40代女性、今“がん”になったらすべきことのすべて ―自分らしい闘病生活のすすめ

健康

更新日:2016/3/14


『働く女性のためのがん入院・治療生活便利帳 40代、働き盛りでがんになった私が言えること』(岩井ますみ/講談社)

 30代40代の女性は出産・子育て・仕事と、家庭でも職場でも責任が重くのしかかる世代です。若いころに比べて体力の衰えを感じてきたり、高齢になってきた両親の介護の問題が浮上してきたりと頭の痛い問題も山積みです。私がいなければ、しっかりしなければ。そんな時に突然のがん宣告を受けてしまったら…。

 『働く女性のためのがん入院・治療生活便利帳 40代、働き盛りでがんになった私が言えること』(講談社)の著者である岩井ますみさんもそのような女性の1人です。

 独身かつフリーランスで仕事をしている著者は、個人事業主として1人で仕事を切り盛りしつつ自宅で高齢の両親を介護していました。彼女が医師から告知されたのは女性のがん死亡率1位でもある大腸がん。3人姉妹の末っ子であり、家族の中で一番若い自分が突然がんという病にかかったことをどう家族に伝えればいいのか…。様々な情報が乱立する中、がんという病とどう付き合うべきなのか。そのような筆者の実際の体験や実感をもとに書かれた手記は、女性として闘病生活を送ることの思いがけない大変さや、見落としがちな心配りにはっとさせられます。

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 がんは今やすぐに死に至る不治の病ではなく、手術や治療を受けながら定期的な受診を必要とする持病のようなものと考えるのがふさわしい時代になっています。特に40代50代で発症した場合、闘病生活が長くなることも考えられます。女性であっても責任ある仕事を任されたり、家計を助けるために働いていたりする方が多い中で、入院中・治療中にかかる治療費や働けない間の生活費は切実です。一般の入院保険に加入していたとしても、長く続く闘病生活での資金面の不安は少しでも解決しておきたいですよね。

 筆者が最初にすすめているのが国民健康保険の限度額認定証の手続きをすることです。意外と知られていませんが、入院の前にこの手続きを済ませ、認定証を医療機関の窓口に提示することで支払額が自己負担の限度額内に収められます。国民健康保険以外の保険に加入している場合でもそれぞれの勤務先の担当者に相談すれば手続きが可能です。これにより窓口での支払いを減額できることは大きなメリットになります。

 入院中での過ごし方も女性ならではの提案がされています。明るい気分で過ごせるパジャマの選び方、具合の悪い時でも気軽に気分を変えられるティーバッグのお茶など、できるだけ明るく前向きになれるような入院グッズの選び方はとても参考になります。短期間の入院であっても、できるだけ負担なく落ち着いた状態で病気と向き合う時間は、今後の人生の過ごし方を考える時間でもあります。今まで通りの生活は無理かもしれない。でも、できることは沢山ある。工夫次第で明るく過ごすことができる。

 こうしたアイデアの数々は悲観して暗くなっている女性だけでなく、夫や家族が見てもとても参考になると思います。患者さんへの接し方や声のかけ方なども綴られており、「大丈夫?」の一言が実は負担に感じていたり、甘えすぎてしまった時の叱咤を嬉しく感じたりと不安定な気持ちの中での人との付き合い方にも考えさせられます。入院中はお見舞いの定番とされる花やお菓子が実は困ってしまう品物であることや、気分が悪くなってもなかなか帰ってほしいとは言い出しにくいという意見もお見舞いに行く際の参考になりますね。

 がんだけでなく誰もが病や事故である日突然これまで通りの日常が過ごせなくなることがあると思います。そんな時、誰よりも自分の体を自分自身でいたわってほしい。「無理はしない、でも明るく前向きに過ごす」そのためにできることから少しずつ変えていくことの大切さも詰まった一冊です。

文=朝倉志保