海でも山でも!意外と身近に存在する危険生物の恐怖

暮らし

公開日:2015/12/2


『世界の危険生物』(今泉忠明:監修/ ニューワイド学研の図鑑)

 危険生物というとまずはライオンやトラなどの猛獣、ワニや蛇などの爬虫類、サソリやタランチュラなど主に海外で生息する生物を想像する人も多いのではないでしょうか? ところが最近では国内でも毒を持つセアカゴケグモや触っただけで火傷をしたような症状を起こしてしまうカエンタケなど身近にある危険な生物が注目されるようになりました。そう、日本にも様々な毒を持つ危険な生物が多数存在しているのです。

 見たこともないような危険な生物から身近に潜む危険な生物までを一挙にまとめた図鑑が『世界の危険生物』(今泉忠明:監修/ ニューワイド学研の図鑑)です。この図鑑では世界にすんでいる代表的な危険生物のくらしや体の特徴について取り上げています。特に注目したいのが普段遭遇する危険のある生物です。

最強の毒を持つ海の危険生物とは!?

 海の危険生物として最も恐れられているのはサメやシャチなどではないでしょうか? 人食いザメとして恐れられるホホジロザメや海のギャングといわれるシャチはまじかで見るとすごい迫力です。一方遭遇率はあまり高くなく、目撃情報はたびたび上がるものの国内でけがをしたという例はあまり多くありません。

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 海のレジャーで最も気を付けなければならない生き物、それはクラゲです。クラゲの中でも日本近海で最も強い毒を持つことで知られているのがハブクラゲと言われており、毒には溶血性があり、刺されるとショック死することもあります。春から夏にかけて日本で見られるカツオノエボシも最強クラスの毒を持ち、海水浴客の被害が出ています。クラゲはイソギンチャクやサンゴと同じ刺胞動物と呼ばれる仲間で触手に刺胞という特殊な細胞を持っています。この刺胞に刺激を受けると毒針が飛び出し他の動物を刺します。怖いのは死んだクラゲでも毒針の効果があることです。打ち上げられたクラゲを見つけても決して触らないようにしましょう。

山や野原で遭遇する危険生物とは?

 山や野原でまず先に気を付けなければならないのは蜂との遭遇です。特にオオスズメバチは民家に巣を作ることもあり危険も知られていますが、本来は木のうろや地中に巣を作るため、巣に近づくと集団で襲い掛かってくる恐れがあります。人が巣に近づくと周囲を旋回しながら大きなあごをカチカチとならして警告してくるので、威嚇行動が見られたらすぐにその場を立ち去りましょう。スズメバチの毒針は人を刺してもちぎれないため何度でも刺してきます。アナフィラキシーショックによる死亡例も多いので一度蜂に刺されたことのある人はより注意が必要です。

世界一有名な毒草! 実は身近な毒のある植物

 世界一有名な毒草と言えばトリカブトです。沖縄以外の全国で見られ食べると死んでしまいます。山菜の一つであるニリンソウと外見がよく似ているため、これほど有名な毒草でも中毒事故が多く発生しています。このほか仏事でよく見られるシキミや景観のためよく植えられているレンゲツツジなども非常に強い毒を持ち、誤って食べると痙攣、呼吸困難などを引き起こし死んでしまう恐れがあります。同じツツジ科のシャクナゲの仲間もすべて有毒で、花や葉にも毒があるので決して口に入れない様に注意してください。植物の毒は食べた時だけでなく汁にかぶれることもあるので、むやみに触れないことが大切です。

プロでも難しい毒キノコの見分け方

 キノコはカビなどと同じ菌類ですが、非常に種類が多く、そのほとんどが毒を持つと言われています。食用にできるものもありますが毎年中毒症状で亡くなる人も多く、素人がキノコ狩りに出かけるのは大変危険です。特に強い毒を持つベニテングタケやドクツルタケなど森の中にあるキノコだけでなく道端に生えるヒトヨタケのようなキノコでも有毒なことが確認されています。最近ではカエンタケが民家の近くで自生しているのが確認され話題になりましたが、触るだけでも皮膚炎を引き起こす可能性があるので、キノコをみかけても決して手に取ったりしないようにしましょう。

身近に潜む危険に向き合う

 主に毒を持つ危険生物を紹介してきましたが、自然界で最も強い天然毒は何かご存じでしょうか? 実は自然界で最も強い毒は食中毒の原因となるボツリヌストキシンAで、食品中で増殖したボツリヌス菌が増殖して出す毒素です。これは生物が作り出す最強の神経毒となります。続いて土中の破傷風菌、毒化した藻類が作り出したマイトトキシンとなります。目に見えない細菌が作り出す毒素が私たちにとって最も危険な毒であるのは驚きですが、気が付かないほど身近に危険は存在するということが実感できました。

 もし危険な生物に遭遇したらどう対処したらよいのか、毒に触れた場合どう処置したらよいのかなど、身近な危険生物について図鑑を広げながら親子で話し合ってみてはいかかでしょうか。

文=朝倉志保