外国人が初めて聴いたJ-POPは? 世界でウケるJ-POPが分かる! 全世界向け音楽番組『J-MELO』

音楽

公開日:2016/1/27


『J-MELO』が教えてくれた世界でウケる「日本音楽」(ぴあMOOK)」(まつもとあつし:著、原田悦志:監修/ぴあMOOK)

 海外の音楽ファンがJ-POPに触れる機会を作っている、全世界向け音楽番組『J-MELO』。同番組は、日本の音楽の素晴らしさや多様性を世界に伝え、視聴者の声を大事にした丁寧な番組作りで知られる。昨年、2005年10月の放送開始から10周年を迎え、その番組づくりの裏側を綴った「『J-MELO』が教えてくれた世界でウケる「日本音楽」(ぴあMOOK)」(まつもとあつし:著、原田悦志:監修/ぴあMOOK)が書籍化された。

 近年、外国人がJ-POPを歌っている映像をテレビで見ることがある。たとえば、アメリカで生まれ育ったシンガーのクリス・ハートは、12歳で日本の音楽に傾倒し、今やJ-POPに魅了された外国人として代表的な存在といってもいいだろう。一体、彼らはどこで日本の音楽と出会い、ハマっていくのだろうか? その出会いを作っている場所こそ、『J-MELO』のような外国向け音楽番組なのだ。

 『J-MELO』とほかの音楽番組の圧倒的な違いは、海外の日本音楽ファンにアンケートを募ったり、番組内で視聴者の自宅を訪ねる企画を行うなど、非常にアグレッシブな番組であるということ。今では156の国と地域に住むJ-POPファンからのメッセージが殺到。その声を反映させた番組作りが人気の元になっているという。

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 同書では、『J-MELO』で行ったアンケート結果や、そこから導き出した「なぜこの日本音楽が世界に伝播していったのか」を克明に分析したり 、世界で人気の高い日本のアーティスト や日本の音楽業界を支えてきたプロデューサーへのインタビューを行ったり と、盛りだくさんの内容となっている。

 たとえば、「初めて日本の音楽を聞いたのはいつで、アーティスト名は何というか」(2013年調べ)というリサーチでは、1位は2008年、L’Arc-en-Ciel。2位は2007年、the GazettE、3位は2009年、モーニング娘。という結果になっている。日本アーティストを見る上で外国ファンが「気になる」と感じるのは、ビジュアル、つまり視覚的な要素がポイントになっていると同書では分析されている。たしかに近年日本にとどまらず 世界中で大人気の歌手・きゃりーぱみゅぱみゅも、同リサーチの分析と一致する点が多く納得できる。さらに興味深いリサーチも。なんと、ビジュアル系バンドの外国人ファン は、ファッションに興味がある確率が100%だそう(『J-MELO』リサーチ調べ)! 魅せる日本音楽が世界では圧倒的に人気だということが、このような点からも分かるだろう。また、YouTubeの普及から日本のアニメを見て、アニソンで初めて日本音楽に触れ、傾倒していくという例が顕著なのもデータから見てとれる。

 そんな同書の中でも一番の見どころは、“TK”こと小室哲哉と、つんく♂の本音プロデューサー対談だ。

 小室哲哉は90年代に「小室ブーム」を巻き起こし、これまでプロデュースしたCDシングル・アルバムの総売上枚数は1億7000万枚に達する。当時、「小室ファミリー」の歌を聴かない日はなかったのではないか、というほど彼の作る音楽は染み渡っていた。一方のつんく♂も、モーニング娘。を筆頭に、ヒット曲を世に送りだし、音楽の流行や時代が移り変わっても口ずさめる歌を数多く世に出した。インタビューでの「口ずさめるフレーズ=“勝ちメロ”を作る人が結局勝ち」との言葉も、ヒット曲を連発させたつんく♂が言うから重みがあり、納得できる。

 日本音楽の発信&受信を密に行う番組『J-MELO』。今後どんなJ-POPが外国人のハートを掴むのか? この本から独自に分析して予想してみるのも楽しいかもしれない。

文=高橋明日香(清談社)