あまりの怖さにトラウマ続出のあの作品が帰ってきた! 『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』をオーディオブックでどうぞ

マンガ

更新日:2017/2/7


『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』(斎藤惇夫/岩波書店)

 10月21日、『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』(斎藤惇夫/岩波書店)が初めてオーディオブック化を果たし、FeBe(フィービー)で配信スタートした。同作品はちょうど40年前、TVアニメとして放送されていて、主人公の町ネズミ・ガンバが島ネズミたちを助けに行く……というストーリーなのだが、それ以上に敵役である白イタチ・ノロイの凶暴さが印象的で、「イタチ怖い」というトラウマを抱えた子どもも多かった。

 同作品を原作とした3Dアニメ映画の上映も始まったばかり。とにかく登場人(?)物が多いのだが、オーディオブックのため朗読に臨んだのはなんと、くまいもとこさん1人。李小狼(『カードキャプターさくら』)やユウナ(『スティッチ!』)、本田吾郎(『MAJOR』)など幅広いキャラクターをこなすくまいさんに、演じる上での苦労点や工夫されたところなど、収録風景の裏話をうかがった。

16キャラプラスαを演じ分ける極意とは

――これまで、幼女から少年、さらに老婆の役を演じてこられたくまいさんですが、今回のキャラは16匹。これを1人でこなした、とお聞きして驚きました。

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くまいもとこさん(以下、くまい):実際には16匹以上ですよ! それ以外のネズミたちも出てくるし、ノロイをはじめとしたイタチたち、オオミズナギドリの「ツブリ」などサブキャラも含めるとかなりの数。わたしもびっくりですよ(笑)。

――アニメでは、多少声質が似ていてもしゃべっているキャラクターを目で確認できますけど、オーディオブックの場合、耳からの情報だけでユーザーに理解してもらわないといけないので、朗読する側は大変だったんじゃないんですか。

くまい:そうなんです。どうやったら登場人物の個性を活かせるだろうかと考えましたね。キャラがかぶっている……例えば「ガクシャ」と「詩人」という知的なネズミなどは、演じているうちにごっちゃになってしまうこともありましたし。

――各キャラクターの声や演じ方は、どのように決めていったんですか?

くまい:まず、最もセリフの多い主人公のガンバのキャラを確立しました。地声に近いものにして力まずに(声を)出せるように。それに、主人公さえしっかりしていれば、ほかのキャラも演じ分けやすくなりますしね。

――なるほど。

くまい:あとは、映画化が決まっていたので、そのキャストが参考になりましたね。「ヨイショ」はあの人だからこんな感じ、「イカサマ」の配役はこの人だし性格からしてもこんな感じ、みたいな。難しかったのは「潮路(しおじ)」です。「忠太」のお姉さんネズミなんですが、可愛らしい感じも出したいし、保護者的な側面も出したい。原作にはない、細かな設定づけをして、自分なりの潮路を出せたんじゃないかな、と思います。

――キャラが立っているからか、演技に真実味があり、ラスト近くのイカサマと「ボーボ」のシーンは自然と涙が出てきました。また、ナレーションの部分は聴きやすく穏やかな雰囲気で「これ、本当に1人で朗読しているの?!」と。

くまい:嬉しい! それ、記事に書いてくださいね♪(笑)。


「あれ、これって○○のセリフだったの?!」

――ところで、収録方法ですが「今回はガンバの部分だけ」「今日はナレーションの部分だけ」のようにパートごとに分けてするものなんですか? それとも通しですか?

くまい:通しです!

――やっているうちに混ざっちゃいませんか?

くまい:なりました! キャラ分けうんぬん以上に、小説という体裁が課題となりましたね。アニメと違って台本ではないでしょ。なので、一見しただけでは誰のセリフか、どういう状況かというのが分からない。セリフ部分の後に続くナレーション部分で「……と、ヨイショがつぶやきました」とあったりすると「ここ、イカサマじゃないのかーい! しかも叫んでないのかーい!」とセルフツッコミを入れたりして(笑)。

――それは……(笑)。

くまい:だから、それぞれのセリフの前に「誰がしゃべっているのか」「どんな状況か」をト書きのように書き込んで、収録に臨みました。

くまいさんの本にはたくさんの書き込みが……

――アニメとの違いがそういうところで出てくるんですね。

くまい:そうですね、あとは読み方も若干異なりました。例えば、アニメなら「おめぇ、なにもンだ?」と言っても問題ないところを「おめぇ、なにものだ?」と音便化しないで読む、といった具合ですね。オーディオブックのために朗読するのはこれが初めてだったので、戸惑いもありましたが、あくまでもこれは“本”なんだな、と実感できました。とはいえ、それ以外のところではかなり自由気ままにやらせてもらえたんですよ! アフレコではないので、感じたまま、自由なペースでセリフは読めましたし、これまで悪役やドスの利いた声の役を演じた経験のほとんどないわたしが、ノロイやアウトローな雰囲気のキャラを演じられるのが楽しくて、かなりノリノリでした(笑)。

もう「怖かっただけ」とは言わせない

――実は、「ガンバの冒険ってどんな内容だっけ? ノロイが怖かったのは覚えているんだけど」というくらい、アニメ版ではノロイへのトラウマしか残っていなかったんですが、原作のオーディオブックを試聴したところ、イメージが頭の中に描け、ストーリーがスッと入ってきました。しかも……失礼を承知で打ち明けますが、集中して聞いていたわけではなく、作業しながらだったんですが(笑)。

くまい:何かしながらでも“読める”ところが良さじゃないんですかね。400ページもの原作を読み通すのは大変でも、耳さえ空いていればいいわけで。

――最後に、読者の方にメッセージをいただけますか。

くまい:劇場では映画の『ガンバと仲間たち』が公開されているので足を運んでいただきつつ、興味のある人は原作『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』にも触れてみるのはどうでしょうか。できればこのオーディオブックで。くまいもとこがすべての役をどんな風に演じ分けたのか、聴き比べつつ楽しんでもらいたいですね。

文・写真=渡辺まりか