フランス人が狂喜! 外務省後援の賞にもノミネート! 異形のhentaiマンガ『絶望の犯島』が世界に羽ばたく日は近い!?

マンガ

公開日:2015/12/18


『絶望の犯島』(櫻井稔文/双葉社)

 巨乳ギャルへと性転換手術された男性が、絶海の孤島へ投げ出され、性犯罪歴のある100人の変態男と“殺るかヤラれるか”の戦いを繰り広げる……。

 という設定の時点で正気の沙汰ではないマンガ『絶望の犯島』(櫻井稔文/双葉社)。そんな作品が、フランスAmazonの「Hentai」カテゴリーで1位を獲得してしまったというから驚きだ。

 だが、この作品が海外でも高く評価されていることには大いに納得できる面もある。というのも本作には、日本のアンダーグラウンド的、カルト的なカルチャーの要素と、その狂気・興奮が「これでもか!」というほど凝縮されているからだ。

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 まず「女性1人VS100人の変態男」という設定は、ポケモン以上、宮崎駿以上に世界で評価されている「ジャパニーズAV」の企画モノを真っ先に連想させる。第一話冒頭の見開きなどは、上原亜衣ちゃんの『100人×中出し』のパッケージにソックリだ。それもそのはず、どうやら『絶望の犯島』にインスパイアされて制作されたらしいのだ。

(c)櫻井稔文/双葉社

 そしてロリコン、NTR…(以下、文字にするだけでアレなので自粛)といった男達の持つ多彩な性癖は、日本のAVのジャンルをそのままキャラクターに純化したものとも言える。だからこそ、一人ひとりのキャラクターが、それぞれ個性的に狂っているのだ!

 そして作中では、登場人物たちが性犯罪者となるに至ったエピソードも随所に挿入されるのだが、そこには可笑しさもあり、悲しさもあり、圧倒的なリアリティもある。それは、著者が『漫画実話ナックルズ』などの取材で現代ニッポン土着の狂気を体感し、『ニッポン縦断仰天フーゾク』なんていう作品まで描いてきた人物だからだろう。

(c)櫻井稔文/双葉社

 また日本のヤバい映画、ヤバい事件へのオマージュも随所に感じられる。まず孤島での殺し合いは『バトル・ロワイアル』的であるし、一人の女性をめぐって男達が殺しあう……といえば、日本には「アナタハンの女王事件」という壮絶な出来事があった。そして第1話のタイトルをひっくり返した映画『復讐するは我にあり』からも、本作は“人間の原罪”“代替行為としての復讐”といったテーマを受け継いでいるように見える。カルト映画の金字塔『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』を思わせる感動のシーンもあるし、ウギャァーーーー!と叫びたくなるようなヤクザ映画的な拷問・殺戮シーンもある……。

 とにかく全5巻のすべてのエピソードがアツく、すべてが狂っているのだ。盗撮で逮捕された変態教師にSEX教団、さらにはなぜか佐村○内氏のソックリキャラまで登場する本作は、まさに“どこに出しても恥ずかしいニッポン”が詰まったマンガであり、現代日本のすべての恥部を曝け出したマンガなのである。対岸の恥部、他人の恥部の話なので、そりゃフランス人が大喜びして読むのも当然なのだ!

 ちなみに本作は、「SUGOI JAPAN Award2016」のマンガ部門の候補にまでノミネートされてしまった。この賞には外務省と経済産業省が後援として名を連ねているのだが、色んな圧力でもみ消されたりしないか心配なので、今後もその行方を見守っていきたい。

文=古澤誠一郎

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