両膝を握りだしたら「終わりにしたい」のサイン 人間のしぐさに隠された本心を知る

人間関係

公開日:2015/10/29

『FBI捜査官が教える“しぐさ”の心理学』(ジョー・ナヴァロ:著、マーヴィン・カーリンズ:著、西田美緒子:訳/河出書房新社)
『FBI捜査官が教える“しぐさ”の心理学』(ジョー・ナヴァロ:著、マーヴィン・カーリンズ:著、西田美緒子:訳/河出書房新社)

 とある喫茶店。多くの資料が広げられたテーブルで、スーツを着た男性が両の手の平を上に向け、熱心にとある商品の説明をしている。対峙しているのは、年配の女性。彼女は困ったように首筋に手を当てている。もしこのシーンをドラマで見かけたなら(さらに言えば、この女性が主人公の祖母であったなら)、「あ、この女性、騙されるな…」と思うのではないだろうか。それはドラマの筋を見越したうえでのことだが、その認識にはきちんとした根拠がある。

 『FBI捜査官が教える“しぐさ”の心理学』(ジョー・ナヴァロ:著、マーヴィン・カーリンズ:著、西田美緒子:訳/河出書房新社)の著者によれば、男性の両の手の平を前方に伸ばして手の平を上に向けた姿勢(祈りを込める姿勢)は、言っていることを相手に信じてほしいと願う人がみせる姿勢だという。まさに濡れ衣を着せさせられそうな場面ならともかく、先ほどのように両者が対等な取引の場面で、「信じてほしい」という想いが生じる理由は乏しく、この姿勢をとった男性は嘘をついている可能性が高い。

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 これに対し、女性の首を触る行為は、ストレスを感じた人がよくみせる行為であるという。迷走神経が豊富にある首筋を撫でれば、血圧を下げることができるため、脳の「いますぐなだめて」というメッセージに反応し、手が反射的に動くというわけだ。あなた自身も不安を感じたときに、首に手を当てたという経験はないだろうか。

 先ほどのシーンでは、明らかに女性の方が不利であった。では、この女性が形勢を逆転したいなら、男性のどういったしぐさに着目すればよいだろうか。たとえば、行動を起こした本人ですら気づけない、不快感を示すしぐさがある。それは自らの有利を悟り、足を組んでいた男性が数回素早く足を蹴ったときだ。何らかの質問をしてこのしぐさが現れたとき、その男性は、不愉快な感情と闘っている可能性が高い。男性がその質問に対して、どのように回答するかは関係ない。余裕ぶって回答していても、内心は…、というわけだ。このしぐさが現れたなら、その点に関する質問を畳みかけていく。

 そうすれば、男性は両膝を握り、足に体重をかけはじめるだろう。これは、心の中で「もう話を終わらせて帰りたい」と考えていることを示す。ここまでくれば、女性は質問をやめるだけでいい。男性は逃げ帰っていくだろう。

 今、ご紹介した4つのしぐさ。これらはあなたの日常生活においても、もちろん活用できる。たとえば、最後の両膝を握るしぐさ。話していて目上の人がこのようなしぐさを始めたら、それ以上長居をしない方がいいだろう。切り上げ時が分からないという人に着目してほしいしぐさだ。そのほか、この本には90枚もの写真とそれを上回るしぐさの詳細な説明が掲載されている。「スパイキャッチャー」「人間ウソ発見器」という異名を持ちFBI捜査官として数々の難事件を解決してきたジョー・ナヴァロ氏の知識・経験があますところなく、この1冊に詰め込まれている。ほかの本と違い、科学的事実に基づいているため、単なる机上の空論でないことはお分かりいただけるだろう。

 もしこういったしぐさが気持ちを忠実に示しているか半信半疑であるというならば、他人と乗り合わせたエレベーターの中で頭を傾げてみてほしい。次第に居心地の悪さを感じてくるだろう。最も危険に弱いとされる首をあらわにするこのしぐさは、信頼できる相手の前でこそ行うものであり、見知らぬ人に囲まれたエレベーターの中で行い続けられるものではない。もし居心地の悪さを感じたなら、あなた自身がしぐさと気持ちが密接に結びついていることを体感したことになる。半信半疑だった思いは確信に変わり、この本に手を伸ばすことになるだろう。この1冊さえあれば、あなたも目の前の人物の隠された本音に迫ることができるはずだ!

文=藤田ひかり