子どもの頭をよくするために知っておくべき「認知特性」とは

出産・子育て

公開日:2015/12/16


『タイプ別「頭がよい子」になるヒント』(本田真美、木下 勝/自由国民社)

 小テスト直前で教科書を暗記するとき、人によってやりやすい方法が違うと思う。ひたすら教科書を書き写すという人もいれば、ページをじっと見る、何度も黙読する、音読するなど、さまざまありそうだ。

 『タイプ別「頭がよい子」になるヒント』(本田真美、木下 勝/自由国民社)によると、この違いには「認知特性」が関係しているという。本書によると、「認知特性」とは「見たこと、読んだことなどを頭の中で理解したり、整理したり、記憶したり、表現したりする方法」のことで、タイプによって方法の得意・不得意がわかれる。前述の「暗記のしかた」だけでなく、勉強全般に関わってくる。本書は「評判の学習塾だからと我が子を通わせてみても、成績が上がるどころか、むしろ勉強が嫌いになってしまった」という例を挙げ、「隣の子どもにはとてもわかりやすい教え方でも、我が子には向かない」という現象が認知特性の違いで説明できる、としている。

 本書によると、子どもの認知特性は3つのタイプにわけられる。タイプ別に10ずつ、計30の質問項目が用意されており、認知特性の傾向をチェックできる(質問内容は3歳時点が目安となっている)。

advertisement

【子どもの認知特性】

●視覚優位者(見る力が強い)
□人見知りが強い
□絵本や図鑑を眺めるのが好き
□モノの位置や場所にこだわる

などの質問項目にチェックが多く入る場合。
→見た情報を処理するのが得意

●言語優位者(言葉の力が強い)
□「あれ、何?」「これ、何?」と質問攻めにする
□理論的な説明を理解できる
□想像や空想遊び、物語をつくるのが得意

などの質問項目にチェックが多く入る場合。
→読んだ情報を処理するのが得意

●聴覚優位者(聞く力が強い)
□ひとり言を言う
□歌を歌うことが好き
□擬音語、擬態語をよく使う

などの質問項目にチェックが多く入る場合。
→聞いた情報を処理するのが得意

 本書によれば、認知特性はオーバーラップしている部分があり、「絶対にこのタイプ」と線引きできるものではないし、状況に応じて特性を使い分ける子どももいる。とはいえ、我が子の認知特性を知ることで、親が子どものためにしてやれるサポートの方向付けに役立ちそうだ。

 本書は、学校での授業は「耳で聞いて、言葉で考える」という聴覚優位の子どもに有利な方法がとられており、さらに教育者の多くが言語優位者で自分自身が理解しやすい言語優位の指導をするため、視覚優位の子どもが「成績の悪い子」になってしまう可能性が高い、と指摘する。そこで、もし我が子が視覚優位者なら、家庭では社会科の地図をイラスト化して教えてやる、理科では図や写真が多い参考書を用意してやる、など「視覚を手がかりとしたサポートがよさそうだ」と考えられる。

 親子のコミュニケーションも、認知特性を知ることで、よりよいものに変えられるという。コミュニケーションは双方向性をもっているので、親も自身の認知特性を把握する必要がある。本書では、40の質問項目で、次の6タイプのどの傾向が強いかがチェックできる。

【親の認知特性】

(1)カメラタイプ
→視覚優位者。そのときどきを写真のように記憶に残せるため、3歳以前の思い出をもっている(多くの人は4~6歳のときがもっとも古い記憶)。

(2)3Dタイプ
→視覚優位者。カメラタイプと異なるのは「動画として物事を記憶する」という点。ある場面の出来事だけでなく、奥行きや前後関係のエピソードも記憶している。

(3)ファンタジータイプ
→言語優位者。言語を映像化したり、逆に映像を言語化したりすることが得意。歴史の本を読むと、城や戦いの場面などビジュアル要素を思い浮かべる。

(4)辞書タイプ
→言語優位者。言葉に文字や数字、図を系統立てて結びつけるのがうまく、わかりづらい文章を図式化することができる。ノートをきれいにまとめるのが得意。

(5)ラジオタイプ
→聴覚優位者。音声という聴覚情報のみで言語を理解できる。相手が話している音だけで内容を理解し、イメージより言語そのもので思考を働かせる。

(6)サウンドタイプ
→聴覚優位者。ラジオタイプと異なるのは、音階や音色といった言語的な意味をもたない情報も、イメージとして脳内で処理できること。絶対音感があるタイプ。

 子どもと親の認知特性が一致している場合は、たとえば親自身が伝えやすい視覚的な伝達方法が子どもにとっても理解しやすいなどコミュニケーションが円滑にいくが、一致していない場合はちょっとした工夫を考えるとよさそうだ。

子どもと認知特性が一致しない場合の親の工夫

視覚優位者と言語優位者
→視覚優位者は感覚的思考が優先され、言語優位者は論理的思考が優先される。「言語」は誰もがもっているツールのため手っ取り早く使われがちだが、視覚優位者にとっては不利な場合がある。子どもが視覚優位者なら「◯◯のテレビのあのイメージ」「芸能人だと◯◯みたいな人」など、たとえを挙げつつ話す。親が視覚優位者なら、親自身の説明が足りない場合があるので、必要なときは絵メモなど具体的なイメージを補いつつ話すようにする。

言語優位者と聴覚優位者
→言語を用いるという点では共通しており、比較的相性がよいが、聴覚優位者は耳で聞く言語の処理スピードが速く、音の記憶もよい場合が多いため、話すスピードに注意する。親が聴覚優位者なら、子どもがきちんと理解しているかをうかがいながら、話の間にも注意を払いつつ話すスピードを調整する。親が言語優位者なら、子どもが興奮して話をしているときなどは、いったん落ち着かせてから、話を聞くようにする。

聴覚優位者と視覚優位者
→対極的な特性だが、情報処理のスピードが速いという共通点があるので、コミュニケーションツールに気を払う。子どもが視覚優位者なら、言葉だけでなく絵や画像、写真などビジュアル的な手段も用いる。親が視覚優位者なら、子どもの音処理の速さを理解し、短くても適切な表現を選別して話す。

 本書によれば、「性格の不一致」という夫婦の離婚原因にも、認知特性の違いが影響している場合があるという。大人同士であれば双方の歩み寄りも考えられるが、精神が熟していない子どもが相手なら、親の意識や工夫が認知特性の差異を乗り越えるために重要となってくる。「会話がかみ合わない」「思いや指示が伝わらない」といった悩みが、認知特性の理解で解決するかもしれない。

文=ルートつつみ