教えてください、金田一先生!! オツな日本語ってなんですか?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17


『オツな日本語』(金田一秀穂/日本文芸社)

 テレビでもお馴染みの金田一秀穂先生が著している『オツな日本語』(金田一秀穂/日本文芸社)は、自然や四季を感じる日本人の敏感なセンサーから生み出された「奥深い日本語」を紹介してくれている。

 この本を読んでいると、日本人の自然に対する「親しさ」や「愛着」や忘れていた日本人の心を、言葉として感じることができるのだ。

 本書の構成は以下の通りである。

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四季にまつわる言葉として、「春のことば」「夏のことば」「秋のことば」「冬のことば」。
懐かしく趣深い、このまま死語になってしまうのはもったいない「昔のことば」。
反対に、ここ最近生まれてきた「このごろのことば」。

 「つまり、どういう言葉なの?」「趣深い言葉って何?」と思われるかもしれないので、一部を紹介してみたいと思う。

○春のことば
「山笑う(やまわらう)」

冬のあいだ、山というのは静かに怖いぐらいになっています。それが春になると、春の山というのはよく見ると白かったり、一部は黄色かったり、あるいは草色がもっと鮮やかな緑色だったり、(中略)暖かくなって山全体が冬の厳しさではなく思わずほころんでいる、全体的に緩くなってしまったようなようす。

○夏のことば
「半夏生(はんげしょう)」

夏至から十一日目にあたる日で、新暦の七月二日ごろになります。「半夏生」という植物は、その時期に花期になるのでその名がついたともいわれています。「この日は毒気が降るからこの日に採った野菜は食べてはいけない」(中略)など、半夏生にまつわるいろいろな戒めがあります。(中略)冷蔵庫のない昔の人にとっては、ものがすべて腐りやすくなってくる憂鬱な時期だったのでしょう。

○秋のことば
「星月夜(ほしづきよ)」

秋の季語にもなっています。「ほしづくよ」ともいったりします。星の明かりが月夜のように明るい夜だということです。星月夜というのは、月が出ていなくて、星明かりしか見えない夜のことをいいます。(中略)月が出ていないときのほうが、満天にちりばめられた星が見えるわけです。

○冬のことば
「嫁が君(よめがきみ)」

昔は、「翳し言葉」というのがあって、忌み言葉のような感じで、お正月の三が日中に言ってはならない言葉があったらしいのです。(中略)ネズミという言葉も翳し言葉の一つです。そのまま口に出すと、その年に火災が起こるとか、ネズミが大発生するとかいわれていました。では、なんと言い換えるかというと、「嫁が君」というのです。

○昔のことば
「だらしない」

なんとなくだらけていて、見ていて見苦しい感じを「だらしない」といいますね。しかし、昔は「しだらない」といったのだそうです。(中略)ところが、江戸時代、ちょっと粋がっていた人たちが「しだらない」をいつのまにか「だらしない」とひっくり返して言ったわけです。(中略)要するに、ふざけた言葉だったのです。

○このごろのことば
「ユニバーサルトイレ」

体の不自由な方やお年寄りの方、あるいは赤ちゃんを連れたお母さんなどに配慮した「ユニバーサルデザイン」という言葉がありますが、それと同じような意味で「ユニバーサルトイレ」というそうです。(中略)私は「誰でもトイレ」という名前を考えたのですが、そのほうがよほどわかりやすいのではないでしょうか。

 「このごろのことば」には、他に「萌え」や「あざーす」などの項目もある。台風の語源が英語の「タイフーン」からきたという説があるなど、堅苦しい日本語の話ばかりでないのが、本書の特徴だ。

 オツな日本語をさらっと使ってみたら、オツな人だと思われること間違いない。ぜひとも本書で「オツな語彙力」を養ってほしいと思う。

文=雨野裾