「クソバイス」返しは、ポジティブな必殺ワードが効果的! この本を強制的にプレゼントする、というのもアリです! 犬山紙子インタビュー【後編】

文芸・カルチャー

更新日:2018/6/5


『言ってはいけないクソバイス』(犬山紙子/ポプラ社)

 「酒豪の女はモテない」「男のくせに軽自動車?」など、軽~い気持ちから不意に繰り出されたにもかかわらず、言われた側にはとてつもないダメージを与える「クソバイス」に悩む人は多い。しかし、もしクソバイスを受けたとしても、ダメージを回避して相手に一撃を与える「クソバイス返し」という必殺技がある、と言う犬山紙子さん。クソバイスがてんこ盛りな『言ってはいけないクソバイス』(犬山紙子/ポプラ社)から学ぶ、その秘策とは!?

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距離感と想像力の欠如が「クソバイス」を生む

――犬山さんも常日頃から山のようなクソバイスを受け続けてるそうですね。

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 「テレビでもうちょっと毒を吐きなよ」とか「右頬がたるんでるから表情筋を鍛えろ」とか言われたことありますよ。でも右頬の表情筋だけどうやって鍛えんだよ、老いに逆らえっていうのか!と。あとはブログで手のひらが見えるような写真をたまたまアップしたら、勝手に手相を診て「幸運は30歳までに終わっていて、今は踊らされているだけ」とか…。あとはツイッターに夜中「これからこれを食べます」という写真をアップすると「太りますよ」って…知っとるわい! なぜそれを言わずにいられない、お前は!と思いますねぇ。コミュニケーションのつもりなのかもしれないですけど、事情も知らずに「これはこうした方がいい」とかクソバイスしてくるのって、距離感の取り方を間違ってると思います。

――いちいち相手にしない「スルースキル」みたいな話もよく聞きますしね。

 クソリプとかに怒ったりすると、「そんなのスルーですよ、犬山さん」というリプライがくるんですけど、それすらほっといてくれというか(笑)。それにしても、クソバイスを言わずにいられない衝動にかられるって、よっぽど人に何か教えてあげる行為って気持ちいいんだろうなって思いますね。「どや! エエ事言ってやったで!」みたいな。だからそこで反論すると「なんでやねん!」と怒り狂ったり、「あー、そこでそういうこと言っちゃうからアナタはダメなんです」みたいなパターンになったり。「自分がクソバイスを言われたら嫌な気持ちになる」という想像力も足りてないんですよね。

――でも会社など、距離感が近過ぎるところもありますよね。

 会社とかママ友グループなどにすごいバイザーがいて、逃れられない枠の中でクソバイスを受け続けると追い詰められてしまうんですよね。マジメな人ほどいちいち真に受けてしまうので。そして私が悪いのかな、ってどんどん自分を追い込んでしまうので、この本を読んで「これはクソバイスだ、この人の言ってることは真に受けなくていいんだ」ってことに気づいてもらえるといいなと思います。そしてクソバイスされたことをみんなと共有したり、友達と話したりして発散して、溜めないでほしいですね。私も本に書いたら、スッキリしました!(笑)

~『言ってはいけないクソバイス』より~
 犬山さんお気に入りのクソバイス&クソバイス返し
「女の子はいつも笑顔でいなくちゃ。すぐに怒っちゃダメ」
→「◯○さん! その格言良いですね! Twitterに投稿しましょう!」

ポジティブな必殺ワードで「クソバイス」返し!

――犬山さんは本書で数々の「クソバイス返し」を繰り出してますが、どうしたらうまく言い返せます?

 クソバイスを受けた時にガツンと言い返すのって、やっぱり現実世界では難しいと思うんです。だからそうなった時に、いかにその話題から別の話題に逸らすか、なんですよね。嫌な空気を続かせない、クソバイスをヒートアップさせない、説教させないという「流す技術」なんです。私のオススメのクソバイス返しは「面白い」です。ちょっとホメてるようでいてバカにしてるっていう(笑)。何を言われても「わ~、面白~い」しか言わないとか、その人なりの必殺技を探してみるのもイイかもしれないですね。

――「けだし名言ですな!」とかどうですか? なかなか言う機会なさそうですが(笑)。

 それいい!(笑)そういうことわざみたいな難しい文句を言うと、相手も一瞬「ん?」ってなるからいいですよね。必殺技がひとつあるとバトルしやすいし、相手に気づかれないで自分もスカッとできます。「優しい!」とかもいいかもしれません。その後に嫌なこと言いにくくなりますから。こういうどうとでも取れるワードっていうのがポイントですね。自分の心の中では言い返してるんだけど、相手からするとポジティブなのかなと思わせる。それからその場で強制終了しないといけないので、言い切ってしまうのも大事ですね。

――強制終了!(笑)

 だいたいクソバイスされると「そうですよね」とか「なるほど」とか言っちゃうんですよ。でもそれだとアドバイスを受けたことになってしまうし、余計にクソバイスがヒートアップしてしまう可能性があります。だから相手の言葉に納得してるような言葉はダメ、どうとでも取れるポジティブなワードで強制終了させてください!(笑)

――そう考えると「男はこうあるべき」「女はこうしろ」というのってだいたいクソバイスですね。

 クソバイスって、相手が知らない前提で「教えてあげる」体で言ってくるんですよね。「35歳過ぎると子ども産むの大変になるよ」とか、そんなのアラサーになったら誰でも知ってるのに言ってくる。それって相手が知ってるかもしれないということすら考えない、想像力の欠如ですよね。あとはゲームとかアイドルとかアニメとか、なぜか人から軽んじられているカルチャーをバカにしてくる人っていますよね。絵画鑑賞が趣味の人には何も言わないのに、なぜ人の趣味に優劣をつけるのか! それこそ器が小さいというか、差別意識があると言ってるようなものだし、その人の価値観を他人に植え付けようとしてるだけ。ホント怖いですよね。

――クソバイスってふとした瞬間に言ったり言われたりするものだから、「これはクソバイスだ」と自分で認識することが大事ですね。

 クソバイスしないためには、世の中にはいろんな人がいるんだという「多様性」を認めることと思います。多様性を認められないから、女はこうしろ、男はこうあるべきってなるので。自分の中に枠があるからこそ、その枠からはみ出している人に何か言いたい、という欲求が出てくるんですよね。ただ「クソバイスを言ってしまう」という多様性だけは認めたくないです!(笑)なのでこの本を読んで、クソバイスを言ってしまった過去を反省しつつ、言われた傷も癒やしてもらえたらなと。それからクソバイスという言葉を広めるため、ぜひ周りの人、若い人からおじさん、おばさんまでこの本を勧めてほしいです。貸すのでもいいですから! それからやたらとクソバイスしてくるバイザーに「これ面白いですよ!」って強制的にプレゼントする、というクソバイス返しも有効です(笑)。ぜひ「クソバイス」を広めてください!

取材・文=成田全(ナリタタモツ)

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