まじめな貧乏女子高生×目つきの悪いイケメン小説家の同居生活は一体? 椿が見える家を舞台にした王道ラブストーリー!

マンガ

公開日:2015/10/23

『椿町ロンリープラネット』(やまもり三香/集英社)
『椿町ロンリープラネット』(やまもり三香/集英社)

 「恋に繋がる出会い方」は色々なものがある。しかし、「父親の借金返済のため住んでいたアパートを追い出され、住み込み家政婦をすることになったが、そこにはなぜか若いイケメンが住んでいて、恋に落ちた……」という、まるで“奇跡”とも呼べる出会い方をする人は、なかなかいないのではないだろうか。

 実際は、恋したい! 出会いがほしい! と思ったら、大半の人が自分から行動を起こさなければいけないように思う。

 しかし、いつだって私たちに夢を与えてくれる少女マンガの世界は別なのである。

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 やまもり三香のマンガ『椿町ロンリープラネット』(集英社)は、女子高生家政婦とクールな小説家が同居生活を始めるという、現実では滅多にお目にかかれないが、少女マンガ界では「王道」とも呼べる出会い方をする、素敵な恋物語が描かれている。

 このマンガの主人公は、黒髪で、セーラー服がよく似合う、大野ふみ、高校2年生。まだ一度も恋をしたことがない、まじめで優しい女の子だ。そんな彼女はある日突然、父親が「諭吉先生が600人」の借金を背負ってしまったのが原因で、住んでいたアパートを追い出されてしまう。

 倹約家で、料理も得意で、日頃から敬語で話すふみは、父のツテで知り合いの作家の家に住み込んで、家政婦として働くことになる。マグロ漁船に乗り込み、旅立った父と同様、ふみも働いて借金返済に協力しようと思ったのだ。家賃も生活費もタダ!という条件に目を輝かせた彼女は、「くよくよしたってお金は貯まらないし、まずは銭を稼いでからですよ!」と前向きに椿町(つばきちょう)にある小説家の家へと向かう。

 しかし、そこにいた家主の小説家・木曳野暁(きびきのあかつき)は、髪の毛がボサボサでヨレヨレのTシャツを着た、目つきも態度も悪い、まだ若い男性だった。

 この小説家の木曳野先生、初めは結構ひどい奴なのだ。ふみのことを「娘」と呼び、夕食を作っても「いらん」の一言。寝食を忘れて仕事をする先生を気遣っても「家族ごっこなら自分の家でやれ」と言い出す始末……。

 だが、ふみには母親がおらず、父親も出稼ぎに行っており、もう帰る家がないという事実を知ってから、先生の態度は徐々に柔らかく変わり始める。

 スーパーに行ったきり帰らないふみを迎えに行き、「お邪魔します」と言って家に帰る彼女に「ただいま だ」と訂正するように促す。下着ドロボーが家に入って来た時は、ふみをかばい、ドロボーを追いかけてつかまえた後、「オレが守ってやる 頼れ」とまっすぐに目を見て言ってくれたのだ。

 先生は不器用で言葉は足りないけれど、実は一日中小説のことばかり考えているだけで、悪い人ではないことに気がついたふみは、帰る場所を見つけ安心して同居生活を楽しむことができるようになる。

 それからというもの、先生が風邪を引いた時は、先生の好物である「きつねうどん」をふみが作るなどして、徐々に距離を縮めて行く二人……。

 しかし第4話から、幼い頃のふみを知っているという、何かと彼女にちょっかいをかけてくるやんちゃそうな男子転校生が彼女のクラスに加わったので、彼女の日常はますます波乱に満ちあふれてきそうではある。

 あそこの角を曲がって、坂をのぼって、椿が見える趣のある素敵なお家で、ぶっきらぼうだけれど時々優しい笑顔を見せる先生とふみは、一体どんな恋をするのだろうか。女の子を癒し、優しく励ましてくれる、キラキラ輝く王道のラブストーリーを、これからも心行くまで堪能したい。

文=さゆ