4コママンガ、パロディー広告も! 新聞形式の歴史参考書がおもしろい!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17

『完全版 こども歴史新聞(日本の歴史 旧石器時代~現代) (どこから読んでも役に立つ) 大型本』(左近蘭子:著、小林 隆:監修/世界文化社)
『完全版 こども歴史新聞(日本の歴史 旧石器時代~現代) (どこから読んでも役に立つ) 大型本』(左近蘭子:著、小林 隆:監修/世界文化社)

 「勉強が好き」と言える人はどれくらいいるだろうか。知的好奇心がある人でも、いざ勉強が好きかどうかと聞かれると話は別のようだ。それは、きっと興味のないことをむりやり頭に詰め込もうとすると楽しくないからだろう。何事もやれと言われるとやりたくなくなるのが人間心理。それならいっそのこと苦手意識のある人でも自主的に読みたくなるような教材を探してみよう。

 ここでよくありがちなのが「簡単」「わかりやすい」などと銘打った参考書を選んでしまう失敗。これは上に積み重ねていく教科の基礎作りには最適だが、歴史のように掘り下げていく教科にはあまり向かない。単にテスト対策で利用するなら必要最低限のことが書かれているから丸暗記するのに便利だが、「えっ? こんなことがあったの?」というような驚きや発見はほとんどないから、次のステップにはつながらないのだ。つまり、勉強嫌いや歴史嫌いはそのままキープで終わってしまう。

advertisement

 そこで、もっと知りたいという気持ちを引き出すのに最適な歴史参考書を紹介しよう。『完全版 こども歴史新聞』(左近蘭子:著、小林 隆:監修/世界文化社)だ。歴史の学習を始めたばかりの小学生はもちろん、歴史が苦手な中・高校生にも、歴史好きの大人にもぜひ手に取ってもらいたい1冊なのだ。

参考書というにはあまりにもおもしろい構成!

 実はこの本、小学生用の歴史参考書コーナーに置かれている本だ。そのため、帯に“教科書準拠”と大きく書かれている。字は大きめで、イラストや写真も多く、480ページとかなり分厚い本だが、子どもでも最後まで飽きずに読める工夫がされている歴史本なのだ。

 しかし、子どもだましの本ではない。内容は盛りだくさん。イラストは多いがいわゆる普通の学習漫画とも違う。見開きが歴史の場面ごとにまとめられた新聞の紙面になっているのだ。どんなものかは、普段よく目にする新聞の紙面を想像すればいい。記事があり、4コマ漫画があり、商品広告や求人広告、お悔やみコーナーなどもちりばめられている。

 例えば、縄文時代なら、当時の子供が書いた日記コンクールの大賞作品を発表すると題して縄文の暮らしが語られたうえで、10代で死ぬ人が多いことがわかるようにお悔やみコーナーで紹介。逆に長寿おめでとうのコーナーにはムラの最年長記録者として60歳の人を載せ、現代との差をさりげなく示している。

 また、古墳時代の記事下には「我等が大君のお墓作りにあなたのお力を」と題した求人広告が、本能寺の変に伴う秀吉の中国大返しの記事下には「かの秀吉公も使った超ぬけ道マップ」の商品広告が掲載されている。ちなみに、4コマ漫画「ゴロちゃん」はすべての時代で連載されている。もしメイン記事に興味が湧かなかったら、パロディー広告や4コマ漫画だけ読み進めていってみてはどうだろうか。それらひとつひとつに目を通してクスッと笑っているうちに頭にいろいろなことがインプットされるのがこの本の特徴だ。

勉強嫌い・歴史嫌いにおすすめなのはここ!

 歴史は好き嫌いが極端に分かれる教科だ。歴史が好きだと言う人は、時代の流れと共に変化する暮らしぶりやその時代に生きた人の生き様に興味を持つようだが、逆に歴史が嫌いな人は、年号や人の名前など暗記することが多いところがイヤだと言う。これこそ「勉強だから楽しくない」の典型的な例なのではないだろうか。

 ということは、勉強だと思わず読めて、読んだことが頭にスッと入って残れば歴史は楽しくなるはず。だから苦手な人が読むなら内容が簡単かどうかよりも興味をそそられるかどうかの方が数倍重要だ。ただ簡単で読みやすいだけだと、当たり前のことばかりが書かれていて新しい発見がない。新しい発見がなかったらつまらなく感じるだろう。だから、「もっと知りたい」と次のステップにつなげるためには、「えっ? こんなことが?」という楽しい発見が盛り込まれている必要がある。その点この本には教科書ではわからない発見が見開きページのあっちこっちに見られる。例えば、平安時代の貴族のぜいたくな食事は栄養の偏りが大きく、かえって病気の元になっていたことや、徳川5代将軍綱吉の出した生類憐みの令のせいで、怖くて誰も犬を飼わなくなり逆に野良犬だらけになったこと、明治になって郵便箱が設置されたとき、字のせいで便所と間違えられたことなどを見ると、当時の世相が手に取るようにわかる。だからこそどんどん次のページをめくって読み進めたくなるのだ。

 

レベルに合わせて知的好奇心を満足させてくれる1冊

 この本に採用されている新聞形式のよいところは、読む人のレベルに合わせていろいろな読み方ができるという点だ。どの時代からでも読めるし、見開きページのどの部分からでも読むことができる。初めて歴史に触れる人は、おもしろく読める部分だけ選んで吸収すればいいし、試験対策に読む人は必要な部分だけ読んで理解すればいい。

 しかも、この本のスゴイところは、歴史が苦手な人だけでなく、歴史好きを自称する人でもおもしろく読めるというところだ。「こんな初心者向けの歴史本に用はない」と言いそうなくらい歴史に詳しい人でも、隅々まで目を通せば飽きることなく読めるはず。小学生向けの書棚に置いておくのがもったいない1冊だ。

文=大石みずき