『コウノドリ』よりヤバイ…! ハイリスク妊娠、中絶、離婚、再婚、出産すべてを経験した女性の実録

出産・子育て

公開日:2015/11/5


『5年でハイリスク妊娠、中絶、離婚、再婚、出産を経験した私が今伝えたい5つのこと』(田中もも:著、宋 美玄〈産婦人科専門医〉:監修/メタモル出版)

 物語投稿サイト「STORYS.JP」で殿堂入りした実話が、待望の書籍化。今女性を中心に、大きな注目を集めているという。その名も『5年でハイリスク妊娠、中絶、離婚、再婚、出産を経験した私が今伝えたい5つのこと』(田中もも:著、宋 美玄〈産婦人科専門医〉:監修/メタモル出版)。

 本書は、タイトルの通り、5年の間に起きた著者の実体験をもとにしたノンフィクション作品。重々しい内容だというのが一瞬でわかるこのタイトル。確かに女性なら思わず手にとってしまうかもしれない。

 しかし、大変失礼な話だが、筆者は最初この本を手にしたとき、何がそこまで話題になっているんだろうという気持ちだった。というのも、中絶も離婚も、ごくありふれたテーマじゃなかろうか。決して中絶や離婚を軽視しているわけではなく、全国に売り出される著作物として、このテの本はそこまで珍しくない。誤解を恐れず言うならば、“よくある話”だと思っていた。

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 ところが、甘かった。未婚で、妊娠も出産経験もない筆者が、いかに「中絶」や「離婚」という言葉に麻痺してしまっていたかを痛感した。この本に書かれているのは、“よくある話”ではなく、どの女性にも“起こりうる話”だった。

 ごく普通に恋愛結婚をした“もも”は、夫との間に待望の赤ちゃんを授かる。しかしほどなくして三つ子と判明。ハイリスク妊娠を受け入れてくれる病院を探すも、ことごとく断られ、やっと探し当てた病院では人工中絶を勧められてしまう……

 まず、この前半部分を読むだけでどっと疲れる。ハイリスク妊娠の場合、出産を受け入れてくれる病院は、かなり限られてくるそうだ。運良く見つかったとしてもベッドが満員であれば諦めるしかない。病院が見つからないで焦っている間にも、お腹の子どもはどんどん大きくなっていく……妊婦にとっては相当なストレスだろう。

 ところが、ももの悲劇はまだまだ続く。ようやく見つかった病院で医者から宣告されたのは、「このまま出産すれば、母子ともに危険な状態になるのは間違いない、中絶したほうがいい」というもの。初めての出産に大喜びしていたももや家族にとって、その言葉は絶望以外のなにものでもなかった。

 もしも、ハイリスク妊娠を受け入れる病院の選択肢がもっとあったなら、この結果は変わっていたかもしれない。あるいは、遠くの大きな病院に安心して通えるための補助金や制度があればなんとかなったのかもしれない。しかし、残念なことに、これが今の日本の現実なんだそうだ。どんなに産みたいと願っても、環境が整わなければ無理なのだ。

 中絶を決意したももは、堕胎手術を受けることになるが、ここでは非常にショッキングな描写が連発する。筆者の言葉が胸に突き刺さる。

 ただただ、そこは戦場だった。修羅場だった。青いバケツの中をのぞきこむ勇気など、私にはなかった。もし見てしまえば、精神に異常をきたしていたかもしれない……

 産みたくてしかたがないのに、中絶しなければならない辛さは計り知れない。そんな苦しみにさらなる追い打ちをかけたのは、ほかでもない夫の裏切りだった。中絶後、体調の悪化に苦しんでいたももを横目に、夫は別の女性と何度も逢瀬を重ねていた。夫婦関係はもはや修復不可能に……。

 苦労の耐えないももだったが、やがて一筋の光が差し込んでいく。

 本書は、これから母や父になる人へ向けた一冊であるとともに、妊婦の受け入れ体制の問題や、産後のフォローやケアなど、社会問題を提起している本でもある。

 著者が伝えたい「5つのこと」がなんなのか、ぜひ手にとって読んでみてほしい。

文=中村未来