメるのは大金持ちと思われがちですが、案外モメがちなのは1000万円以下の遺産」という話もされていました。なぜならそのくらいの遺産しか残さない人は遺言を残さない、また親類縁者は同じくらいの生活水準の人たちが多く、この際だから少しでも多く欲しい、苦労した自分がもらえないのはおかしい、と遺産争奪に躍起になるのだそうです(お金は人を変えます…)。

 ついでにお金の話をしておくと、葬式費用や墓は言うに及ばず(ちなみに故人の銀行口座は死亡後すぐに凍結され、引き出すのにはかなり面倒な手続きをしないといけなくなります)、それ以外にも申請するために必要な書類の発行や交通費(特に実家が遠い人は大変!)が結構バカにならなかったり、不要になった遺品を処分するにもお金がかかる場合があります。ご参考まで。

 と、ここまで書いてきてふと思ったのですが、どうしてもマイナンバー制度をやっていろんな個人情報をヒモ付けしたいんだったら、役所に「死亡係」みたいな窓口を作って、そこに故人のマイナンバーカードを返しに行ったらすべての申請終わり、ってことにならないもんですかねぇ…。

文=成田全(ナリタタモツ)