書籍を自分の血肉に! 読んだことを確実に吸収できる読書ノートの作り方

ビジネス

更新日:2016/1/13

『読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』(奥野宜之/ダイヤモンド社)
『読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』(奥野宜之/ダイヤモンド社)

 小説や自己啓発本、参考書など、世の中にはさまざまなジャンルの書籍があるが、読破してきた本の内容を細かく記憶している人、教訓としてしっかりと活かせている人はどのくらいいるのだろう。人間は記憶を忘れる生き物という説もあるが、一度経験した物事なら、きっかけさえあれば思い出せるものだと筆者は感じている。『読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』(奥野宜之/ダイヤモンド社)では、読んだ本の内容をノートに整理することによって自分の血肉にしていく方法を推奨しているが、具体的にどのような手順を踏んでいくのかを見ていこう。

 冒頭から筆者が驚かされたのは、書籍に書いてある要点のまとめ方だけにフォーカスしているわけではない、というこだわりについてだ。この本を手に取った時は、てっきりまとめ方やノート整理の見やすさについてだけ書かれたものだと思っていたが、実は違う。

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・本の探し方
・有益な本の買い方
・思考を深める読み方
・本から得た情報のノート整理術
・情報を整理したノートの活用法

 といった具合に、読書の始めから終わりまでを徹底的にサポートしている。さらに、ノート自体も

・思いつき用のメモ
・探書リスト
・記事をスクラップ
・読書ノート

 という4つの役割を担っているのだ。つまり、単に読書のみならず、思考や発想、書籍だけではなく、さまざまなところで得た情報を1冊のノートにまとめるという方針になっている。

 これだけの段階を踏んでいく読書ノートは億劫だと感じる人は多いかもしれない。しかし、読書とノート整理を習慣化することによって、情報を自分の血肉にし、時間の削減も実現できるのは大きな魅力だ。一度習慣化してしまえば、それほど苦痛に感じなくなるものではないだろうか。ノート整理を行うことで得られるメリットも大きいといえる。

 まず、本の探し方についてだが、時間の削減に強いこだわりがあるようだ。とりあえず気になった書籍を読んでみようとするのではなく、自分のニーズをしっかりと見極めた上で厳選する。何のために本を読むのか、何の情報が欲しいのかが明確であれば、どのような書籍を選ぶべきかはおのずと見えてくるだろう。目的のない読書はただ時間を浪費してしまうとも考えられる。買い方に関しても、読みたいものがはっきりしていれば、本屋で無駄な時間を過ごしてしまうといった事態も避けられるのだ。書籍選びや購入に掛ける時間を削減できれば、より多くの本を読破することも可能になるのではないだろうか。「探書リスト」に興味のある書籍をまとめておけば、「あれ?どんな本を探していたのだろう?」といった事態も避けられる上に、後からさらに絞り込み、厳選することもできる。

 しかし、最も注目すべきなのは、斬新で大胆なノート整理術である。読破した本をノートに整理するとなると、学校で受けた授業のように要点をまとめておく、あるいは感想文を書くのが主流ではないだろうか。

 著者が掲げている方法は、この2つの方法を上手く両立した構成になっている。筆者もこのノート整理術に挑戦してみたが、時系列毎に次々と記入していくため、一見乱雑でまとまっていないようにも見える。しかし、いざ見返してみるとこれが不思議と見やすい。いつ読んだのか、どの本のどんな部分に感銘を受けたのか、印象に残った言葉などを一目で確認することができるのだ。重要だと思った情報を抜き出し、それに対して自分が感じたことを簡単にまとめておく…それだけでも立派な読書ノートになる。

 筆者が特に面白いと思ったのは、書き上げたノートによって、発想の展開を繰り返し行える点だ。過去に得た情報を思い出し、血肉にするだけではなく、時間が経ってから改めて見返してみることで、自分の中にある考えや価値観が変わっているのかを確かめることができる。ノートを見るだけで、そこから新しい発想や探求心が生まれる可能性もあるだろう。「脳内の情報をノートという形でわかりやすく視覚化する」というのは、効率的な読書が行えるだけにはとどまらず、内面の成長やライフスタイルにも大きく影響してくるものなのかもしれない。

文=青木 陸