現役看護師が描く、医療ファンタジー『LICHT-リヒト-』 女子の心をくすぐる衣装デザインにも注目!

マンガ

更新日:2015/11/20


『リヒト 光の癒術師-ハイレン』(明/小学館クリエイティブ)

 病み傷つくすべての人に光(LICHT-リヒト-)を与える「癒者(いじゃ)」の最高位「ナイチンゲール」を目指す少女ティナの成長を描くハートフルファンタジー『LICHT-リヒト-』(明)。連載型マンガ配信サービス『GANMA!(ガンマ!)』で連載中の本作が単行本化され、10月に1巻が発売された。

 ティナはまだ癒者の見習いでしかなく、同じく癒者になるべく日々鍛錬を重ねる仲間たちと一緒に必要な知識を学び、実践で患者たちに触れ、日々たくさんの雑事と覚えるべき物事に潰されそうになりながら、自分の夢を叶えるべく奔走している。何度も何度も、心を潰され折られ、ずたずたにされながらも、ティナと、ティナと志を同じくする仲間たちは前を向き進んでいこうとする。

 この物語の作者は、実際に看護師だそうだ。「人の持つ治癒能力を引き出す」といった、超能力を操る癒者がいるファンタジーな世界観で、果たしてその経験は生かせるものなのだろうか?…と疑問に思ったものの、その思いはまったく的ハズレだった。なぜなら、そんなファンタジーな世界観に生きるティナたちにとっても、患者とのコミュニケーションの難しさ、かけがえのない命を扱うギリギリの緊張感とそして、コミュニケーションが難しいからこそ、思いが通じた患者が笑顔を見せてくれた喜び、消えそうだった命の灯火を寸前でつなぎ止めることができた、震えるような嬉しさ…といったさまざまな気持ちは、例えファンタジーな世界でも変わらずにあるものだから。

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 その世界を知らない私達にとっても、どんなに大変でもどんなに辛くとも前を向き、そこに今ある命を救おうとするティナは、とても眩しく頼もしく見える。ティナ自身の「たくさんの人を救いたい」という気持ちの強さに、いつしか読者まで救われているのかもしれない。

 この作品の見所はそれだけではない。ていねいな描線でしっかりと描かれた、街の風景や動物たち、キャラクターたちが身にまとう衣装ひとつひとつが、実に味わい深く見ていて飽きない。『GANMA!(ガンマ!)』に掲載されている「特別企画(LICHT-リヒト-のファッション事情)」をあわせて見ると、もっと女の子視点からリヒトの世界を楽しめる。キャラクターの個性や性格にあわせてデザインされたかわいらしい衣装や道具、記章まで詳細がフルカラーで描かれていてうっとりしてしまう。

「特別企画(LICHT-リヒト-のファッション事情)」はこちらから

 一度目はストーリーを追い、ティナや仲間たちの成長を追う。ニ度目はコマの隅々までじっくり眺め、その世界にどっぷり浸る。最低二度読むことをおすすめします!

文=kujira