オムツ風俗の面接、弟の包茎手術… やっぱりゲスい! まんしゅうきつこの『まんしゅう家の憂鬱』

マンガ

更新日:2016/3/14


『まんしゅう家の憂鬱』(まんしゅうきつこ/集英社)
『まんしゅう家の憂鬱』(まんしゅうきつこ/集英社)

 漫画家・イラストレーターのまんしゅうきつこの大人気ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど
」がついに書籍化。昨年12月に『まんしゅう家の憂鬱』(まんしゅうきつこ/集英社)が発売された。ブログ漫画に加え、『小説すばる』連載のエッセイも収録。きつこと、その家族に起こった様々なゲスな話を詰め込んだ一冊だ。そもそも、この、“まんしゅうきつこ”というペンネームからすでにどうかしている(笑)。実際に本を読んでみると、とんでもない精神を抱えた人物であることがわかる。

 本書はまず、「オムツ倶楽部の面接」という話からスタートする。今から10年以上前、きつこはテレビで「オムツ倶楽部」の存在を知る。オムツ倶楽部とは、大人の男性を赤ちゃんのようにあやしながら、オムツを変えてあげるという風俗店。どういうわけか「できるかも」と思ったきつこは、面接のため単身オムツ倶楽部へと乗り込む。

…こんなテンションの話が17編収録されている。オムツ倶楽部に関しては、なぜ唐突に「できるかも」と思ったのかは謎だが、ごく自然に、ナチュラルに、なんのためらいもなく未知なる世界へ挑戦していくのがまんしゅうきつこの魅力なのだ。

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 筆者のお気に入りは、きつこの弟が登場するエピソード。特に「包茎手術その1」は死ぬほど笑った。包茎手術をした弟が、ある日股間を真っ赤に染めて帰ってくる。悲惨なその様子を、淡々とした漫画でシュールに描いた傑作だ。また、「包茎手術その2」では、そんな弟と父との決闘の様子が描かれている。反抗期を迎えた息子に、鉄拳制裁を加えるため父が決闘を申し込む。深夜の公園で不良たちと乱闘する父の様子は、笑いすぎて涙が出た。

 恋人のDVから逃れるきつこの奮闘を描いた「ピンチはチャンス」も非常にオススメだ。恋人と縁を切ろうと画策したきつこは、変装して大学に通うことを決めた。ザンバラに髪を切り落とし、遠視用のメガネをかけ、さらには頭のおかしなフリをして徹底的に恋人を遠ざける。そんな奇行を続けた結果、恋人はもちろん、友人、家族にまで距離を置かれるのだが、きつこの“徹底的にやる”というスタンスがバカバカしくて涙が出てくる(笑い泣き)。

 そのほか、キャバ嬢のアミちゃんや、25歳処女の中山さんなど、個性の強すぎる友人たちのエピソードも満載。読後、面白かったと思いつつ、「こんな愉快な日常を送っている人もいるんだなぁ」とちょっとだけうらやましくなる。でもすぐに、やっぱりオムツ倶楽部では働きたくないかな…と思う。そんな一冊。

文=中村未来(清談社)