カップ麺の調理時間はなぜ3分? 誰かに教えたくなる驚きの仕組み

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『思わず人に話したくなるモノの仕組みふしぎ雑学』(中村智彦:監修/永岡書店)

私たちの身の回りには、生活を便利にしてくれるさまざまな仕組みがある。家電や乗り物のように形のあるものもあれば、何かをするときの方法のように目に見えないものもある。いずれの仕組みも、最初は誰かの頭の中にある「アイディア」にすぎなかった。それが製品になったり、法則になったりして多くの人たちが共有するモノの仕組みなっている。それなら、その発想のきっかけやヒントになったものは何だったのだろうか? そこで、今回は『思わず人に話したくなるモノの仕組みふしぎ雑学』(中村智彦:監修/永岡書店)という本を紹介することにした。会話のネタになるのはもちろん、すごい技術を生み出した人たちを尊敬のまなざしで見たくなる本だ。

町工場が生み出した技術が世界を変える!

「仕組み」というと、専門のエンジニアが難しい数式を計算し、コンピューターと向き合いながら生み出す何だかとても難しいものというイメージかもしれない。しかし、新しい仕組みが生み出されるきっかけやヒントは、意外にも私たちの身の回りにころがっているものらしい。

世界的に通用する「モノ」や「コト」の仕組みの多くを、実は日本の企業や日本のエンジニアたちが作り出していたということがこの本を読んでいくとよくわかる。しかも、世界に名をとどろかせるような大企業ばかりではなく、小さな町工場や中小企業からも世界に通用する仕組みが生まれているのだ。そのことを知ると、なぜか自分のことではないのに誇らしく感じてしまう。

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当たり前の中に詰まった不思議が見える!

どの仕組みにも誕生の裏には人による発想があった。動植物や自然現象を観察していて偶然利用できることがわかったものもあれば、何らかの問題解決のために使える方法はないかと手当たり次第に当たっていて見つかったものもある。中には本来他のものに使おうとしていた技術が意外なところで役立ったというケースもある。いつも当たり前だと思って使っていたものやシステムには、想像以上に不思議が詰まっていたのだ。

例えば、昔と比べて最近の注射は痛くなくなったと感じている人はいないだろうか。実は、蚊の針の構造をまねて開発された注射針が使われていることに関係がある。他にもハスの葉の構造を応用してはっ水素材が作られていることや、船底にくっつくフジツボの強力な接着力を人工合成できれば歯科治療が格段に進歩することなどがわかると、ついうんちくとして誰かに語りたくなってしまうのではないだろうか。

身近な物事の仕組みについてわかるからこそおもしろい!

仕組みというと、ものを動かすシステムやそのものの構造を思い浮かべがちだが、さまざまな決まり事をなぜそのように決めたかという点もある種の仕組みと言える。

例えば、カップ麺の多くがなぜ熱湯を入れて3分なのかご存じだろうか? 本当は1分で食べられるインスタント麺も作れるのに敢えて作らないのには理由がある。1分で食べられる麺は、それだけ早く柔らかくなるわけだから、食べる先からどんどん伸びてしまうのだ。食べ始めてすぐに伸びてしまってはおいしくない。逆に伸びないように作ろうと思ったら、なかなかお湯で戻らない麺を作るのが一番だが、そうなると今度はでき上がるまでの時間がかかりすぎて待ちくたびれてしまう。そこで食べるのにも待つのにもベストなタイムが選ばれ、ウルトラマンが食べることのできない3分に決まったというわけだ。

その他、地下鉄の出口番号に法則性があることや、新幹線の出発時間は0秒ではなく、15秒や30秒という15秒刻みのずれをわざと設定しているということは本著を読んで初めて知った。そして、家族に「知ってた?」と直後に語ってしまった。このような知っているようで知らない決まり事の秘密もこの本の中にはたくさん紹介されている。そのため、そういった方法や法則も仕組みの1つなのだと再認識させられる。

本にどれだけ詳しい図面入りで仕組みが載っていても、いくらスゴイ最先端技術が使われていることを知っても、普段の生活で使わないものや縁もゆかりもないようなものに利用されている場合は話題にしにくい。そのものの説明から始めなければならないからだ。しかし、この本に載っている「モノ」はかなり身近な道具や誰もがよく知っている法則ばかりだ。そのため、休憩時間の軽いおしゃべりや、ビジネストークの本題に入る前の話題に利用しやすい。1つの仕組みについては1~2ページほどとコンパクトにまとめられているので、通勤時間にでも読んでみてはいかがだろうか。

文=大石みずき