先祖を知りたい! 家系図の作り方を学ぼう

暮らし

公開日:2015/12/14


『江戸時代の先祖と出会う 自分でつくれる 200年家系図』(橋本雅幸/旬報社)

 核家族化や少子化の影響で、家族の絆が希薄になっている、という意見がある。大勢の親戚で集ったり、先祖のことを話して偲んだりする機会が減り、家系に対する意識が乏しくなってきている、というのだ。親戚関係に疎かったり、曽祖父母の名前を知らなかったりする、という人は少なくないのかもしれない。そんな背景もあってか、数年前から「家系図づくりブーム」が静かに続いている。著名人の家族の歴史をひもとくNHKのドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』も人気だ。

 さて、家系図をつくるなら「専門家に依頼する」という手段がまず思い浮かびそうだが、それなりの手間ひまはかかるものの、やり方さえわかれば個人でもできてしまう。自分ですこしずつ家系図を書き足していく過程も、それはそれで楽しそうだ。『江戸時代の先祖と出会う 自分でつくれる 200年家系図』(橋本雅幸/旬報社)は、戸籍を取り寄せて家系をたどる方法を勧めている。家系図づくりのオーソドックスな方法ながら、これで200年前の江戸時代を生きた先祖までたどれる可能性があるという。

 家系のたどり方のポイントを要約すると、次のようになる。

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【家系のたどり方のポイント】

(1)自分自身の戸籍を出生までさかのぼる

 まずは自分自身の本籍地がある役所に請求して、出生までさかのぼる戸籍謄本(こせきとうほん)を取り寄せる(戸籍の一部の人のみが記載された「戸籍抄本(こせきしょうほん)」ではなく、戸籍の全員が記載された「戸籍謄本」)。窓口に出向き、現地に用意してある「所定の申請書」、「本人確認書類(運転免許証や健康保険証)」「取得費用(現戸籍は450円、除籍・改製原戸籍は750円…書類の違いは後述)」を提出すれば、ほとんどの場合は即日入手できる。本籍地が市外・県外など遠方の場合は、郵送で申請すればよい。およそ1~2週間で届く。

(2)「すべて」の戸籍を入手する

 ここで大切なのは、現在有効な「現戸籍」だけでなく、「除籍」や「改製原戸籍」ももれなく入手すること。戸籍は、婚姻、死亡、転籍などで戸籍に入っていた人がすべていなくなり効力を失うと「除籍」になる。また、戸籍法の改正で戸籍が新しく作り替えられ、効力を失うと「改製原戸籍」になる。とくに改製原戸籍は、本人が知らないうちに勝手に作成されている場合があるため、注意が必要だ。

 家系図づくりは、このような戸籍をすべて集めることが重要となる。なぜなら、前の戸籍で死亡や転籍となった人物は新しい戸籍には名前が記載されず、家族構成の変化を見逃してしまう恐れがあるからだ。現在見ている戸籍には名前がなくても、ひとつ前の戸籍には知らない親族が載っている可能性があるのだ。

 転居を繰り返すなどで本籍地が何度も変わっている人にとっては大変な作業だが、すべての戸籍を揃えるのは家系図づくりのベースであり、最も大切な部分だと本書は強調している。

(3)親の系統をたどる

 自分の出生までさかのぼる戸籍は、同時に、両親の婚姻後の戸籍となる。この戸籍には、両親の本籍地が記載されている。父方の系統をたどる人は父の本籍地へ、母方の系統をたどる人は母の本籍地へ、前述(1)と同様に、「婚姻前のもので、出生までさかのぼる」戸籍を申請する。

 当然のことながら、本人のものでない戸籍は、第三者は容易に入手できない。家系図作成目的で取得できるのは、自分の直系のみの戸籍だ。

 婚姻、改正、転籍、分家、家督相続などによる「除籍」「改製原戸籍」もすべて入手し、親の出生までたどると、その戸籍は同時に祖父母の婚姻後の戸籍となり、次に申請すべき本籍地が明らかになる。この手順を繰り返して、先祖をさかのぼっていく。

(4)市町村合併がされていたら?

 平成の大合併をはじめ、過去には全国各地で市町村合併が数多く起こった。とくに祖父母の代以降の戸籍では、今では存在しない自治体名を見かけることがあるかもしれない。しかし、インターネット百科事典「ウィキペディア」などで検索し、その役所があったと思われる都道府県内の近隣役所に問い合わせると、基本的に解決できそうだ。

 本書によれば、このようにして戸籍をよりどころとして一代ずつさかのぼることで、江戸時代の先祖と出会える「かもしれない」。というのも、平成22年以降は法律改正で戸籍の保存期間が150年に延びたが、それまでは保存義務が「除籍後80年」だったからだ。ただ、戸籍の廃棄はそれぞれの役所の判断に任せていたため、保管されている可能性があるという。

 戸籍集めが終われば、家系図の書き方などテクニカルな部分がポイントになるが、それは本書にたよってほしい。

 本書は、戸籍を「先祖までさかのぼれる“旅の切符”」にたとえ、「自分のルーツを確実に知る手段」だとしている。従来は、歳をとって自分自身を見つめ直したい人が自分のために始めることが多かった家系図づくりだが、近年は「家宝にする」「孝行として親にプレゼントする」「子どもにルーツを教えるために使う」など、さまざまな利用価値が見出されてきているようだ。家系図づくりは根気がいる作業ではあるが、興味のある人は始めてみてはいかがだろうか。

文=ルートつつみ