子供には悪いがそれでも離婚したい、というあなたへ―子連れ離婚を決意したとき、何を考え、何をするべきなのか

恋愛・結婚

更新日:2021/1/26


『子連れ離婚を考えたときに読む本』(新川てるえ/日本実業出版社)

 厚労省が出している人口動態統計によると2014年における国内の離婚件数は約22万件強、そのうち20歳未満の子がいる離婚件数は約13万件にのぼります(参考:e-Stat上の人口動態統計)。

 離婚は子どもに大きな悪影響を及ぼすことが知られていますが、それでも「離婚」という決断を下すにいたったとき、なにをするべきなのか。「お金」と「子どものケア」を中心に、離婚にまつわる基礎知識を見てみましょう。

まずは前提、「離婚できる理由」とは

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 離婚は双方の合意のもとに行なわれるものです。したがって、合意さえしていれば「性格の不一致」でも「生活上のすれ違い」でも、どんな理由であっても離婚ができます。しかし、片方が合意していない場合は、その限りではありません。

 相手が合意していない場合、話し合いや調停、裁判といった手法をとることになります。裁判で離婚が認められるためには、主に次のような理由が求められます。

1、配偶者が不貞行為(浮気)をした場合
2、配偶者に悪意をもって遺棄された場合
3、配偶者の生死が3年以上不明の場合
4、配偶者が強度の精神病で、回復する見込みがない場合
5、その他、重大な事由がある場合
『子連れ離婚を考えたときに読む本』p.44-45より

 いくつかの項目について簡単に補足すると、(1)の浮気とは性的関係を伴う浮気をさします。裁判になると写真や音声といった証拠が必要になりますが、相手が深く反省しており関係修復の可能性がある場合は、離婚が認められないこともあります。

 (2)の遺棄とは、たとえば残された側が生活に困るのを知りながら、勝手に家を出て行ってしまった場合などです。「配偶者によるDV(ドメスティックバイオレンス)を避けるため、自分から子どもをつれて別居する」といった場合はこれに該当しません。

 (4)については医師の診断が必要です。また、離婚後に誰が面倒を見ていくのかなどを明らかにしておくことが条件になります。

「お金」に関する話し合いはどうする?

 それでは次に、お金についてみていきましょう。離婚協議をする際の大きく取り沙汰されるのは、「月々の生活費・養育費」「慰謝料」「財産分与」が主なものになります。

◆月々の生活費・養育費となる婚姻費用

 本来、夫婦ではお互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」というものがあり、離婚前に別居を行なった場合は、主な稼ぎがある者が「婚姻費用」として、いわゆる生活費・養育費などを支払わなければなりません(民法760条)。

 離婚の手続きと同様、婚姻費用は夫婦間の話し合いで決めるものであり、まとまらなかったら裁判所で調停が行なわれます。ただし、自分の年収が0、相手の年収が400万だからといって「半分の200万もらえる!」となるわけではありません。

 裁判所では「養育費・婚姻費用算定表」という、婚姻費用の義務者(払う側)・権利者(もらう側)の年収に応じて払うべき金額を定めた表を公開しています。婚姻費用はこの表から算出された範囲内で話し合うことになり、子どもの人数と年齢によって複数ある表の中からどれを参考にするかが決まります。

◆慰謝料

 芸能人の離婚話では、必ず話題に上る高額の慰謝料。よく「男性タレント側が女性タレントに○千万円支払った」などと報じられたりしていますが、これは「必ず妻がもらえるもの」というわけではありません。

 慰謝料とは「離婚原因を作った側が相手に賠償金として支払う」ものなので、離婚原因がはっきりしない場合は慰謝料は生じません。また、離婚原因が妻側にある場合は、妻から夫への支払いになる場合もあります。

 金額についても、協議離婚であればどんな高額であってもそれで決定しますが、調停や裁判では第三者の判断が関わってきます。根拠がなく、相手の支払い能力におよばないような金額は当然却下されますが、逆に安く見積もりすぎるのも損な話です。弁護士や司法書士、家裁の相談窓口などを利用し、専門家の意見を聞きながら決めるのがよいでしょう。

 なお、離婚後でも3年以内であれば慰謝料を請求することができますので、覚えておきましょう。

◆財産分与

 財産分与とは、夫婦が協力して気づいた財産を分け合うことで、場合によっては婚姻費用は慰謝料を財産分与に含めることもあります(余談ながら、芸能人の慰謝料がとんでもなく高額なのも、こうした財産分与の額が含まれていることがほとんどのためです)。

 対象となる財産は、預貯金や不動産、家財道具などです。主な稼ぎ手や名義が夫(もしくは妻)であったとしても、お互いの協力あっての財産なので分与対象となるほか、年金などもその対象になります。ただし、これはプラスのものだけに限りません。遺産相続などでも同じことがいえるのですが、ローンや負債なども分与の対象になりますので、その点は注意しましょう。

 また、結婚前からお互いが持っていた預貯金や親からもらった財産、日常的に使っているもの、結婚中であっても一方が勝手に作った借金は分与対象になりません。

 加えて、離婚後に経済的に苦しくなる場合は、離婚原因を作った側も財産分与を請求することができ、この点は慰謝料と異なります。また、離婚後でも財産分与の請求はできますが、2年以内という期限が付いています。

子どもへのケアはどうする?

