「羊を数える」のはやっぱり効果的 寝付きを良くする方法とは

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更新日:2016/3/14


『よく眠るための科学が教える10の秘密』(リチャード・ワイズマン:著、木村博江:訳/文藝春秋)

 「最近よく眠れていますか?」。こう聞かれて、自信を持ってイエスと答えられる人は、どのくらいいるだろうか。疲れている時こそ熟睡したいのに、なかなか寝付けないという人もいるだろう。しかし、私たちが生きていくうえで、「眠る」という行為は欠かせない。きちんと眠ることで、記憶力がアップしたり、ダイエットにつながったりと、様々な効果も指摘されている。

 これほど重要な睡眠だからこそ、問題を抱える人も少なくない。問題の大きさに差はあっても、睡眠不足が仕事や私生活に影響を与えていると感じる人も多いだろう。そこで、睡眠を科学的に分析し、よく眠るためのノウハウを教えてくれるのが『よく眠るための科学が教える10の秘密』(リチャード・ワイズマン:著、木村博江:訳/文藝春秋)だ。

 インターネットが世界中に普及し、24時間ひっきりなしに情報が入って来る現代。仕事量も増える一方で、睡眠にかける時間がもったいないと感じている人もいるかもしれない。しかし、著者によると、過去の実験から、短時間の睡眠で活発に過ごせる人は突然変異遺伝子を持っていることが示唆されているとのこと。つまり、子ども時代から短時間睡眠の傾向が見られ、家族にも同じような人がいる場合を除き、大半の人は一定の睡眠時間が必要なのだ。

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 では、どうすれば熟睡できるのだろうか。本書では、睡眠に適した環境の確保、昼間の過ごし方、ベッドに入る前の過ごし方、眠りに落ちる方法、夜中に目が覚めた時の対処法について、具体的な項目を挙げて説明している。ここでは、眠りに落ちる方法を紹介したいと思う。

 眠るための環境が整いベッドに入った後で、せっかくなら即座に眠りに落ちたいものだが、なかなか寝付けないこともあるだろう。そんな時、子どもの頃に羊を数えるように言われたことがあるが、これは科学的にも眠りを誘う効果が実証されているそう。さらに、楽しいことを考えるのも効果的だ。不安に思っていることがあっても、あえて楽しい空想をしてみよう。それでダメなら、眠くなくてもアクビをしてみる。そうすることで、体が寝る時間だと理解するのだ。

 それでもまだ、眠れない時には、逆転の発想で対処できるかもしれない。実験からも、眠ろうとしない人の方が、むしろ早く眠りにつくことが実証されている。「眠くないのだから、起きていればいい!」と開き直ったら、意外とすぐに眠りに落ちてしまうこともあるだろう。翌朝、早起きをしなくてはいけない時や、仕事が詰まっている時には、眠れないことで不安になるかもしれないが、とにかくリラックスするよう心がけることが大切なようだ。

 しかし、せっかく眠りに落ちても、悪夢を見て目を覚まし、疲労感が残ってしまっては意味がない。そこで本書では、楽しい夢を見たり悪夢を追い払ったりする方法も詳しく紹介されている。実際、寝ている間に見る夢にセラピー効果があることは実証済み。見た夢を信じて行動した結果、大きな成功につながった人もいる。

 他にも、自分の睡眠をチェックするテストや、自分が必要とする睡眠時間を把握する方法なども試すことができる。さらに、夢分析や睡眠学習、巻末には著者が友人と作成した、眠りの科学に基づく読み聞かせ用の物語もあるので、眠れなくて困った時には、ぜひ手にとってみてほしい。

文=松澤友子