ドロドロの女社会で活躍する異色の大出世ヒロインの生き方が清い!『紅霞後宮物語』が大反響!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16

元軍人のヒロイン(アラサー)が、ひょんなことから後宮入りし、皇后になって大活躍―。特異な設定もあいまって大きな反響を呼んだ中華風ファンタジー、『紅霞後宮物語』(雪村花菜:著、桐矢 隆:イラスト/KADOKAWA)。待望の3巻が2月15日に発売される。

本書の魅力はなんといっても、主人公・小玉の型破りなキャラ。女の嫉妬渦巻く後宮において他の女官から嫌がらせの限りをつくされても、その悪意にすら気が付かないほどの鈍感さ。元軍人ということだけあって差し向けられた刺客も返り討ちにするレベルのたくましさだが、その人となりで、敵対していた女官たちからも慕われるようになる。

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一方、そんな彼女のマイペースぶりに苦労しているのが小玉の夫、文林。初回から皇帝として登場した彼だが、王宮入りするまでは武官で玉の元部下だった。小玉を妻にしたのは、彼女の軍用の才を発揮させるために皇后という高い地位に置く必要があった、というのが文林の言い分。だが、彼が小玉に対して戦友以上の感情を持っているのは明らかなのだ。小玉の何気ないしぐさや言葉にドギマギする文林に対して、小玉は文林を男として意識していない様子。美形でクール、皇帝として時に冷酷な手段もいとわない文林が、小玉のこととなるととたんに不器用になるのが読者としては心憂い。

魅力的なキャラクターにくわえ、中国の一時代をモデルとした壮大な舞台設定で多くの読者を惹きつけた本作。3巻ではどのような展開が待ち受けているのか――。

これまでほぼ小玉のことしか眼中になかった文林だが、ここに来て後宮内にある噂が立つようになる。「皇帝にお気に入りの妃嬪ができたらしい」と。今まで小玉の寝屋にしか行かなかったのに、新しい寵姫のもとへ夜な夜な通うようになる文林。皇帝の心が皇后から離れたとなると、当然後宮の勢力図も変わる。鬼の首をとったように喜ぶ妃嬪、変わらず小玉になつく年下の女官、あっさり手のひらを返す者。てんやわんやの後宮で渦中の小玉はなにを思うのか――。

ふたりの一筋縄ではいかない夫婦関係には相変わらずやきもきさせられるが、3巻では血の繋がらぬ息子・鴻を育てる小玉に母としての心境の変化も見てとれる。貧農の一兵卒から将軍、皇后として稀代の大出世をとげ、もはや市井の中では生きる奇跡となっている小玉。そんな彼女がひとりの女性として母として、どのように変わっていくのか。そこが本作の醍醐味でもある。

さらに、毎度お約束のことながら王宮内でも事件が発生。文林のもとに度々送られてくる刺客に、また命を狙われることになる。今回の敵は一体誰なのか? 本巻では、小玉自ら部隊を率いて敵が籠城する城に攻めいる展開も読みどころ。馬を駆り、敵をなぎ倒していく小玉のイケメンぶりもさることながら、隊レベルで展開していく緻密な戦いの描写は手に汗握ること間違いなし!

一国を舞台にダイナミックに動いていくストーリーに、個性的な登場人物たちが織りなす人間模様。気になる要素が盛りだくさんの本作から後も目が離せない。

文=松原麻依(清談社)

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