載っている魚がおいしそう! 釣り人向け海魚図鑑の特徴とは

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公開日:2015/11/20


『海の魚 大図鑑』(石川皓章:著、瀬能 宏:監修、隔週刊つり情報編集部:編集/日東書院本社)

 魚の図鑑を選ぶときの基準は何だろうか? おそらく載っている魚の数やイラストの美しさと答える人が多いだろう。しかし、そのような基準で選んでいたら一生出会えないような図鑑の中にも、魅力的な一冊がある。今回ご紹介する『海の魚 大図鑑』(石川皓章:著、瀬能 宏:監修、隔週刊つり情報編集部:編集/日東書院本社)もそんな一冊だ。

載っている種類が少ない分マニアックな図鑑

 図鑑が取り扱うジャンルは幅が広い。小さな子どもでも気軽に読めるものから学術用の難しいものまで、難易度にも差があるため、同じジャンルの図鑑であっても種類が多くなるのだ。特に生き物に関する図鑑は種類が多く、魚に関するものだけでも何十種類と売られている。

 今回取り上げる『海の魚 大図鑑』は日本の海で釣ることができる600種の魚をすべて網羅している図鑑だ。などというと掲載されている魚の数が多そうに聞こえるが、小学生向けの図鑑でも1000種類くらいは掲載されていることを考えると、600種類というのはかなり少ない。しかし、399ページという分厚さ。つまり、1種類についての掘り下げ方がマニアックで深いのだ。

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自分で魚を釣りたくなる図鑑

 一般的な図鑑を水族館にたとえるなら、この図鑑は魚河岸だ。というのも、日本の周りの海でとれる魚に絞って解説しているうえに、掲載写真はすべて著者が自分で釣り上げた魚を撮影したものだからだ。写真の見た目が一般的な図鑑の写真とは明らかに違う。かっこいいかどうかは別として、とてもおいしそうなのだ。

 最初の30ページほどは、魚全体の解説や危険な魚についての解説、釣り場についての解説など、釣りの基礎知識的な内容に割かれている。どのような層にどんな魚が生息し、どの魚はどのくらいの深さに住んでいるかを解説するような魚図鑑は他にあまりないだろう。また、ところどころにおいしそうな魚料理の紹介があるところも独特。食べたかったら自分で釣れと言わんばかり見せ方だ。

同じ種類の個体差に注目した珍しい図鑑

 一般的な魚類の図鑑はマダイならマダイ、マハタならマハタ、マルアジならマルアジでそれぞれ1種類ずつなのではないだろうか? しかし、この図鑑は個体差を重視する。なぜなら釣りをする人向けの図鑑だからだ。

 例えば、マダイなら、通常時の雄と、産卵期の雄、小型の幼魚という分類、マハタは一般的なサイズと1kg級のマハタ、幼魚という分類で解説されている。なかでも、マルアジは標準タイプと太めの固体という分類がされており、分類の仕方にも釣り人目線が活きていることがわかる。

生時と死後の写真が掲載されている!

 新鮮さの見分けを重視した図鑑が他にあるだろうか? 釣り上げてすぐに色が変わるフエダイやタカサゴの仲間は生時と死後の写真が同時掲載されているのが特徴的だ。中でもタカサゴは釣り上げて1分後と2分後の写真が掲載されている。とにかく、写真の横に「死後」などと書かれている魚の図鑑は他には無いだろう。

魚ごとにおいしい食べ方が書かれている!

 釣り人用の図鑑ということもあり、どの地域で釣れるかの他に、地域ごとの呼び名の違いもきちんと載っている。そのうえどうやって食べればおいしいかも記載されているのが特徴だ。例えばイサキなら刺身、塩焼、煮付け、マハゼなら天ぷら、甘露煮といった具合だ。

さかなクンが言っていたことも載っていた!

 さかなクンが某番組の釣り企画でメバルをシロメバル、クロメバルに見分けていたとき、胸びれと尻びれの軟条数を調べていたが、この図鑑でも同じことが詳しく解説されていた。クローズアップされた写真で細かくどの部分を数えたらいいかが解説されている。さかなクンを目指すならやはりこの図鑑は隅々まで読んでおいた方がいいだろう。

文=大石みずき