結婚は不安だけど、パートナーは欲しい…そんなアナタに「フランス婚」のススメ

恋愛・結婚

公開日:2015/11/24


『じつはウチ、フランス婚 ~結婚してない、でも家族~』(しばざきとしえ/モバイルメディアリサーチ)

 「婚活」の2文字が『新語・流行語大賞』にノミネートされたのが、2009年のこと。今や「婚活ビジネス」は花盛りとなり、相席居酒屋に街コン、結婚相手の紹介サービスなど、結婚を目指す男女の出会いの場は、ごまんとある状態。今の日本は歴史上、「結婚したくてもできない人」の不満が、もっとも解消されやすい社会になっているのかもしれません。

 その一方で、結婚したいと思わない人は、肩身の狭い思いをしていることでしょう。日常生活に飛び込んでくるブライダル絡みの広告は、もはや暴力的とも言える数。テレビCMに電車の中吊り、いつまでも跡をつけてくるwebサイトのバナーだって…。結婚式の費用の抑え方?いやいや、そんな大金があるなら、豪勢な一人旅でもしてやろうかと思うものです。

 結婚に関して、何となく気が進まないなあと思っている方。それはひょっとして、自分が育った家庭環境や、周囲の誰かの失敗談によって、及び腰になっているからではないでしょうか。両親の不仲・親戚関係・不倫・家庭内暴力…。自分が結婚という轍を踏んでしまえば、そんな忌々しい状況まで再生産してしまうかもしれないという不安から、結婚というルートを通らない人生を模索している方もいらっしゃることでしょう。

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 当たり前のことですが、私たちが誰かから直接聞ける経験談の種類は、自分の周囲にどんな人が居るかによって、大きく変わってきます。似たような人とばかり付き合っていれば、得られる情報だって、似たようなものになるかもしれません。ですから、珍しい経験をしている人のハナシを知っておくことは、とても大事。人生の様々な場面で、自分では思いつかなかった選択肢を与えてくれるかもしれないのです。

 『じつはウチ、フランス婚 ~結婚してない、でも家族~』(しばざきとしえ/モバイルメディアリサーチ)は、婚姻届を提出せずにパートナーとの生活を送っているイラストレーター・しばざきとしえさんの実体験を記したコミックエッセイ。所謂「事実婚」の状態なのですが、同書を読むと、自分はこの「事実婚」について、あまりにも知識を持っていなかったのだと思い知らされます。

 例えば、同書にて紹介されている「準婚」の権利について。独身の男女がある方法で住民票を提出すると、二人が「準婚」の関係にあるとして、公的に証明できるのだそうです。この「準婚」の関係にあると、戸籍上は他人であることを保ちながら、法律婚に近い権利と義務が発生するとのこと。つまり、夫婦としての協力扶助義務なども発生しますが、同時に、どちらか一人が相手の扶養に入るといったことも可能になるのです。配偶者控除や遺産相続については適用されないものの、共働きカップルや、残すほどの財産は持っていないわ…という方にしてみれば、あまり関係のない話かもしれませんね。

 そうなると、思い浮かぶ疑問もあります。これは同書の中でトリエ(=しばざきさんご自身)さんもつぶやいていることですが、「じゃあ法律婚ってなんなの…?」というハナシです。例えば、法律婚では多くの場合、女性側が苗字を変えているという現状があります。銀行や保険の手続きだって必要になるし、ハンコも作り直さなきゃいけないし…。そんなわずらわしさは勿論ですが、苗字が変わることによって、自分が自分でなくなるような喪失感を抱き、つらい思いをされる方もいらっしゃいます。周囲の大人が当たり前のように選んできた法律婚は、そうまでして選ぶメリットが果たしてあるのか…そんな視点から、結婚という制度について考え直すきっかけにもなるかもしれません。

 同書で紹介されている夫婦間のルールや生活スタイルは、あくまで著者・しばざきさんのケースです。賛同できないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、婚姻届を出さなくても、心地いい距離感を保ちながら夫婦として過ごす方法があるということを知れるだけでも、一読の価値はあるでしょう。

 生涯未婚率の増加や、同性間パートナーシップを認める自治体が増えてくるなど、日本の家族のあり方は、大きく変わりつつあります。ここらであなたも結婚に関して、自分のアタマを柔らかくしてみませんか?

文=神田はるよ