「ええ加減」でええんです! 料理未経験の男がまずは読むべき料理本

食・料理

更新日:2016/1/13


『男のええ加減料理 60歳からの超入門書』 (石蔵文信/講談社)

 最近は若い女性の中にも料理ができないという人が増えてきたようだが、未だに「家庭の料理」と言えば、女性がするものだという意識が強い。ただ、これからの時代たとえ60歳になってからでも、男性は料理ができた方がいい。

 仮に妻に先立たれても、熟年離婚されたとしても、料理は男性にとって第二の人生の生きがいになる。もちろん「定年後時間ができたから料理を覚えたい」というのも決して悪いことではない。夫が料理を覚えたことで、夫婦の会話が増えて、定年退職後の夫婦仲が良くなったというケースだってきっとあるだろう。

 しかし、だからと言って、料理を作るだけ作って後片付けをしない、作りっぱなしで、作った料理が残りすぎてしまうというのは、家庭の料理人失格である。

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 家庭の料理人としての買い物のコツや、片づけ、残り物の処理など料理教室では教えてもらえない家庭料理のイロハを知るためにも『男のええ加減料理 60歳からの超入門書』(石蔵文信/講談社)を読んで、自分と妻の負担にならない楽な料理法を勉強してみてはいかがだろうか。

 本書は高い年齢層向けに文字も大きく印刷されており、たいへん見やすくなっている。年齢層によっては老眼鏡がいるかも知れないが、それでも細かな文字を追わなくていいから料理を作っていてストレスが少なくすむような配慮がされている。

 料理を作ったことがないからこそ分からない、料理ごとによって違う調理器具の選び方や、ゴミの捨て方、効率よく料理をするための、食器を洗うタイミングまでわかりやすく書かれている。この『男のええ加減料理 60歳からの超入門書』は皿を洗ったこともなければ、食材を買ったこともない、本当の意味で1度も料理を作ったことがない人のための、料理本入門書だ。

 また料理を作る夫のためだけでなく、夫が料理を作った後の片づけや、作った料理を処理する妻の苦労を減らす手引書にもなっている。紹介するレシピは原則、1品1人前の食べきりレシピばかり。妻にとっても有り難い、男性がやりがちな「食材の迷惑な買い物の癖」を直す手引もきちんと書かれているだけでなく、本書では「男のええ加減料理の決まり事」として「妻に振る舞わない」とも書いてあるので、妻の“夫の料理の負担”を減らすマニュアルとしての側面も持ち合わせている。

 そして、特に面白いのは、本のタイトルどおり「ええ加減」でもおいしく料理が作れるレシピが数多く紹介されているところだ。

 私も、本書の中で紹介されていた「簡単すぎる和風シューマイ煮込み」や「欲張り麻婆なす豆腐」を作ってみたのだが、これらの男の食欲を満たすメニューが土鍋だけで作ることができたのは、とても感動した。

 しかも、冷凍食品を使い、味付けに市販の鍋の素などを活用することもあって、あれこれ調味料を足す必要がない。一番不安な味付けも「ええ加減」でどうにかなってしまうので安心できる。

 実際、自分で料理を作って食べたら、どちらも文句なしに美味かった!

 さらに調理時間も短く、野菜の下ごしらえから実際に食べ始めるまでの時間は、30分程度と台所を使う時間も短時間で済み、光熱費もガスを使う時間が最小限だから経済面でも大いに役立つ。「60歳から」と銘打っているものも、60歳未満の普段コンビニ弁当ばかりのサラリーマンや学生にも重宝されること間違いなしだ。

 和風、中華風、洋風に肉や魚、冷凍食品などをうまく使ったレシピに、しっかりと野菜をおいしく食べる配慮もされており、「男のための料理」のくせに栄養バランスもバッチリだ。何かと偏りがちな男の食生活も、この本を見ながら料理をすれば改善されることになるだろう。

 それに最近流行りの燻製の作り方や、土鍋で作る「ど根性カステラ」と男向けのスイーツレシピも少しではあるが紹介されているので、ええ加減料理になれて、もっと本格的な料理に挑戦したくなった方の要望にも応える内容になっている。

 これまで料理を作ったことがない男性は、ぜひ『男のええ加減料理 60歳からの超入門書』で、ええ加減でできる料理を覚えて、自分の妻を楽にさせてみてはどうだろう。

文=山本浩輔