ホームページで「売上があがる会社」と「あがらない会社」何が違うのか?

ビジネス

公開日:2015/10/26

 インターネットをビジネスに活用するのは当たり前――そんなふうに思っていないだろうか?

 しかし、地方で小さな(けれども地域に根ざした)ビジネス=商売を展開する事業者にとっては、まだまだネットの活用はこれから、という声も聞こえてくる。ウェブサイトを立ち上げたり、ネットショップに店舗を構えてはみたりしたものの、目立った成果があがらず、それでいて、親身に相談に乗ってくれる人もおらず……とその先に進めないという例を周囲でもよく目にする。

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 本書『ホームページで売上があがる会社、あがらない会社、何が違うか』(石嶋洋平/あさ出版)が事例に挙げるのも、町の中古車ショップ、中堅工務店、文具取扱代理店など、事業規模は大きくない、しかし地域に根ざした商売を展開する会社だ。そして、陥りがちなミスを犯さないよう、分かりやすい言葉でノウハウや「べからず」集が纏められている。例えば、以下のような具合だ。

●「ホームページ制作会社に丸投げする」のは大間違い
●「会社案内のパンフレットをそのまま載せる」のは大間違い
●カッコいいホームページを作ると商品は売れなくなる

 まずは集客が大事、その上で、商品やサービスそのものの魅力を伝えることが本質、更にその商品を必要としている人を見定めて営業する――そのためであれば、「ホームページ」でなくてもよく、メルマガだけでも十分だと筆者は強調する。本書冒頭では5万円でメルマガ配信システムを導入し、月10万円近く掛かっていたセールスの電話代を削減、売上を6倍にした例が挙げられている。

 本書の根底にあるのは、いわゆるマーケティングのイロハだが、本書では3Cや4Pといったマーケティングや、ITの専門用語は排して、とにかく身近な事例を積み上げることで、自然とそれらが身につくようになっている。

●9割以上の会社が「顧客像」を間違っている
●「わが社の強み」は「商品」だけとは限らない
●情報をあれこれ並べず「強み」に絞りこむ

 多くの中小企業にとって、まだまだ「ホームページ」は未知で、よく分からない存在だ。ネット登場以前に商売を始めた経営者にとって、それまでのノウハウが通用しないと感じられるのも無理はない。実は小さな商売を営む私の父もその一人だが、可能な限りかみ砕いて分かりやすい言葉で綴られた(そして字も大きめな)本書であれば、「ホームページ」がどうあるべきか、理解してもらえるかもしれない。何よりも「売上18倍アップ」「資料請求が120倍に」「新卒採用エントリー21倍」といった具体的な数字が帯に並んでいるので、「ならば、取り組んでみようか」という意欲も湧こうというものだ。

 現実の商売は実に泥臭い。上記のように本書ではカッコイイ「ホームページ」では売上は上がらない、と断言する。多くの地域に根ざした店舗(例えば八百屋さんなどをイメージすると分かりやすい)がそうであるように、情報が綺麗に整理されているのではなく、そのときにお客に勧めたいものがストレートに配置され、他の商品は店主となじみ客にはどこにあるかは大体分かっている、そういう状態でもOKだというわけだ。その上でPDCAサイクルを回し、「ホームページ」を断続的に改善していけばいい。本書の提言は、背伸びせず、それでいて地に足のついたものだと言えるだろう。

 最初、本書を手に取ったとき、「まだウェブサイトをホームページと呼ぶのか?」と驚いたのも事実だが(ホームページとは本来は会社や個人のWebサイトの起点となるページ、あるいはブラウザを起動したときに最初に表示されるページを指すのだが、日本ではなぜかウェブサイト全般を指して誤用されている)、このくらいの分かりやすさへの割り切りが現実の商売の現場では求められていることの証左だと気がついた。実際、本書でも「敢えてそう呼んでいる」旨の注釈が加えられている。とりあえず、「ホームページ」で商売をするということはどういうことなのか?その本質はどこにあるのか?――それが伝わるのではないかと思い、本書を父にも贈ろうと読後思ったのだった。