コントロール不能な化け物のような物語! 京極夏彦、平山夢明、大森望らが絶賛した『墓頭』が文庫化決定

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/18


 周りの人間を死に追いやる宿命を背負い、戦後アジアの50年を駆け抜けた男の凄絶な一代記――。唯一無二のピカレスクロマンとして、読書界諸氏から絶賛を浴びた『墓頭(ボズ)』。ダ・ヴィンチ「プラチナ本」にも選ばれた同書の文庫が、2015年10月24日(土)より発売される。

 日本ホラー小説大賞、ダ・ヴィンチ文学賞大賞ほか、新人賞4冠でデビューした真藤順丈。『墓頭』は2012年12月の単行本での刊行当時、平山夢明、大森望らの熱烈な推薦を受けたほか、文庫化に際しては、京極夏彦も熱い推薦の言葉を寄せている。

小説にできること。小説でしかできないこと。真藤順丈は苛烈な昂奮を書物という墓石に刻む。容赦はない。京極夏彦

 また、同書は本の雑誌『ダ・ヴィンチ』の選ぶ「プラチナ本」(2013年3月号)にも選ばれ、圧倒的な筆力と熱量が評価されている。

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圧倒的に豊かな化け物――墓頭の目に映るもの、感情を揺さぶったこと、そして次々に訪れる死を、言葉に言葉を重ねて表していく。物語にはさまざまな要素が流れ込んで渦を巻き、「泣ける」「笑える」なんてひとことではとてもくくれないし、ジャンル名も付けられない。ボリュームを反映して、値段も高い。つまりめちゃくちゃハードルの高い本だが、それでもおすすめしたい。圧倒的に豊かで、本当の意味で面白い小説だから。こんなキャラで、こういうオチにしよう、という著者の思惑を、軽々と超越してしまった小説。コントロール不能な化け物のような物語なのだ。ダ・ヴィンチ編集長/関口靖彦

絶望を生き抜くボズの人間力――奇異な人生を送る男の一代記でありつつ、個性的な面々の活躍する冒険群像活劇でもあり、戦後アジアの空気感を切り取った歴史小説的な要素も持つ。グロテスクな死体の描写や凄惨な殺戮シーン、エゴイズム剥き出しの醜悪な人間の姿など、目を背けたくなるような表現も満載だが、読後にはある種の清々しさを覚える。そうした爽快感は、絶望したくなるような不遇のどん底にあっても決して生きることをあきらめないボズの人間力の凄まじさからくるのかもしれない。それは著者の“強くあれ”というメッセージのようにも受け取れる。ダ・ヴィンチ編集者/稲子美砂

読者に火をつける作家の真骨頂――ホラー版フォレスト・ガンプともいえる本作。〈他者こそがすべての恐怖の淵源――〉。作中のこの言葉が語るように、人が起こす争いや殺戮の根源は恐怖なのだと、物語は告げる。恐怖が、他者によって、外からもたらされるのだとしたら、それからいかに逃げ、倒すかということになる。しかし、墓頭は恐怖から逃げられない。なぜなら〈生まれながらに彼は墓だった――〉から。もしも自身が災厄の象徴であったなら。人はみな様々な出自やコンプレックスを抱えて生きるしかない。十字架を背負って這い蹲るように生きた墓頭の物語は、私の腹の底を熱くしてくれた。ダ・ヴィンチ編集者/服部美穂

 長谷亮平のイラストで装いも新たになった『墓頭』。暗黒小説、ミステリ、ピカレスクロマン、幻想小説など、ジャンルの枠をブチ壊す物語を堪能してみてはいかがだろうか。

あらすじ
双子の兄弟のなきがらが埋まったこぶを頭に持つ彼を、人々は<墓頭(ボズ)>と呼んだ。数奇な運命に導かれて異能の子どもが集まる施設に入ったボズは、改革運動の吹き荒れる中国、混迷を極める香港九龍城、インド洋孤島の無差別殺人事件に現われ、戦後アジアの暗黒史で語られる存在になっていく。自分に関わった者はかならず命を落とす、そんな宿命を背負った男の有為転変の冒険譚。

■『墓頭』文庫版
著:真藤順丈
価格:1,040円(+税)
発売日:2015年10月25日(日)
出版社:角川文庫

真藤順丈(しんどう・じゅんじょう)
1977年東京都生まれ。2008年『地図男』で題3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞してデビュー。『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞、『東京ヴァンパイア・ファイナンス』で第15回電撃小説大賞銀賞を受賞。新人賞4賞受賞の快挙で、一新に注目を集める。他の著書に『バイブルDX』『畦と銃』『七日じゃ映画は撮れません』『しるしなきもの』『黄昏旅団』がある。

⇒今月のプラチナ本 2013年3月号『墓頭(ボズ)』真藤順丈