 冒頭でも述べたように、離婚件数22万件のうち未成年者のいる世帯の離婚件数は13万件と半数を超えています。親の離婚が子どもの発達に与える影響について、国内外でさまざまな研究が行なわれていますが、総じて悪影響を及ぼすと言う結果がでています。

 では、子どもへのケアはどうしたらいいのでしょうか? 『子連れ離婚を考えたときに読む本』(新川てるえ/日本実業出版社)をもとに、その解決法やヒントを見てみましょう(なお、同書では母親向けに書かれていますが、ここでは両性向けとなるように編集しています)。

◆「何でウチにはパパ(ママ)がいないの? どうして離婚したの?」と聞かれたとき(p.193より)

 子どもに離婚や父親(母親)の不在を伝えるとき、大切なのは伝え方や話の内容ではなく、伝えるときの気持ちです。何かを伝えるとき、関係の近い人には意味よりも感情の方が大きく伝わり、遠い関係では逆になります。たとえば、夫婦喧嘩のとき、相手が言っている内容よりも感情のほうが伝わってくる、と感じたことがありませんか?

 親子は夫婦同様に近い関係なので、言葉の意味よりもそのときの感情のほうがストレートに伝わります。質問に躊躇してしまい「離婚は悪いことだ」と後ろめたい気持ちで伝えると、子どもは間違いなく「お父さん(お母さん)がいないこと=いけないこと」「離婚=悪いこと」というマイナスのイメージで受け止めるでしょう。

 離婚は「現状より幸せになるため」と決断した末の選択だったはずなので、気持ちを前向きにしたうえで事実をちゃんと伝えることが大切です。もし、気持ちを切り替えることができないのであれば、それは「まだ伝える時期ではない」ということ。それならば「いつか話をするから、もう少しだけ時間をちょうだいね」と言って待ってもらっていいのではないでしょうか?

 こうした質問に関連して、親御さんのなかには「片親だとかわいそうな子にならないでしょうか?」と不安に思う人も多いでしょう。

 しかし、かわいそうな子にしてしまうかどうかは周囲の大人の考え方次第です。親に限らず、祖父母など周囲の大人が「パパ(ママ)がいなくてかわいそう」と後ろ向きに思いながら子どもに関わっていると、子どもも「自分はかわいそうな子なんだ」と思いながら育ってしまいます。親だけではなく、周囲にいる大人全員が事実を受け止めたうえで、前向きにとらえる必要があるでしょう。

◆子どもを愛せない、可愛いと思えない(p.195より)

 離婚した後は気持ちが不安定になるのか、「子どもを愛せない」「かわいいと思えない」と悩む親御さんもたくさんいます。離婚は多大な労力を使うのでマイナス気分が強くなり、自分のことだけでいっぱいになってしまうのでしょう。そう悩むのは、とても責任感が強く子どものことを真面目に考えているからこそです。

 では、悩んだときにどう抜け出すのか? 大切なのはやはりプラスの感情です。自分の力で前向きになるのが難しかったらカウンセリングを受けたり、信頼のおける人に相談したりして手助けしてもらうのがいいでしょう。

◆「パパ(ママ)はどんな人?」と聞かれたとき(p.195-196より)

 事情はどうあれ、離婚に及んだ相手のことです。「パパ(ママ)ってどんな人?」と子どもに聞かれて、とっさに浮かぶのは相手の悪口、という人も多いのではないでしょうか。

 しかし、子どもにとっては唯一の親です。相手の悪口を伝えることで、自分の存在もいっしょに否定されたような気持ちになってしまいますので、「両親に愛されて生まれてきた」という事実と、できれば向こうの良いところを伝えてあげてほしいと思います。

 お互いに愛し合って結婚し、子どもが生まれたあのころ。当時は相手のどこがいいと感じていたのでしょうか? もしかしたらもう忘れてしまっているのかもしれませんが、1つでも思い出して伝えてあげてください。仮にいいところを伝えるのが無理でも事実を教えてあげればいいと思います。悪口を伝えたところで、子どもにとって何もいいことはありません。

 ちなみに、新川さんは言葉で伝えるのが難しかったので「写真があるから見る?」と聞いて写真を見せたそうです。当時4歳頃の娘さんは「ふーん、こういう顔してるんだね。背が高いんだね!」と興味深く写真を見ていたとのことです。変に隠すことで思いを募らせるよりは、知りたいことを事実として伝えてあげたほうがいいでしょう。

文=日本実業出版社